2015年12月06日
貧相
貧相は,
いかにも貧乏そうな人相,(反対が,福相),
貧弱でみすぼらしく見えること。またそのさま,
という意味だから,貧しい相という漢字そのものということになる。
『大言海』には,
貧しき状の容貌,
又貧乏の運命を具へたる人相,
窮相,
とある。で,『沙石集』から,
「さて,彼佛,御うなじの貧相に御坐すを,上人,仏師を呼びて直さしめんとする」
の例示が出ていて,案の定,仏相を指しているらしいことをうかがわせる。しかし,最近の用例を見ると,
貧相で空疎な内容,
貧相な朝食,
等々,容貌よりは,
貧弱とか,
みすぼらしい,
という(貧しさよりメタファとしての貧弱さに)意味にシフトして使われているような気がする。豪華とか華麗とか横溢といったニュアンスの反対語として使われている。だから,たとえば,類語を見ると,
風采の上がらない,
野暮ったい,
不恰好な,
貧弱な,
体格の良くない,
華奢な,
侘しい,
哀れな
惨めな,
等々を挙げる。「貧相な」というと,こういう含意で言われている,ということになる。そのせいか,「貧相に見える人の5つの理由」というのが
http://otonaninareru.net/poor/
に,載っている。それは,
家族や親族に文句ばかり言う
ニュースや政治について不満を言う
身なりが貧相
お金の使い方が偏っている
テレビで見た事ばかりを話す
だそうである。申し訳ないが,これを挙げている人自体が,貧相そのもののモデルである。その人に見えている世界そのものが痩せて,みすぼらしい,ということを無意識のうちに露呈している。こういうことを貧相と言っているレベルこそが貧相なのではないか。むしろ,
他人を貧相と評する,
こと自体が貧相そのものといっていい。因みに,福相というのは,
裕福な運命を具えた人相,福々しい人相,
とある。『大言海』も,
福々したる状の容貌,
有福なるべき運命を具へたる人相,
とある。肝心なのは,「貧相」が「貧乏」とイコールではないように,「福相」も「裕福」とイコールではない。そういう相に過ぎない。人相は,
人の顔つきに,その人の性格・性情・運命などが現れていること,
という意味で,人相占いは,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E7%9B%B8%E5%8D%A0%E3%81%84
にあるように,「顔相、骨相、体相など、人体のつくりから性格や生涯の運勢を割り出す占い」とされる。個人的には,骨相学
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AA%A8%E7%9B%B8%E5%AD%A6
や,クレッチマーの
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%9E%E3%83%BC
体系説,つまり体系で性格がわかるとした説等々,いずれもどこかいかがわしい,と思っている。ある面,人間の内面を安く見積もりすぎていて,その説自体を,そういう説を。主張する人が貧相に見えてしまう。
「相」という字は,
「木+目」
の会意文字で,木を対象において目で見ること,AとBが向き合う関係を表す。とすると,相手を貧と見るのは,自身の貧を投影し,自分の貧が相手に見えているにすぎない。
「貧」の字は,
「分(分散)+貝(金銭財貨)」
で,「分」は,「八印(わける)+刀」で,二つに分けること,「貧」は,家から金が分散する,という状態を示す。「福」の字は,
「畐は,とくりに酒を豊かに満たしたさまを描いた象形文字。福は,…それに示(祭壇)を加えた字で,神の恵みが豊かなこと」
を表す。こう見ると,貧しさは,財貨の散逸ではなく,神の恵みへの感謝を示す,心の充実の欠如を示している,とも取れる。
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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