2015年11月11日
うんともすんとも
「うんともすんとも」は,
「うんともすんとも言わない」
という使い方をする。辞書(『広辞苑』)には,
「『すん』は『うん』の語呂にあわせたもの,下に否定の語を伴う」
として,
ほんの一言も,
まったく言葉をいった来ないことをいう,
とある。「うんともすっとも」とも言うらしい。因みに,「うん」は,『大言海』には,
「諾(ウ)の音便化」
とあり,
「肯(ウケガ)ふ意を表す」
とあり(因みに,「肯ふ」とは,相手の言うところを受けて,こちらの賛意を伝えること),辞書(『広辞苑』)には,
承諾・肯定の意をあらわす声。「はい」よりぞんざいで,親しい間柄で用いる。思い出したときの声,
とある。そのほか,気絶する時やくるしい時などに発したり,力を込める時の,いきむ声,といった鼻息の音や唸り声を表す擬態語として用いる。その意味では,「すん」も鼻から出す音で,その意味では,「うんもすんも」は,ただ一言も言わないだけではなく,生きさえ発しない,つまり,
音沙汰ない,
というニュアンスが込められている。
「うんともすんとも」の語源は,
「『ウン』(返事)という最低の返事もしないです。スンは語呂合わせで,『トモ』をつけて対応させた語」
とある。で,
ポルトガル語の「um(一)ともsumo(最高)を語源とする説は,ウンスンカルタの流行時とはいえ,意味的に疑問」
とする。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/u/untomosuntomo.html
も,ウンスンカルタ説を退けるが,こう説明する。
「ウンスンカルタとは,元禄の終り頃に考案されたもので,…天正カルタにおされて消えて行ったことから,『うんともすんとも言わなくなった』と言う語源説である。ウンスンカルタは天正カルタから派生して,この説では時代関係が前後している。」
ウンスンカルタは,
「パオ(こん棒、クラブの原型)、イス(剣、スペードの原型)、コツ(聖杯、ハートの原型)、オウル(貨幣、ダイヤの原型)、グル(巴紋)の5種類のカードが15枚ずつの計75枚で、種類ごとに1~9の数札とスン(唐人)やウン(七福神)など6枚の絵札があります。ポルトガルから伝わったカルタを日本風にアレンジしたものである。」
で,裏には金泥(きんでい)を塗って美しく仕上げられている,という。
http://washimo-web.jp/Trip/Unsun/unsun.htm
http://www.kyuhaku.jp/museum/museum_info04-07.html
に詳しいが,不思議なことに,
日本中でただ一ヶ所、人吉・球磨地方にだけにこの遊びが残り,今日まで伝えられている,
と言われる。
「うんともすんとも」の語源については,
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000134786
一覧化しているが,
近世の苦しい時のうなり声であった「うんすん」に由来(『暮らしのことば語源辞典』より),
承諾の声または苦しい時のうなり声であった「ウン」は中世からあり、ウンスンの形で苦しいときのうなり,
近世の苦しい時のうなり声であった「うんすん」に由来,
鼻から出す声と息の音という説,
という,声さえ出ない,という説があることを伝えている。しかし,「うん」というのは,音沙汰がない,という意味で,
「うんだともつぶれたともいわぬ」(「膿んだとも潰れたとも」と当てる場合もあるが)
「うんだものがつぶれたともいわぬ」
という言い方をするときの,「うん」と同類で,やはり,
「うん」は肯定の応答詞で,肯定とも否定とも言わないということを語呂合わせして「すんとも」とした,
「すん」は「うん」に語呂を合わせて何も発言のないことを強調するためにつけられたもの,
というのが妥当なようだし,自然だろう。それにしても,語源を探る屁理屈自体が,語呂合わせになっているところが面白い。
参考文献;
http://gogen-allguide.com/u/untomosuntomo.html
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000134786
http://www.kyuhaku.jp/museum/museum_info04-07.html
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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