2015年12月08日

創造性


シャロン・ ベイリン『創造性とは何か―その理解と実現のために 』を読む。

創造性とは何か.jpg


まあ,創造性開発に関わる本は,最近はともかく,管見だけでも,

http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/prod0841.htm

と,すさまじいものがある。本書もそういう類いの一冊だが,特色は,

創造性,

というものを特殊な思考と見なす姿勢への批判だ。僕も同感だ。著者は,「序」で,

「“創造性”という概念は,その語源から離れてきたきらいがある。私たちが忘れてしまっているのは,“創造性”という言葉がもともと『創意工夫して造り出すこと』という意味で使われていたはずであり,すばらしい達成や成果と関係しているとしいう点だ。」

と述べる。でなければ,

創造性ごっこ,
発想ごっこ,

にしかならないと,僕も思う。著者は,創造性について見られる見解を次のように整理し,本書を通して,それを徹底的に批判している。

創造性についての見解の共通点は,

①「目新しいことを生みだすという言い方で使われる“独創性(オリジナリティ)”と,創造性との間に密接な関係があるという点だ。漸進で,拡散的だが,日常一般のことがらや,すでに容認されているものとは決定的に違うという意味が,“創造性”という言葉にこめられているようだ。」

②「創造性とは,過去と,また現存する伝統と完全に決別する,つまり枠組みを根本的に帰るという意味に受けとっている。」

③「創造性には飛躍があるという考え方の根本に,『創造的な成果の“価値”など,客観的に決められない』という,いまひとつの仮説がある。だが,若しも創造性が,過去の伝統と,それにともなう考え方の枠組みとの根本的な断絶に特徴ありとすれば,創造的な仕事を評価できる基準などありえないし,そうした評価など全く主観的なものとなる。」

④「こうした考えに従うと,創造的成果の価値が論じられるか否かの結論として,創造性に必要なのは,成果として製作したものにあるのではないという点に行きつく。」

⑤「創造過程は,『いままでの規則を打破しては,パターンを再構築する』というようなことを含めると,必然的に自由で,何ら拘束を受けるものではないはずという考えが強く出る。」

⑥「創造性は,技能以上のもの,即ち経験を越え,何かに原因を求めることのできない,元々説明の出来ない想像上のものという考えに落ちつく。」

とまとめ,こうした見解によれば,

「ふつうの思考は,論理,慣習,厳密さ,きちょうめんな判断,それに以前に確立され規則やパターンに固執する点に特徴がある」

ということになり,創造的思考は,

「想像力の飛躍,理性によらないプロセス,カタやぶりの判断停止,そして止めどなく湧いてくるアイデア」

というイメージになる,と。多少のカリカチュアはあるにしろ,本書で槍玉に挙げられている。

アーサー・ケストラー(『創造活動の理論』),
エドワード・デ・ノボ(『六色ハット』)
トーマス・クーン(『科学革命の構造』)

等々,の創造性論者たちだ。で,著者は,

「創造的な成果に見られる独創性は,伝統との関連を抜きにして理解できないこと」

「創造性を評価する客観的な基準があり,その基準は,作品が発展していく際に連綿と引きつがれる伝統によって,かなり明確に示せる」

「創造性をみる唯一筋の通った方法は,価値あるものを創り出すか否かという点にある。」

「創造性にとって,特殊な専門分野での知識や規則,技能,方法が最も重要」

「想像は技能に密接に結びついていて,それを理解すれば創造性の説明にもつながる」

という立論を,創造性論者の論点に添いつつ論じていく。その論点は,

芸術,
科学と技術,
数学,
日常生活での問題解決,

幅広い。僕は,発想とは,

知識と経験の函数である,

と思っている。過去から断絶しているように見えるのは結果であって,プロセスではない。

「独創性というのは,行き当たりばったりの目新しさではない。いわれのない目新しさでもない。いままでのものと差をつけるような,また,時代の要求に応えて,問題を解決し,芸術の進展に寄与するような,他と一味“違う”点にかかわっているのが独創性なのである。」

という著者の言葉に同感である。ベイトソンは,

情報とは差異である,

として,

「情報の1ビットとは,(受け手にとって)一個の差異(ちがい)を生む差異である。そうした差異が回路内を次々と変換しながら伝わっていくもの,それが観念アイデアの基本形である。」

といった。その差異は,顕在化しているとは限らない。誰にでも自明とは限らない。その僅かなその差異に気づいたものが,それをカタチにしていく。

「芸術の価値をみるのに関係しているのは,伝統を知ることであり,いかに作品が伝統と適合したり,はみだしたりしているかである。」

と,著者の言うのはその意味である,と思う。この辺りのことは,本書でも言及する,

ロバート・ワインバーグ(『創造性の研究』)

が,かなり掘り下げて,実証研究し,

「創造的思考は,増加した情報に基づいて従来の考えを一つひとつ修正しながら,増大していくという性質をもつ」

と述べていることと符合する。

参考文献;
シャロン・ベイリン『創造性とは何か―その理解と実現のために 』(法政大学出版局)
グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』(思索社)



ホームページ;
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