2015年12月01日

因業


因業おやじ,

という罵り言葉かある。因業は,語感からも,仏教用語から来ているらしいとわかるが,辞書(『広辞苑』)には,

因と業,または果報をまねく因となる業,
頑固で無常なこと,むごいこと,

と意味が載る。これだと分かりにくいが,別の辞書をみると,

何らかの結果を生む原因になる行為。また、因と業。
《前世の悪業が原因で招いた性格や運命の意から》
・頑固で思いやりのないこと。また、そのさま。
・宿命的に不幸なこと。また、そのさま。

と載る。善悪いずれにしても, 因があって業がある,

前世の悪業が原因となって招いた,

という意味で,その性格やいまのありようがある,ということらしい。『大言海』は,

因と業と
頑なにして苛(から)きこと,心ねじけて情けのなきこと(悪業によりて然りとする意)

とあり,因縁を見よ,とある。因縁(いんねん・いんえん)の説明がふるっている。

「譬えば,穀を地に植うれば,稲を生ず,穀は因なり,地は縁なり,稲は果なり,然して,これをおこなふことを業と云ふ。因りて,因縁,因果,因業など,人事の成立(なりゆき)は,皆因(ちなみ)あり,縁(よ)る処ありて,果(はて)に至ること,予め定まれりとす。」

つまり,

何らかの結果を生む原因となる行為,

があって今がある,ということらしい。

因果はめぐる風車
というか
因果応報

ということなのだろう。どうも,この考えは,我々の奥底に根深くあるらしい。過去の付け,というのもそういうことだ。辞書(『広辞苑』)には,

物事の生ずる原因,因は直截的原因,縁は間接的条件,

とでる。すぐに原因・結果を想定する傾向が人間にはあるので,生についても,そういうことを想定する。そういう発想と思えば,世代を超えていくスケールの因果論とも言える。

因縁,
因果,
因業,

は,セットということになる。

穀は因なり,地は縁なり,稲は果なり,

がこの間の関係を言い尽くしている。因みに,「業」は,梵語karman,羯磨(かつま)のこと,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%AD

には,

「『行為』を意味する。業そのものは、善悪に応じて果報を生じ、死によっても失われず、輪廻転生に伴って、アートマンに代々伝えられると考えられた。アートマンを認めない無我の立場をとる思想では、心の流れ(心相続)に付随するものとされた。中国、日本の思想にも影響を与える。『ウパニシャッド』にもその思想は現れ、のちに一種の運命論となった。今日、一般的にこの語を使う場合は、(因縁・因果による)行為で生じる罪悪を意味したり(例えば『業が深い』)、不合理だと思ってもやってしまう宿命的な行為という意味で使ったりすることが多い。」

とある。辞書(『広辞苑』)は,「行為」を,

身(身体)・口(言語)・意(心)の三つの行為(三業)

とし,その行為が,未来の苦楽の結果を導き出す,という。前行が,後のおのれにつけが回る,と言うことだ。だから,いま,因業おやじと呼ばれている輩は,過去(あるいは前世)の悪業の報いを受けている(あるいはそのお返しをしている)ということになる。

どこか,そこには,因果を見ることで納得するという悲哀が感じられなくもない。

「因」の字は,

「□(ふとん)+∧印(乗せたもの),または大(ひと)」

で,布団を下に敷いて,その上に大の字に乗ることを示す,という。で,

下地を踏まえて,その上に乗ること,

を意味する。だから,何かを踏まえる,とか,重ねる,という意味になる。「業」の字は,

ぎざきざの止め木のついた台を描いたもの

で,でこぼこがあってつかえる意を含み,

すらりとはいかない仕事の意,

という。本来,ぎざぎざの歯止めのついた台の意から,それをメタファにして,

ぎざぎざとつかえて苦労する仕事,

という意味に広がっている。「縁」の字は,

彖(たん)は,豕(し ぶた)の字の上に特に頭を描いた象形文字で,腹の垂れ下がった豚,の意。豚と同系。「縁」は,糸をつけて,布の端に垂れ下がったふち,

の意。なんとなく,それをメタファに,ふち,てづる,つながり,といった意味に広がっていくのがわかる気がする。「果」の字は,

木の上に丸い実がなった様を描いた象形文字,

で,文字通り,果実,であり,物事の結果である。

梵語に当て字をしたにしても,その語の含意をよく込めている。その意味で言うと,因業の類語,

意地張り
頑冥
あこぎ
無慈悲
非道

等々という言葉は,いま・ここしか指していない。しかし,

因業,

と名づけられると,それはもっと謂れと由来の深い,悪業であるというニュアンスが出る。



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posted by Toshi at 05:45| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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