2015年11月12日

不細工


不細工は,

ぶさいく,
もしくは,
ぶざいく,

と訓む。意味は,辞書(『広辞苑』)によると,

細工がへたなこと。まずいこと。できばえが悪いこと。また,そのさま。
体裁の悪いこと,また,そのさま,
容貌の悪いこと,また,そのさま

とあり,想像されるように,語源は,

「不(打消し)+細工(こまかいたくみ)」

で,

「こまかい工作ができない,不器用な人,転じて,器量の悪い人の意で使うのは,現代語」

とある。しかし,『古語辞典』にも,

容貌の醜いこと,不器量,不恰好,

の意味も用例もある。必ずしも,現代とは言えないようだ。別に,

「本来は決してほめ言葉ではないが、シチュエーションや人によっては、親しみや愛しさをこめて「不細工」という言葉を使う場合もある。 略してブサともいう。」

とあるが,「ブサかわいい」という言い方をしたとき,親しみはあるが人に対する敬意や尊敬があるとは思えない。

ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%B4%B0%E5%B7%A5

には,

「通俗的にはブサまたはブスとも。なおブスの語源に関しては諸説あり、『トリカブト(附子、ぶす)によって中毒を起こし、表情が乏しくなった者を指す』とする説があるが、それ以外にも様々な憶測が存在するため、往々にして語源は不明瞭である。」

と,ブスの語源にわたっているが,因みに,「ブス」の語源には,

「ブスっとした女」で,愛想のよくない不美人,

という説と,

「ブ(不)+スケ(助女の隠語・ナオスケ)」の意で,ブオンナの意,

として,「附子(トリカブトの根)」の転用説は,疑問視されている。

話を元へ戻すと,では,細工の意味は,と改めて辞書(『広辞苑』)で調べると,

手先を働かせて細かい物を造ること,またそのもの,その職人,
細かな点についての工夫。とくに小さな点を変えたり,見た目をとりつくろったり,ごまかしたりして,人目を欺こうとする企み。
(名詞の上に付けて)本格的でない,素人くさいの意。細工芸等々。

の意味がある。現代だと,小細工と言ったりして,細工にはいいニュアンスがないが,『古語辞典』では,

手の込んだ細か器具を作る職人,
手のみ―込んだ器具を作ること,工芸,手工,
技巧,術策などに長じていること,
(名詞に冠して)本格的でないもの,また素人が我流でするの意,

しか載らない。しかし,『大言海』には,

「工匠(たくみ)の細小なる器具を造るを職とする者。家を建築するなどに対する」

と断って,細かい製作云々の意味の他に,

「ゑたの異名。竹細工,箒,茶筅など,造り出して生活を営むより云ふ」

と,この時代の奥底にある人々の心底の深奥にある悪意のある含意(差別意識)を,ちらりとのぞかせ,ぎょっとする。それに,

「つくろいごと,たくらみごと,人の行為に云ふ」

という意味が載る。ここには,細工に,作為という含意がこもる。思えば,諺に言う,

細工は流々仕上げをごろうじろ,

には,工夫を十分凝らしてあるから,できあがった結果を見てください,という意味には,途中でとやかく言わないで,出来上がったものを批評しろ,という自信を示す意味がある。しかし,この「細工」には,企み,仕掛け,という含意がある。

細工貧乏人宝,

という諺には,器用貧乏というか,人には重宝がられるが,才能が自分の利益にならない,という意味を持つ。

とすると,細工には,どこか,竹細工職人を差別したほどではないにしろ,上から目線の蔑みのにおいがなくもない。

細工は,

「サイ(細かい)+ク(工・技・たくみ)」

が語源。大工に対する言葉で,『大言海』に,「家を建築するなどに対する」とあるのは,その意味になる。

「たくみ」

で引くと,工の他に,





等々と出る。

「工」は,

「上下二線の間に丨線を描き,上下の面に穴を通すことを示す。またかぎ型ものさしの象形とも言う。工は攻(突き抜く)の原字で,孔(突き抜けた孔)・空(穴)と極めて近いことば。穴をあけるのは高度の技であったので,細工することを意味するようになった」

とある。「技」は,

「支が,細かい枝をてにもつさまで,技は,細かい枝のような細かい手細工のこと」

とある。「匠」は,

「『匚(かぎ型のものさし)+斤(おの)』で,ものさしや刃物をつかって細工する意。もと創(きる)と同系で,素材を切って技工を施す意を含む」

とある。「伎」は,

「人間の細かい技,技を操る人の意」

とある。あえて,「細工」「大工」等々,「工」を使った意味があるのだろうが,敢えて深読みすると,「工」には,

細工や技術を心得た職人,

という意味があったせいだろうと思う。それにしても,「細工」の類語は,いまや,

改竄
枉げる
たくらみ
姦計

等々と悪意の籠った作為の意味が多い。小細工がその代表か。なお,小細工については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/427317283.html?1444076695

で触れた。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%B4%B0%E5%B7%A5
簡野道明『字源』(角川書店)




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