2015年11月24日

モティベーション


ゲイリー・レイサム『ワーク・モティベーション 』を読む。

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本書の監訳者金井壽宏氏が,

「ワーク・モティベーションの諸研究に造詣が深く,科学的な実証研究でもつねに最先端で,さらには,世界中の有力なワーク・モティベーション学者とつながり,そのネットワークの核に立つような人の体系的著作を日本に紹介したいと思い,そのような本を探し求めてきた。そのなかで,…本書『ワーク・モティベーション』は,実践的で科学的なワーク・モティベーション論であり,おそらく今後,経営学における定番,古典として,長く読み継がれることだろう。」

と紹介する。その意味て,本書は,現時点で,モティベーション論の百年以上の歴史を,「現存する諸理論を相互に関連づけながら,網羅し,理論を検証する調査研究の内容や方法にもふれ」て,概観し,今後をも展望して見せている大作である。

著者自身が,「科学者であるとともに実践者である」という,その言葉通り,ご自身の企業の現場での実践,実証がふんだんに盛り込まれている。

ホーソン実験,
欲求五段階説,
X理論Y理論,
動機づけ・衛生理論,
職務特性理論,
公正理論,
期待理論,
目標設定理論,
社会的認知理論,
内的モティへ―ジョンと外的モティベーション,

等々と,懐かしい過去の学説・理論を,25年刻みで,1900年から辿りつつ,二十世紀を総括し,21世紀を検証し,将来を展望して見せている。著者自身は,

「深く長期的にコミットしてきた目標設定理論への思い,こだわりは強い」

が,「ワーク・モティベーション論全体を渉猟しようとする意図,包括的理解を示す姿勢」があり,それぞれの画期毎に,著者自身が,「結論としてのコメント」で,その時代を,それぞれ総括している。

著者は,それを,

「第Ⅰ部は,職場のモティベーションに関する研究と理論を時系列で概説し,テーマの比較的ユニークな発展形態を強調している。職場のモティベーションに対するわれわれの理解をいかに深めたかという観点から,それぞれの研究や理論の長所,貢献,限界を論じる。」

「新しい千年期に入ると,モティベーションの研究で三つの移行が明らかになった。認知に加え,情緒,とりわけ感情が調査されるようになった。かつて回避されたパーソナリティの問題が,ふたたびモティベーションの文献のなかで圧倒的となり,意識に加えて前意識または下意識への関心が高まっている。そこで第Ⅱ部では,この分野の現状に焦点を当てた。」

「第Ⅲ部では,将来の理論の発展と実証研究の有望な道筋と私が思うものをはっきりと説明している。」

「第Ⅳ部のエピローグでは,モティベーションの行動科学的原則を実践に活かす技法について論じる。」

と,狙いを書いている。僕には,

期待理論,
目標設定理論,
社会的認知理論,

あたりが,近しく,特に,いちばん,

社会的認知理論,

とりわけ,

自己効力感,

は,深く感ずるところがあり,強く影響を受けている。

目標設定理論は,

①具体的で困難な目標があると,目標がない場合や,あったとしても「ベストを尽くせ」という抽象的な目標の場合より,高い業績が得られる,
②目標にコミットメントがあると,その目標が高いほど高い業績が得られる,
③金銭的インセンティブ,意思決定への参加,フィードバック。または結果の把握といった変数は,具体的で困難な目標の設定とそのコミットメントにつながる場合にのみ,業績に影響を残す。

というもので,以降のマネジメントに強い影響を与えたことが,よく分かる。著者は,

「要するに,目標は,その達成に向けて関心と行動を方向づけ(選択),活力をかき立て(努力),努力する時間を引き延ばし(持続),適切な戦略を立てるよう個人を動機づける(認知)ことに効果がある」

