2016年01月21日


安喜万佐子個展「景の足跡‐ traces of shadows」

https://www.facebook.com/events/428407667353861/429992253862069/

に伺ってきた。

安喜展.jpg


昨年の個展(「風景- LANDESCAPE SUICIDE -」)に伺ったときの感想は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/398086771.html

で触れた。

今回会場へ入った瞬間,いつもの癖で,各作品のテーマを観ようとして,貼付してなく,今回は,この全体が,

「景の足跡」

というのかと,勝手に独り合点し,そう言えば,入った瞬間,妙に統一した感じがしたのは,そのせいか,とひとりで得心していたが,それは勘違いであった。しかし,その勘違いは,必ずしも,的外れではない気がしている。

僕が絵のタイトルを気にするのは,言葉自体が,その向こうに景色を見らせる,と思っているせいだ。

「光の趾音」と題された,入口すぐの絵の向こうに,瞬間,モネの睡蓮(たまたま最近観たせいかもしれない)を背後に見た。というより,この絵を観たとき,勝手にそう感じた。後から,タイトルを知って,「光の趾音―池」とあった。タイトルがあることが,ひょっとすると,邪魔になることもあるのかもしれない。先にタイトルを観ていたら,そうとしか見なかったろう。

でも,僕は,タイトルの言葉(の向こうに見える世界)と絵の見せる世界がせめぎ合うのが,やはり面白いと思ってはいる。

僕には,「消失図」と題された作品が,一番いい。別に是非を論じるほど,絵画に造詣が深いわけではないので,単なる好みに過ぎない。タイトルを知らないで,観ていた時,僕は,空襲で焼け果てた都市の写真を(この絵に重ねて)見た。街の跡である。

風景という言葉は,

「風(季節のものが風に翻る)+景(太陽の光)」

が,語源とある。「景」の字は,「漢字源」によると,

「景は形声文字。京(亰)は,象形文字。上部(亠と口)は,楼閣の姿(高の字の上部と同じ),下部は,小高い土台を描いたもので,高く明るく大きいの意を含む。上古の人々は洪水や湿気をさけて,高く明るい丘の上に部落を作り,やがてそれが中心都市となり,京(みやこ)の意を生じた。景は,「日+音符京」で,大きい意に用いた場合は,京(けい)と同系。日かげの意に用いるのは,境(けじめ)と同系で,明暗の境界を生じること。」

とある。だから,

日光によって生じた明暗のけじめ,明暗によってくっきり浮き上がる形,転じて日光,
光によって生じた陰(明るい日影),

といった意味がある。

モノは,光によってその色とカタチを浮かび上がらせるが,陰もまた形を際立たせる。光も陰も,影に過ぎない。いやそもそも,闇にすら,濃淡(陰翳)がある。その意味では,

モノも色も景色も,

光の跡なのである。

各絵のタイトルは,「跡」の字は,「趾」と「跡」が使い分けられていたが,「趾」の字は,

「止は,あしくびを描いた象形文字だが,のち,ふまれてとまる意にもちいられて,あしくびをあらわした。趾は,『足+音符止』」

とあり,「足あと」を意味する。「跡」の字は,

「亦は,胸幅の間を置いて,両脇にある脇の下を意味する指事文字。腋の原字。跡は,『足+亦』で,次々と感覚をおいて同じ形の続く足あと」

とある。「跡」は「迹」に同じとある。「迹」の字は,

「辶(すすむ)+亦(一つ,また一つと続く)」

と,ある。「趾」は,あくまで,「痕(あと)」を示し,「跡」は,点々と続く,跡の形を示す。

そんなことを思っていると,カタチの見せ方には,たとえば,

ドッド化する,

というのがある。モノみな量子に遡及できるとするなら,ドットによってカタチを描くのも理にかなっている。そのドッドを色分けすれば,モノの彩りになる。あるいは,

明暗や色が反転したネガ(陰画と書いた方がしっくりくるか),

によっても,ものの輪郭が際立つということはある。影絵である。あるいは,

色を流す,

というのもある。昔,墨流しで,表紙のデザインをしていただいたことがあり,そのときデザイナーは,実際に水に墨を流して,あれこれ試していた。それは,自然の作りだす造形をなぞっているのに等しい。カタチは,意図を超えて浮かび上がる。

こんなことを,展覧会場を出て,時間調整にコーヒーショップで,考えていた。そして,気づいたのは(というよりは,作品を見てきたからこそ,そう感じたにすぎないのだが),そのすべてが,あの会場にあった気がするのである。

モノのかたちの迹が,点々と,展示されていたのである。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm


posted by Toshi at 05:53| Comment(0) | 個展 | 更新情報をチェックする
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