はか


「はかどる」の

「はか」

である。

はかが行く,

という言い方もする。

はかどるは,

捗る
果取る

と当てる。

はかが行くは,

果が行く

と当てる。いずれも,

仕事が順調に仕上がっていく,
進捗する,

という意味である。語源は,「はかどる」で言うと,

「ハカ(進度・進み具合)+とる(積み重ねる)」

で,仕事が進という意味になる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ha/hakadoru.html

には,

「はかどるの『はか』は、『はかる』『はかばかしい』などの『はか』と同源で、漢字では『捗』『 果』『計』『量』などと書き、仕事の分担や目標・進み具合などを意味する語。 『はかが行く (はかがゆく)』の形では平安時代から見られ、『はかどる』の形は江戸時代から見られる。」

とある。で,「はか」を調べると,辞書(『広辞苑』)には,

計,
量,

の字を当て,

稲を植えたり刈ったり,まくた茅を刈るときなどの範囲や量,また稲を植えた列と列の間を言う。
目あて,あてど。
(「捗」とも書く)仕事の進み具合,

の意味が載る。で,『古語辞典』を調べると,

計,
量,
捗,

の字を当て,

「ハカリ・ハカドリ・ハカナシなどのハカ」

とあり,上記の辞書(『広辞苑』)と同じ意味が載る。『大言海』は,「計」と「量」を別項を立てる。それぞれの由来が異なることがはっきりわかる。さすがに,『大言海』である。

「計」は,

「稻を植え,又は刈り,或いは茅を刈るなどに,其地を分かつに云ふ語。田なれば,一面の田を,数区に分ち,一はか,二(ふた)はか,三(み)はかなどと立てて,男女打雑り,一はかより植え始め,又刈り始めて,二はか,三はか,と終はる。又稲を植えたる列と列との間をも云ふ。即ち,稲株と稲株との間を,一はか,二はかと称す。」

と,ある。こういう説明が,文字面ではなく,現実をわかっている説明という。辞書(『広辞苑』)は,意味レベルではなく。その実態,エピソードレベルまで降ろさなくては,芯の意味は分からない。

「量」は,

「量(はかり)の略。田を割りて,一はか二はかと云ふ。農業の進むより一般の事に転ず。かりばかの条をみよ。」

とあり,「仕事の捗る」という意味を載せる。因みに,「かりばか」を見ると,

刈婆加,

の字を当て,

「稲刈りに,田に区分を分割して,刈り取ることを云ふ。刈量(かりはか)の義ならむ。…功程(はか)のゆく,ゆかぬという語,是なるべし。然して,それがやがて,稻,茅の刈取という意となりしとおぼし」

とある。初めは,「量」で,その意味が広がって,「計」になり,ついには,

捗る,

とあて,「捗」を当てるようになった,と考えられる。この「はか」が,

はかない,

の「はか」に通じる,というのである。『大言海』は,

無果敢,
儚,

の字を当て,

「あとはかなし(無痕迹)の略,としているが,辞書(『広辞苑』)には,

果無い,
果敢無い,
儚い,

の字を当て,

「ハカは,仕上げようと予定した作業の目標量。それが手に入れられない,所期の結実のない意」

として,

これといった内容がない,とりとめがない,
てごたえがない,
物事の進捗などがわずかである,
うっけない,むなしい,特に人の死についていう,

等の意味が載る。「はか」がいかない,という意味の,果てに,

とりとめがない,
むなしい,

と行きついたということになる。「はかない」には,「いたずらに」という意味がある。はかか行かないことはたしかに,むなしい。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


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