こうこう


「月がこうこうと輝く」という場合,

煌々

耿々

皓々
と,

どちらがいいのか,と迷った。

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「煌々」は,「晃々」とも当てるようだが,辞書(『広辞苑』)には,

きらきらひかるさま,ひかりかがやくさま,

という意味が載る。

「耿々」は,辞書(『広辞苑』)には,

光の明るいさま,ひらきらとひかるさま,

という意味と,

心を安んぜぬさま,うれえるさま,思うことがあって,忘れられないさま,

という意味がある。「耿々」は,「煌々」に比べて,陰翳がある,という含意であろうか。

「皓々」は,「皎々」とも当てるが,辞書(『広辞苑』)には,

白いさま,潔白なさま,
月のひかりなどの明るいさま,
むなしく広いさま,

という意味で,「月こうこうとして」は,「皓々」を当てる,ということなのだろう。似た意味で,

浩々,

というのがあるが,これは,辞書(『広辞苑』)によると,

(書経)水の広々と広がっているさま,
(中庸)こうだいなさま,

とあり,「皓々」の広さの「むなしさ」の含意はないようだ。

http://www.weblio.jp/content/
http://hyogen.info/word

等々によると,「耿々」は,

明かりが耿々とついている
耿々として眠れない

という使い方をする。「煌々」は,

煌々たる星の輝き
電球が煌々と輝く

と言った使い方になる。「皓々」は,

皓々たる白壁,
皓々冽々たる空霊の気
皓々たる月

と言った使い方となる。『大言海』は,

「皓々」を,「白く光りてある状,又潔く白き状を云ふ語」
「耿々」を,「光かがやく状に云ふ語。気澄みて寝られぬ状に云ふ語」

とのみ,区別する。

この区別は,漢字に当たるしかない。

「煌」の字は,

「皇は,『自(はな)+音符王』からなり,偉大な鼻祖(開祖)のこと。大きく広がる意を含む。煌は『火+音符皇』で,光が大きく広がること」

と説明され,輝く意だが,「光が大きく司法に広がる」という意味になる。

「晃」の字は,「晄」とも書く。

「光は『火+人』の会意文字で。晃は,『日+音符光』で,光が四方に輝くこと」

と説明され,光るという意で,「光が四方に広がり出る,またそのさま」という意味で,「煌」とほぼ重なる。

「耿」の字は,

「会意文字。『耳+火』。もと,耳から光が出るほど叩く意。転じて,ちかちかと火花が光ること」

と説明され,「ちいさくぽっとあかるいさま」「目の奥がちかちかして不安なさま」という意味をもつ。これは,伝統の明かりに使うのにふさわしい。

「皓」の字は,

「もとは,『日+音符告(こく)』の形声文字で,日が出て空が白むさまをあらわす。皓は,『日』を白に変えたもの」

と説明され,「白く輝くさま」という意味になり,語源は別として,やはり,月について,

月出でて皓たり,

と使う。白く輝くのは,やはり月だろう。

「皎」の字は,やはり,白く輝くさま,清らかなさま,という意味になる。「皓」と同じように,

月出でて皎たり,

とも使うようなので,「皓」と「皎」の字は代替されるようだ。

日本語に当てると,同じ訓みになってしまうが,中国語では,発音が明らかに違うのだろうと,想像しながら,漢字を入れた我が国祖先の苦労がしのばれる。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


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