2015年11月18日

尻馬に乗る


尻馬に乗る,というのは,辞書(『広辞苑』)には,

ヒトの後ろについて無批判に物事をする,
他人の言説に付和雷同する,

とある。もっとひどいのは,

分別もなく他人の言動に同調して,軽はずみなことをする
人のあとについて,調子に乗ってそのまねをする,

と,かなり手厳しい。まあしかし,

鉄棒曳き,

廊下とんび,

ましてや,

虎の威を借る狐,

よりはましと思うが,しかし他人の言説にただ乗りすると,少なくとも,付けはこっちへ来る。

尻馬に乗る,

という言い回しは,『日葡辞典』にも,

「ヒトノコトバノシリウマニノル」

と出ているようだから,中世から使われていたようだ。

そもそも,尻馬

というのは,

人の乗った馬の後ろに乗ること,
また,
前を行く馬の後ろを行くこと,

とある。だから,

重騎
累騎

という言葉を,『大言海』は,「尻馬」の意味に,載せ,『平家物語』の,「土佐房夜討事」の,

「馬に乗せて(土佐房を),我身(弁慶)は尻馬に乗りて」

というくだりを引用している。要は,

同じ馬の後ろに相乗りするか,先行する馬にしたがって後ろからついていく,

という,馬の乗り(方),騎馬の進め方の話に過ぎない。そこから,

人の言動に便乗,
とか,
便乗して事を行うこと,

と言ったふうに意味が,便乗という意味に(悪い方へ)拡げられたが,

うしろについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/422266986.html

に書いたように,かつては,

まへ⇔しりへ,

のちには,

まへ⇔うしろ,

と対で使われるようになったが,どうも,「しり」も,

尻から抜け,尻に敷く,尻に帆掛ける,尻も溜めず,尻も結ばぬ糸,尻を割る,尻がかるい,尻が重い,尻馬,尻ごみ,退く,尻目,尻が据わる,尻が長い,尻上がり,尻足,尻押し,尻が来る,尻こそばゆい,尻から焼けてくる,尻切れトンボ,尻毛を抜く,尻声,尻ごみ,尻下がり,尻すぼみ,尻叩き,尻に火がつく,尻ぬぐい,尻抜け,尻早,尻引き,尻舞い,尻目,尻目遣い,尻もや,尻を落ち着ける,尻を食らえ,尻を拭う,尻を引く,尻を捲る,尻を持ち込む,

等々,「後(うしろ)」も,

後ろ足(逃げ足),後ろ明かり,後ろ歩み(あとじさり),後ろいぶせ(将来への不安),後馬(尻馬),後ろ押し,後ろ髪,後ろ影,後ろ軽し,後傷(向う傷の逆,逃げた証),後ろ暗い,後袈裟,後ろ言(陰口,愚痴),後詰(うしろづめ,後詰(ごづめ)),後ろ攻め,後ろ千両,後ろ盾,後ろ手,後ろ付き,後ろ違い,後ろ礫,後ろ飛び,後巻,後ろの目,後弁天,後ろ前,後ろめたい,後ろを見ず,後ろ向き,後見,後見る,後ろ矢(敵に内応して味方を射る),後安し,後ろ指,後を切る,後を見せる,

等々,どうもいい語感はない。しかし,「うしろ」と「しり」は,使い分けていて,

しりうごと,で後言,とあて,
しりえ,で後方とあて,
しりえで,で後手とあて,
しりさき,で後前とあて,
しりざま,で後方とあて,
しりざら,で後盤とあて,
しりつき,で後付とあて,
しりっぱね,で後つ跳ねとあて,
しりぶり,で後振りとあて,

等々,しかし,「うしろ」と訓ませるときは,

後ろ暗いが尻ぐらいとも,
後ろめたいが尻めたいとも,
後ろ指が尻指とも,
後を見せるが尻を見せるとも,

「尻」を当てることはない。そこから,

「尻」は,

物事の付けのように,一つ一つの振る舞い(しくじり),

を指し,「後」は,

それ自体がその人の在りよう(の落ち度)を示す振る舞いに敷衍される,

使い方が多い気がする。「尻」の字と「後」の字が与える印象から来ているのかもしれない。

という推測を勝手にしておいた。その意味では,

尻馬,

というのは,その人のありようが,あるいは目指すものが,主体的でない,というニュアンスが強くなったのではなかろうか。

「尻馬」とは、人が乗った馬の尻のこと。自分は後ろに乗るだけで、前で手綱を握る人にただ従うことからたとえていうもの,

との説明もあり,相乗りの場合も,先行するのについていく場合も,相手任せ,というニュアンスがあるせいだろう。


参考文献;
語源由来辞典
 http://gogen-allguide.com/si/shiriumaninoru.html



ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:26| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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