2015年11月05日

げんを担ぐ


げんを担ぐは,

験を担ぐ

と当てることが多い。

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/69321/m0u/

には,

《「縁起を担ぐ」から転じた語か》ある物事に対して、よい前兆であるとか悪い前兆であるとかを気にする。

とあるが,手元の辞書(『広辞苑』)には,「験」しか載っておらず,

「験(けん)」には,「慣用音」とあって,

しるし,きざし,ききめ,
ためし,調べること,

という意味があり,

「験(げん)」には,

仏道修行を積んだしるし,加持祈祷のききめ,
ききめ,しるし,効能,
縁起,前兆,

とある。どうやら,「験(げん)」のようだ。ところが,

「験(げん)」の語源は,

「縁起の逆で,ギエンの音韻変化」

とあって,「縁起」へ,また戻ってくる。つまりは,

「何かをするのに先立って,そのことの善し悪しを示すような出来事」

をいう。しかし「縁起の逆」の意味が分からない。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A8%93%E3%82%92%E6%8B%85%E3%81%90

には,

「本来は『縁起を担ぐ』であったが、江戸時代に流行った逆さ言葉で縁起を『ぎえん』と言うようになり、それが徐々に『げん』に変化したとする説が一般的である。」

とあって,「ぎえん」の謂れが分かる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ke/genwokatsugu.html

には,

「本来は,『縁起を担ぐ』で,『縁起』が反転し音韻変化したとする説が有力とされる。この『げん』は,『げんがいい』や『げんなおし』などとも使われる。『験』には,『仏道修行を積んだ効果』の意味や『利き目』『効果』などの意味があり,『縁起』を意味する『げん』と関係があるとも考えられている。ただ,『効果』などを意味する『げん』は平安期,『縁起』を意味する『げん』は近世以降と自体が離れており,『縁起』を意味する方は,ヤクザ用語から出た言葉とされていることから,直接関係するわけでもなさそうである。」

とあって,由来が一筋縄ではない。まあ,

縁起船乗り博奕打

という諺があるくらいだから,ヤクザには縁起担ぎは縁が深いのかもしれない。

しかし,「縁起を担ぐ」は,辞書(『広辞苑』)には,

「ちょっとしたことにも縁起がいいとか悪いとか気にする」

という意味が載っていて, 他の辞書でも,

「ちょっとした物事に対して、よい前兆だとか悪い前兆であるとかを気にする。」

という意味が載っている。
げんを担ぐ,

縁起を担ぐ,

では,確かに似ているのだが,微妙に違う,というか,事態が,さかさまのような気がする。

げんを担ぐ方は,

「何かをするのに先立って,そのことの善し悪しを示すような出来事」

で,げんがいいとか悪いとかという。

縁起を担ぐ方は,

「ちょっとしたことにも縁起がいいとか悪いとか気にする」

とあるので,過去の幸運やよいことがあったためしにならって,それを守ろうとする,というように,受け取れる気がする。現に,「縁起を担ぐ」の類語には,

「成功や利益を祈願するために過去の良い状況を再構築しようとするさま」

として,類語を挙げる。

「縁起」は,辞書(『広辞苑』)には,「因縁生起の意」として,

仏教で,一切の事物は固定的な実体を持たず,さまざまな原因(因)や条件(縁)が寄り集まって成立しているということ。因果。
事物の起源・沿革,由来。
社寺などの由来または霊験などの伝記,またはそれを記したもの。
吉兆の前兆,きざし。

といった意味が載る。言ってみれば,

「原因に縁って結果が起きる」という因果論を指す,

ということになる。だから,いまの吉兆が,これからの成功の兆し,と言った受けとめになる。ただ,

http://okwave.jp/qa/q7829914.html

には,

「何かを始める際に吉兆の兆しを取り上げて、その縁起が好ましくなければ「(御幣を)担ぐ」意味での御祓いや、それに準じた何某(なにがし)かを行うのが縁起担ぎであり、一方『験を担ぐ』方は、これまでの好ましかった『験(効き目)』の再現を願って御祓いのような何がしかを行うもの」

との記述があるので,真逆の解釈になる。ただ,近世以降,「縁起」の意味の「験」に重なったようだから,あえて,順序をつけるのは野暮かもしれない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)




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