2015年11月22日


鬼とは,辞書(『広辞苑』)には,

「隠(おに)で,姿が見えない,意という。」

とあり,

天つ神に対して,地上などの悪神,邪神,
伝説上の山男,巨人ゃ異種族の者,
死者や霊魂,亡霊,
恐ろしい形をして人にたたりをする怪物。物の怪,
想像上の怪物,仏教の影響で,餓鬼,地獄の青鬼,赤鬼があり,美男・美女に化け,音楽・双六・詩歌などにすぐれたものとして人間界に現れる。後に,陰陽道の影響で,人身に牛の角や虎の牙をもち,裸で虎の皮や褌を締めた形をとる。怪力で,性質は荒いも
鬼のような人で,非常に勇猛な人,無慈悲な人,借金取り,或ることに,精根かたむける人,鬼ごっこなどで人をつかまえる人,
奇人の飲食物の毒見訳。鬼役。

と幅が広い。メタファで使われる部分を省いても,一筋縄ではいかない。

語源は,『古語辞典』に,

「隠の古い字音onに,母音iを添えた語。ボニ(盆),ラニ(蘭)に同じ」

とある。『大言海』は,もっと詳しい。「和名抄」に云う,として,こう書く。

「鬼(キ),於爾,或説云,穏(オスノ)字,音於爾(オニノ)訛也,鬼物隠而不欲顕形,故俗呼曰隠也,人死魂神也」トアリ,是レ支那ニテ,鬼(キ)ト云フモノノ釋ニテ,人ノ幽霊(和名抄ニ「鬼火 於邇比」トアル,是レナリ)即チ,古語ニ,みたま,又ハ,ものト云フモノナリ,然ルニ又,易経,下経,睽卦ニ,「戴鬼一車」疏「鬼魅盈車,怪異之甚也」史記,五帝紀ニ,「魑魅」註「人面,獣身,四足,好感人」論衡,訂鬼編ニ,「鬼者,老物之精者」ナドアルヨリ,恐ルベキモノノ意ニ移シタルナラム。おにハ,中古ニ出来シ語トオボシ。神代記ナドニ,鬼(オニ)ト訓ジタルハ,追記ナリ」

どうやら,我々のイメージする,鬼が島の鬼や,桃太郎の鬼は,後世のもので,そもそも「オニ」と訓んでいなかったようなのだ。『古語辞典』の意味を拾っておくと,

恐ろしい形をした怪物。オニということばが文献にあらわれるのは平安時代に入ってからで,奈良時代の万葉集では,「鬼」の字をモノと読ませている。モノは直接いうことを避けなければならない超自然的な存在であるのに対して,オニは本来形を見せないものであったが,後に異類異形の恐ろしい怪物として想像された。それには,仏教・陰陽道における獄卒鬼・邪鬼の像が強く影響していると思われる。

という意味がまず載り,ついで,

飲み物の毒見をする役
(接頭)名詞に冠して,勇猛・無慈悲・形の異様なことを表す

が載る。漢字「鬼」の字は,

大きなまるい頭をして足元の定かでない亡霊を描いた象形文字,

で,中国語では,

おぼろげなかたちをしてこの世に現れる亡霊,

つまりは,

亡霊,

を指す。『漢字源』には,

「中国では,魂がからだを離れてさまようと考え,三国・六朝以降は泰山の地に鬼の世界(冥界)があると信じられた。」

とあり,やはり,仏教の影響で,餓鬼のイメージになっていった,と見られる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AC%BC

にあるように,我々の鬼のイメージは,

鬼.jpg


鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より「鬼」


「頭に角(二本角と一本角のものに大別される)と巻き毛の頭髪を具え、口に牙を有し、指に鋭い爪が生え、虎の毛皮の褌を腰に纏い、表面に突起のある金棒を持った大男である。また、肌の色によって『赤鬼』『青鬼』『緑鬼』などと呼称される。このように、鬼が牛の角と体、虎の牙と爪を持ち、虎の毛皮を身に付けているには、丑の方と寅の方の間の方角(艮:うしとら)を鬼門と呼ぶことによるもので、平安時代に確立したものである。」

当然,現在の鬼の姿は仏教の羅刹が混入したものである,とされる。ちなみに,羅刹(天)とは,

「(仏教の天部の一つ十二天に属する西南の護法善神)鬼神の総称であり、羅刹鬼(らせつき)・速疾鬼(そくしつき)・可畏(かい)とも訳される。また羅刹天は別名涅哩底王(Nirrti-rajaの音写、ラージャは王で、ねいりちおう、にりちおう)ともいわれる。破壊と滅亡を司る神。また、地獄の獄卒(地獄卒)のことを指すときもある。四天王の一である多聞天(毘沙門天)に夜叉と共に仕える。」

とある。このイメージが強い。しかし,そもそも鬼というのは,

「日本書紀にはまつろわぬ『邪しき神』を『邪しき鬼(もの)』としており得体の知れぬ『カミ』や『モノ』が鬼として観念されている。」

というところに典型的に見られ,基本,

化外の民,

つまり,

「鬼とは安定したこちらの世界を侵犯する異界の存在だという。鬼のイメージが多様なのは、社会やその時代によって異界のイメージが多様であるからで、まつろわぬ反逆者であったり法を犯す反逆者であり、山に住む異界の住人であれば鍛冶屋のような職能者も鬼と呼ばれ、異界を幻想とたとえれば人の怨霊、地獄の羅刹、夜叉、山の妖怪など際限なく鬼のイメージは広がるとしている」

ということになる。今日でも,市民社会を侵す部外者,権力に逆らうものは,



の代わりに,異名を名づけるはずである。酒呑童子に代表されるような鬼や悪鬼羅刹は,

「戦乱や災害、飢饉などの社会不安の中で頻出する人の死や行方不明を、異界がこの世に現出する現象として解釈したものであり、人の体が消えていくことのリアルな実演であり、この世に現れた鬼が演じてしまうものと推測している。」

この世の外は,異界であり,そこの住民として鬼を想定した。考えれば,鬼が島も,退治する側の視点からしか見られていない。鬼は退治すべきものとするのは,

こちら側=善

を前提にする。そう言えば,

鬼畜米英,

はその延長線上にある。自分の理解できぬもの,自分にまつろわぬもの,を鬼と呼ぶ。なんだか,反日という言葉にも,そういう自分たちの世界以外は,悪とする古来以来の自閉した世界観を反映しているように見えて,滑稽である。

それにしても,

http://dic.nicovideo.jp/a/%E9%AC%BC

にある,鬼の入る言葉の多いこと。

参考文献;
http://dic.nicovideo.jp/a/%E9%AC%BC
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AC%BC



ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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