2015年12月25日

そそぐ


「そそぐ」は,

注ぐ(灌ぐ),

と当てるのと,

雪ぐ(濯ぐ)

と当てるのと意味が違う。ただ,いずれも,共通して「灌ぐ」の字も当てるところに,何か意味がありそうだ。

「注ぐ」は,室町時代までは,「そそく」だったらしいが,

水が激しく流れる,
雨または雪が降る(降りかかる),
名もだがしきりに落ちる,
流れ入る,流れ込む,
風が吹きいる,
まき散らす,流しかける,
注ぎ込む,
もっぱらその方向へ向ける,

等々といった意味になり,「雪ぐ」だと,「すすぐ」に同じとあり,「すすく」は,

漱ぐ,
濯ぐ,
雪ぐ,
洒ぐ,
滌ぐ,

と当てて,

水で洗い清める,
口をゆすぐ(漱ぐ),
穢れを清める,
汚名を晴らす(雪ぐ),

といった意味になる。いずれも,水に関わる。語源を見ると,

「雪ぐ」は,「すすぐ」とも訓ませ,

「『ソソ・スス(擬音)+ぐ』です。水で洗い清める,汚名をソソグ,ススグに雪の文字を使うのは,中国語の訓読みから来たもの」

とする。

「注ぐ」は,つぐ,さす,とも言い,

「『ソソ(水を注ぐ擬音)」+ぐ』です。水などを流しかける意です。流れ入れるソソグ,光がソソグ,も同源です。ツグは,継ぐと同源です。液体が切れないようにツグで,注ぐを,ソソグとも,ツグとも,訓読するのは同源だからです。サスは,差すで,手を出して注ぐです。」

とある。ちなみに,「濯ぐ」は,

「『スス(擬音)+ぐ』です。水で洗い清める意です。ケガレ(汚れ),汚名をススグにも使います。中世はソソグが主流でした。関西ではいまでも,そそぐを使う人が多いようです。」

とある。『古語辞典』にも,

「ソソは,擬音語・擬態語。水の流れる音,かかる音,散る音など」

とあり,江戸時代初期から濁音化した,とある。

思うに,ソソもススも,水にまつわる擬音語・擬態語であり,それだけでは,

水が流れる
のか,
水がかかる,
のか,
水が散る,

のかさっぱり区別がつかない。それに漢字を当てることで,いつも感じることながら,その意味が格段に広がった。「そそぐ」が,

水を流す,
水で清める,

含意をもつことから,から,「そそぐ(すすぐ)」が「雪ぐ」になったのは,わかりやすい。

それにしても,昨今,「やばい」「わわいい」ですべてを済まそうという傾向は,いってみると貧弱な和語への先祖がえりに見える。また,元の貧弱な言語系に落ちぶれていくのであろうか。それは,貧弱な視界になる,ということに等しい。

人は持っている言葉によって見える世界が変る,

いわば,貧相な言葉は,貧相な世界しかもて(見え)ないことになる。

さて,その意味で,漢字を当たっておく。

「注」は,

「水+主(灯火)」で,燃えている灯火に水を掛ける,が語源。」

で,「濯」は,

「翟(テキ)は,『羽+隹(とり)』の会意文字で,キジが尾羽を高く抜き立てたさま。濯はそれを音符とし,水を加えた字で,水中に付けたものをさっと抜きあげて洗うこと」

とある。「漱」の字は,

「欶は,せかせかと動かす意。漱はそれを音符とし,水を加えた字で,せかせかと口を動かす動作から,口で嗽をする意となる。」

とある。「洒」の字は,

「西は,めのあらいざるを描いた象形文字。栖(ざるのような鳥の巣)にその原義が残る。ざるに水を入れるとさらさらと流れ去ってざるが後に残ることから,陽の光や昼間の容器が,ざるの目から抜けるように流れ去る方向,つまり「にし」を意味するようになった。ざるの間から細かく水が分散して出ていく,という含意から,洒は『水+音符西』で,さらさらと分散して水を流すこと」

とある。「滌」の字は,

「攸(ゆう)は,『人の背に細かく長く水をそそぎかけるさま+攴(動詞の記号)』の会意文字。條(=条)は細かく長い木の枝。滌は『水+音符條』で,細く長いの意味を含み,攸の原義を表す」

とある。「雪」の字は,

「もと『雨+彗(すすきなどの穂で作ったほうき,はく)』の会意文字で,万物を掃き清めるゆき」

の意とある。因みに,「雪辱」は,

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/se/setsujyoku.html

によると,

「『辱』は『辱められる(はずかしめられる)』を意味し、『雪』は『雪ぐ(そそぐ)』『すすぐ』『洗い 清める』を意味する。 そこから、恥をそそぐことを意味するようになり、前回負けた相手に 勝ち、受けた恥をそそぐことを『雪辱する』『雪辱を果たす」と言うようになった。』

とある。 擬態語には,ここまでの含意はない。漢字さまさまで,それをないがしろにする気風に,未来はない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


ホームページ;
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今日のアイデア;
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posted by Toshi at 05:56| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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