とまとめる。

社会的認知理論は,

①行動を認知的,行動的,環境的変数の継続的な相互作用として捉える。行動が環境によって決定され,同時に環境に影響する。環境は次に,その人の自覚する意思または目標に影響し,その逆も起きる。
②人は他者の行動とその結果を予測し,目標を設定し,それに応じて行動することができる。このような自己調整プロセスの結果として,人は目標達成に向けた報酬を通して,各々自己動機付けの担い手として機能することを学ぶ。
③個人差を示す,結果期待(必要な行動をとれば所定の結果が起きるという信念),自己効力感(所定の環境で所定の行動を実行できるという信念)が,重要な仲介的役割を果たす。
④結果期待によって行動を調整する際,人は+の結果を生みそうな行動をとり,報われない結果や懲罰的な結果につながる行動は通常とらない。
⑤自己効力感が強いと,苦労の多い状況でもストレスや落ち込みが少なくなり,逆境を跳ね返す力が強くなる。

等々であり,著者は,こうまとめる。

「業績への影響で能力より重要なのは,与えられた課題を実行できる能力が自分にあるという本人の信念だ。同じように業績が低い人でも,自己効力感が高い人は努力し,課題を修得できるまで努力を続ける。対照的に,自己効力感の低い人は,業績の悪さを理由に目標をあきらめようとする。…自分の行動によって目標を達成できると信じていないかぎり,困難に直面したときに行動を持続することは難しい。自己効力感は,結果的にモティベーションを左右する認知的判断だ。」

著者は20世紀を概括して,モティベーションの議論を,

ソーンダイクの職務満足効果,
金銭的インセンティブ効果,
リッカートの態度調査効果,
ホーソン研究効果,
マズローの欲求階層説効果,
ハーズバーグの動機づけ要因効果,
ヴルームの期待理論効果,
目標設定理論効果,
ヴァンデューラの社会的認知理論効果,
組織の公正の原則効果,

の10項目を,「激震的出来事」として挙げた。そして,ピンターの言を借りて,モティベーションを,

「個人の存在のなかで,また個人の存在を超えたところで生まれる,活力源となる力の集合であり,仕事に関連した行動を始動し,その形態,方向,強度,期間を決定する」

とし,こう付け加える。

「ワーク・モティベーションを予測し,理解するには,動機づけられたエネルギーの向かう具体的な目標を知らなければならない。モティベーションは目標が難しい時に喚起される。目標が達成可能であると知覚される(自己効力感)かぎりにおいて,継続や持続の力がうまれる。」

と,まとめる。最後に,

「私が掲げた大きな目標は,『無境界』心理学を構築することだ」

として,社会心理学,臨床心理学,生涯研究,進化心理学,神経科学の協調と交流によるシナジー効果による,

「人間行動における『不変要素』を発見できる」

のではないか,と提起する。そして,最後に,著者とエドウィン・ロックによる,モティベーション理論の統合モデルを示している。

「モデルは,欲求から始まり,獲得された価値と動機(パーソナリティを含む),目標選択,目標そのもの,自己効力感へと進む。ロックは,目標と自己効力感を『モティベーションの中心』とした。理由は,ほとんどの例において,この二つが従業員の業績を決定する直截的で意識的なモティベーションの決定要因だからだ。」

これは,メタ分析を統合することによってうまれた最初のモティベーション理論ということになる,と著者は語り,大事なことは,

「社会的普及に関する理論がぜひとも必要である」

と,社会のなかでの実効性からの評価を求めている。

私的なことだが,モティベーション理論の歴史を概観する最適な参考書が少なく,昔,自分で,システム手帳に,動機づけ理論の変遷としてノートを創っていた。そこは,テーラーの科学的管理法から始まり,マズロー,マクレガー,ハーズバーグから,バーナード,アージリス,リカート,を挟んで,ヴルームで終わっていた。これからは,インデックスの完備した本書が最適の参考資料となりそうだ。

参考文献;
ゲイリー・レイサム『ワーク・モティベーション 』(エヌティティ出版)



ホームページ;
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posted by Toshi at 06:15| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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