2015年11月16日

尻切れ蜻蛉


尻切れ蜻蛉
あるいは
尻切り蜻蛉

は,辞書(『広辞苑』)によると,

仕事が完結せず,中途で途切れて後が続かないこと,

とある。

完結しないことのたとえ,

ともあるから,まあ,

未完了,

というわけだ。で,「尻切れ」を引くと,

うしろの方が切れていること,中途で終わっていること,
「尻切れ草履」の略。
「尻切れ半纏 (ばんてん) 」

とある。ということは,「尻切れ」自体で,

中途で終わっている,

という意味がある。それに,「蜻蛉」をつけたのはどういう意味なのだろう。

『大言海』には,「しりきりとんぼ」として出ている。

「物事をなすに,断断(きれぎれ)となりて,永続せぬ人を罵り云ふ語」

と,極めて限定した使い方だと言っている。で,「尻きれ」を見ると,

「藁草履の類。」

としかない。つまり,尻切れは,藁草履を指し,その類比から,中途半端ということに意味が広がったのではないか,と推測されるのである。

藁草履を引くと,

藁を編んで作った草履,

とある。では草鞋とどう違うのか。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E9%9E%8B

に,両者の違いについて,こうある。

「草鞋または鞋(わらじ)は、稲藁で作られる日本の伝統的な履物の一つである。同様に稲藁で作られる藁草履(わらぞうり)と混同され易いが、形状が若干異なる。草履が現在のサンダルに近い形状であるのに対し、草鞋は前部から長い「緒(お)」が出ており、これを側面の「乳(ち)」と呼ばれる小さな輪およびかかとから出る「かえし」と呼ばれる長い輪に通して足首に巻き、足の後部(アキレス腱)若しくは外側で縛るものである。鼻緒だけの草履に比べ足に密着するため、山歩きや長距離の歩行の際に非常に歩きやすく、昔は旅行や登山の必需品であった。また蹄鉄のない江戸時代には、馬にも馬用のわらじを履かせてヒズメを保護していた。」

藁草履.jpg


いま藁草履は,オシャレや健康グッズとして売られているが,これを見る限り,「尻切れ蜻蛉」にはつながらない。実は,

尻切れ草履,

というものがあるらしい。現在の感覚だと,

はき古して、かかとの部分が切れてしまっている草履,

という意味に受け取るが,もうひとつ,

かかとに当たる部分がなく、後ろのほうが切れたように見える短い草履。足半(あしなか)。しりきれ,

というのがある。

http://members3.jcom.home.ne.jp/pehota02/equipment/foots/ashinaka.htm

によると,

足半.JPG


「足半(あしなか)とは、踵の無い短い草履の一種である。その形状から、足裏の前足底と土踏まずの部分しか保護する事が出来ないが、飛び出た指がスパイクの代わりをなして滑らず、踵を浮かせて飛び跳ねるように軽快に歩行できる。また、踵が無い為に泥が跳ね上がる事がなく、足と履物との間に砂や小石がつまる事も無い。水中においても、小さな形状から水の抵抗が少なく、川の流れに足を取られる事がない。さらには鼻緒に芯縄を使うので、草履の様に鼻緒が切れる事が無く丈夫である。ただ独特な歩行の方法故に、長距離の歩行には向かなかった。
 見た目以上に便利な履物で、今ではその名前すら忘れ去られつつある足半であるが、中世の武家にはポピュラーな履物であったし、半世紀前くらいの農村では、立派な現役の履物であった。
 現在でも鵜師の足下に見る事が出来る。」

しかし,なぜ,蜻蛉なのか,

http://www.lance2.net/gogen/z415.html

に,面白い説明があった。

「『尻切れトンボ』の『トンボ』っていうのは昆虫の『トンボ』じゃなくて『トンボ草履』っていう昔ながらの履物からきているんだよ。『トンボ草履』にはかかとがないんだけど、その様子から『尻切れトンボ』という言葉が生まれて段々と一般化していったと考えられているんだ。」

と,つまり「足半」を,「蜻蛉草履」と呼んだ,という。辞書(『広辞苑』)には,

蜻蛉草履.JPG


「鼻緒の先を蜻蛉の翅のような形に結んだ草履。田野,会場で働くときに用いる。足半という地方もある。」

とある。先の足半の別の写真を見ると,結び目がある。

調べていくと,何ということもないが,生活の中から消えてしまうと,言葉が宙に浮く。かつては,

尻切れ蜻蛉

というとき,足半がイメージとして明確に浮かんでいたに違いない。

しかし,尻切れ蜻蛉,という言葉は,単なる中途半端,未完了,道半ば,とは違うニュアンスなのではないか。足半は,草履から見れば,尻切れだが,それはそれで,完了したものだ。どうも,

尻切れ蜻蛉,

というとき,世の基準から見たら,まだ未完了だと,咎めている,という含意がある。しかし本人にとっては,必ずしもそうではないかもしれないのである。ここが,

未完了

尻切れ蜻蛉

の違いのように見える。

ちなみに,「尻切れ半纏」というのは,腰の辺りまでしかない、たけの短い半纏,これも「しりきれ」と略すらしい。

それにしても,

極楽蜻蛉,
だの
蜻蛉返り,

だの,蜻蛉にまつわる言葉が多い。蜻蛉返りについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/416315749.html

で触れた。極楽蜻蛉については,また別途。




ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
【関連する記事】
posted by Toshi at 07:12| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください