2016年01月13日

うぶめ


「うぶめ」と聞いてすぐに,ピント来る人は少ないだろう。よほどの妖怪通である。

産女,
あるいは,
姑獲鳥,

と当て,

うぶめどり,

と訓む場合も,

姑獲鳥,

と当てる。

「うぶめ」は,辞書(『広辞苑』)には,

産褥にある女,
(「姑獲鳥」と書く)出産のため死んだ女がなるという想像上の鳥,または幽霊。その声は,子供の鳴声に似,夜中に飛行して子供を害するという。うぶめどり,うぐめ,

と,その意味を載せる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A3%E5%A5%B3

には,

「産女、姑獲鳥(うぶめ)は日本の妊婦の妖怪である。憂婦女鳥とも表記する。死んだ妊婦をそのまま埋葬すると、『産女』になるという概念は古くから存在し、多くの地方で子供が産まれないまま妊婦が産褥で死亡した際は、腹を裂いて胎児を取り出し、母親に抱かせたり負わせたりして葬るべきと伝えられている。胎児を取り出せない場合には、人形を添えて棺に入れる地方もある。」

とある。出産が,今でもそうだが,難事だったことを窺わせる。産女は,

http://www.candychild.com/fantasy/u/

によると,

「赤子を抱いて現れる。下半身は血まみれで、子供を抱いてくれと頼む。抱いていると、赤子はだんだん重くなり、地面に下ろそうと思っても、身動きができない状態になる。その重さに耐えることができれば、彼女は成仏することができるという。抱いていた赤子が、木の葉に変わっていたという話もある。姑獲鳥(うぶめどり)は青鷺に似た鳥のような生き物で、青白い炎に包まれて空を飛ぶ。地上に降りると、産女になるとされる。」

とあるが,

http://www.zb.em-net.ne.jp/~kiokunomori/html/mukashi/kaisetsu/ubume.html

によると,

「産女とは、産死した女の霊が化した化物(妖怪・幽霊)の事をいいます。産女の登場する話は沢山の種類がありますが多くは、晩方に道の畔(川の畔など)に現れ、通る人に赤子を抱いてくれと 頼むというものです。そしてその先の話は三種に分かれます。
第一は、名僧の法力によって母子の亡魂が救われるというもので、『和漢三才図会』『新編鎌倉志』などの産女塔の由来譚による と、昔この寺の第五世日棟上人が、ある夜妙本寺の祖師堂へ詣る道すがら、夷堂橋の脇から産女の幽霊が現れるのに出会った。 冥途の苦難を免れたいと乞うので回向すると、一包の金を捧げて消えたというものです。
第二は、抱いた赤子が次第に重く腕がぬけるほどになり、それに耐えると金銀をくれるというもので、上総山式郡大和村法光寺の 宝物『産の玉』の由来として説かれている話のごときものです。
昔、寺の日行という上人が、道の途中で女が憔悴した赤子を抱いているのに出会い、頼みに応じて抱き取ってやると、 重さは石のようで、冷たさは氷のようであった。上人はさわがずにお経をよんでいると、女はお陰で救われたと礼を言い、 礼物として安産の玉をくれたと伝えられています。
そして第三は、授かった礼物が金品ではなく大力(怪力)であるというものです。 島原半島に伝わる話の一つに、ある女が産女の子を預かって大力を授けられ、後代々の女の子にそれが 伝わったという例があります。」

とある。ところが,姑獲鳥を,

こかくちょう,

と訓むと,中国の別の妖怪になる。これが,日本に伝わって,混同されたものとされている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A7%91%E7%8D%B2%E9%B3%A5

によると,姑獲鳥(こかくちょう)は,

「中国の伝承上の鳥。西晋代の博物誌『玄中記』、明代の本草書『本草綱目』などの古書に記述があり、日本でも江戸時代の百科事典『和漢三才図会』に記述されている」

うぶめどり.jpg


とある。この妖怪は,

「『夜行遊女』『天帝少女』『乳母鳥』『鬼鳥』ともいう。鬼神の一種であって、よく人間の生命を奪うとある。夜間に飛行して幼児を害する怪鳥で、鳴く声は幼児のよう。中国の荊州に多く棲息し、毛を着ると鳥に変身し、毛を脱ぐと女性の姿になるという。他人の子供を奪って自分の子とする習性があり、子供や夜干しされた子供の着物を発見すると血で印をつける。付けられた子供はたちまち魂を奪われ、ひきつけの一種である無辜疳(むこかん)という病気になるという。」

とある。そして,

「江戸時代初頭の日本では、日本の伝承上の妖怪『産女』が中国の妖怪である姑獲鳥と同一視され、『姑獲鳥』と書いて『うぶめ』と読むようになったが、これは産婦にまつわる伝承において、産女が姑獲鳥と混同され、同一視されたためと見られている」

らしいが,「鳴く声は幼児のよう」というから,確かに紛らわしい。

姑獲鳥Ⅲ.jpg


これが,遠い昔のことかというと,

「1984年(昭和59年)5月15日の午前7時25分、静岡市(現・静岡市葵区)産女(うぶめ)の県道で女性が運転する乗用車が集団登校中の児童の行列に突っ込み、児童数人を跳ね飛ばしてガードレールに激突した。加害者の証言によると、三つ辻の道路の左側に変な老婆が立っており、避けようとして事故になったと答えた。だがこの事故を目撃した児童はオートバイを追い越そうとして事故になったと証言し、老婆のことには言及していない。その土地は古来から産女新田と呼ばれていて、地名の由来は江戸時代に牧野喜藤兵衛という漂泊の者の妻が妊娠中に死に、その霊が何度も現れたため、その怨念を鎮めるため村人が産女明神として祀ったという縁起である。」

という例が載る。

そのことを信じる,というかそういう文化的文脈の中にある人にしか見えないものなのだろう。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A3%E5%A5%B3
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A7%91%E7%8D%B2%E9%B3%A5
http://www.zb.em-net.ne.jp/~kiokunomori/html/mukashi/kaisetsu/ubume.html
堤邦彦『江戸の怪異譚―地下水脈の系譜』(ぺりかん社)


ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
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posted by Toshi at 05:35| Comment(0) | サムシング・グレート | 更新情報をチェックする
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