2016年01月14日

けち


けちという意味の,「六日知らず」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/430419548.html?1448742444

で触れたが,けちには,「ドけち」の「けち」以外に,

けちがつく,

の「けち」がある。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ke/kechi.html

は,「けち」を,

「金品を惜しがってださないこと。卑しいこと。またその人」

とし,その語源を,

「ケチは、『けちをつける』『けちがつく』の語源と同じく、不吉なことを 意味する『怪事(けじ)』が訛って『ケチ』になった。 江戸時代以降、ケチは『粗末で貧弱な さま』『いやしい』などの意味を持つようになり、現在の意味に転じていった。 」

とする。しかし,「けちくさい」の「けち」は,「六日知らず」で書いたように,

囲碁用語の「結」「闕」(けち),

が語源で,

「終盤で,一目,一目半とつめる」

から来ている。「けちる」という動詞も,ここから来ている。

「結(けち)」は,呉音で,

「囲碁で,終局に近づき,駄目を詰めて寄せること,またその目」

とあり,「闕」(けち)とも当てる。そこから,賭け弓で勝負を決めること,に意味が広がっている。囲碁をやらぬものにはわかりにくいが,『大言海』には,

「碁を打ち終ふるを,結局と云ふ,結なり,弓に云ふも,勝負の最後の決定の意なるべし」

として,こう説明する。

「囲碁の終はりがたに,隅々などの,決まらぬ目を詰め寄すること。これをケチをさすと云ふ。今,よせと云ふ,是なり。ケチを先手にさすを,結鼻(けちばな)をとると云ふ。先手にさせば,一目づつの得となるなり」

とし,さらに,

「今,駄目をさすをケチさすと云ふは,闕の音にて,闕(欠)目すなはち,駄目なり」

とある。「けちがつく」の「けち」は,語源が,『語源由来辞典』が言うのに似て,

「ケシ(怪し)(怪事)」

で,不吉,ないし,縁起が悪い,という意味になる。語源的にも,

「怪チ・恠チ(縁起が悪い,不吉)」

で,

縁起が悪くなるようなことを言う
欠点を挙げてけなす,

という意とする。『古語辞典』も,

「ケシ(怪事)の転か」

とあり,

不吉事,不吉な兆し,縁起が悪いこと,

とあるが,同時に,

しわいこと,
そまつ,貧弱,
ばからしいこと,つまらないこと,

と意味が並ぶ。「怪事」と「闕・結」と,由来が違うのに,「けち」で,意味が重なったのだろうか。『大言海』は,「闕」「結」「怪事」と,「けち」を,それぞれ別の項を立てている。「怪事」の「けち」については,

「倭訓栞けち『アヤシキ事ニ云フハ,恠事(かいじ)ノ音転也』(屐子(けいし),けいち。皀角子(さいかし),さいかち。うるしね,うるち。弟子,丁稚。私(わたし),わっち。)」

とあり,

怪しきこと,不吉,

といった意味と並んで,

怪事(けち)を恐るるよりして,臆病,卑怯,
転じて,吝(しわ)いこと,けちんばう,

とあり,吝嗇の意味と重なっていることがわかる。辞書(『広辞苑』)で,「けち」をひくと,「結」「闕」とは別に,「けち」として,

縁起が悪いこと,不吉の前兆,
不敬気,金品を必要以上に惜しむこと,
ある語に付けて,いまいましい意を表す。「けちふとい二才野郎じゃ」。

と載る。「けし」を見ると,『古語辞典』には,

異し,
怪し,

と当てて,

「ケ(異)の形容詞形平安女流文学では,『けしうはあらず』『けしからず』など否定形で使うことが多い」

として,

いつもと違う,ふだんと違って宜しくない,別人に愛情をもつ,病気が悪いなどの場合に使う,
劣っている,悪い,
下手である,
不美人だ,
非常である,甚だしい,
(連用形「けしう」の形で副詞的に)ひどく,

と意味が載る。こう見ると,億説だが,「怪し」は,普通と違うことを示す。それが,

吝い,

に転じていくのが,普通の人の視線では,わかる気がするが,(普通と思っている)自分と違うものを貶める,というのは,今も昔も,自己完結した世界観の反映でしかなく,島国的な,差別の始まりである。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


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