2015年11月10日

あか


あかとは,



のことだが,辞書(『広辞苑』)によると,

「一説に,『くろ(暗)』の対で,原義は明の意と言う」

とある。で,

血のような色,緋色・紅色・朱色,茶色などの総称,
赤と関係の深いもの,例えば,赤児(あかご),小豆(あずき),銅(あかがね)等々の略称
名詞の上に付けて,まったくの,すかり,明らかなの意をあらわす。赤はだか,赤恥,赤の他人

等々の意味が載る。ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4

には,

「"赤"(あか、紅、朱、丹)は色のひとつで、熟したイチゴや血液のような色の総称。JIS規格では基本色名の一つ。国際照明委員会 (CIE) は700 nm の波長をRGB表色系においてR(赤)と規定している。赤より波長の長い光を赤外線と呼ぶが、様々な表色系などにおける赤の波長とは間接的にしか関係ない。語源は「明(アカ)るい」に通じるとされる。『朱・緋(あけ)』の表記が用いられることもある。赤色(セキショク、あかいろ)は赤の同義語。」

と載り,赤,紅,朱,緋を次のように区別している。

「赤という基本色名には、多くの固有色名が含まれる。比較的橙色に近いものから、 紫に近い色合いのものまで、また広くは茶色なども赤と総称される。茜色やカーマイン、アッシュローズ等も赤の範疇である。また、明るく彩度の低い桃色やピンクなども赤の一種と捉えられることが多い。」

「赤の色名として、紅(べに、くれない)の表記が用いられることがある。『赤』は単独で“red”を表すのに対して、他の色と対置するときに「紅」とすることが多い。熟語で「紅色(こうしょく)」と読む場合もこの意味である。たとえば『紅白』『紅紫』などがその例である。この意味では紅(くれない)もまた基本色名としての役割を担うことがある。ただし紅(べに)、紅色(べにいろ)と表記した場合にはベニバナ由来の色素に基づく色であることが強く意識され、より固有色名的な意味合いを持つ。」

「丹(タン)が色を名指すときは赭土(シャド)、赤土の色の意味である。赭土の主たる発色成分は三酸化二鉄である。黄土(;主要発色成分:水和酸化鉄)や緑土も焼成すれば丹色になる。なお、鶴の一種タンチョウの和名は、頭頂部(頂)が赤い(丹)ことに由来する。」

「朱(シュ)は、硫化水銀によるの赤色顔料辰砂の意味を持つ。硫化水銀による朱(辰砂・朱砂)には、例えば『黄口』や『青口』があり、色料 朱の範囲は比較的幅があると考えてよい。」

「緋(ヒ)は、濃く明るい赤色を指す。緋は緋色に染め付ける染料のみではなく、緋色に染め付けられた糸や絹の色も指すことがしばしば強調されることからも分かるように、染色によって現れる染色とも強く関わる。緋の英語訳として使われるscarlet(スカーレット)にも同様の傾向がある。」

つまり,すべて,「赤」を意味する語である。
赤の語源について,『大言海』は,

「赤(アケ)の転(竹(たけ),タカ。酒(さけ),サカ)」

と,転じた例を挙げている。『語源由来辞典』によると,

「赤(アカ)は,『明』が語源で,暗・黒(クラ・クロ)が,これに対する語です。したがって,狭い,色相としての,アカを示す言葉ではなく,広く,血の色,顔色,明け方の空の色,紅葉,朱色,ピンクに近い紅梅の色など,ずいぶん広い色合いを指した言葉」

とある。ある意味,暗さに対する明るさ,という二分の中に納まる,という意味で,幅広く,色ではなく,明るさを指していたのではないか,と思う。辞書(『広辞苑』)には,「黒」について,

「『くら(暗)』と同源か。またくり(涅)と同源とも」

とある。「涅」とは,水底に沈んだ黒い土,涅色を指す。ここでも,明暗である。

あお

で触れたように,和語には,

「古代日本では,固有の色名としては,アカ,クロ,シロ,アオがあるのみで,それは,明・暗・顕・漠を原義とするという。」

という意味で,明確な色の識別を,言葉として持っていなかった,らしいである。ヴィトゲンシュタインではないが,

人は,持っている言葉によって見える世界が違う,

という。その意味では,色の世界が貧弱だったのではないか。ある意味,






という言葉を手に入れて,そういう色を識別できるようになった,という気がする。因みに,「赤」という字は,

「大+火」

で,大きく燃えあがった火の色,を指す。「朱」は,

「木+一印」

で,木の中央を一線でたち切ることを示す。つまり,切株を示す,株の原字。切株の木質部のあかい色をいうのに転用された,とある。「紅」は,

もと白地を茜(あかね草)の染め汁にさっとつけた色,訓の「くれなゐ」は「呉(くれ)の藍」で,中国から来た染料の意,

とある。「緋」は,

「非」は,羽が左と右と逆にそむいたさま。緋は,ぱっと左右の開ける感じ,つまり目のさめるような感じをあたえる意図や布の色,

を示す。漢字では,赤系の色を示す字をこう使い分ける。

「赤」は,火(あるいは太陽)の赤く燃える色。きらきらとあかきなり。
「紅」は,植物性の染料のあかさ。桃色なり。
「丹」は,丹砂の色なり。大赤なり。
「茜」は,夕焼け空の赤い色
「絳」は,深紅の色。大赤色なり。
「緋」は,染料によって染められた繊維のあかさ。目のさめるような鮮やかな赤色。深紅色なり。

別に,

朱,丹,赭は,鉱物起源のあかさ。
「丹」は水銀の化合物、
「赭」は鉄の化合物、
「赬」は,魚など動物のあかさ、

とも。

この複雑な色を,漢字と共に,具体的な染料として,実地に学んできたらしいのである。われわれは,色すら中国から学んだ。それを忘れてはならない。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)



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posted by Toshi at 05:24| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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