2016年01月23日

天狗


天狗は,

てんぐ,

と思いきや,

あまぎつね,

とも呼び,

流星(よばいぼし),

でもある,という。『日本書記』に,

「(欽明天皇の九年(637年)春二月)大きなる星東より西に流る。僧旻僧(ほふしみんほふし)曰へらく,流星(よばいぼし)に非ず,是は天狗(あまぎつね)なり。其の吠ゆる声雷に似たるのみと」

とある。阿部正路氏は,

「大きな音を立てて東から西へと流れる流星は,時の人たちにとって,地雷の音とみえたが,中国で学問をした旻は,根元にたちかえってそれはアマキツネ,すなわち天狗なのだと教えた」

と説明し,天狗が日本の文献に最初に現れたもの,という。これは,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%8B%97

によると,

「元々天狗とは中国において凶事を知らせる流星を意味するものだった。大気圏を突入し、地表近くまで落下した火球(-3〜-4等級以上の非常に明るい流星)はしばしば空中で爆発し、大音響を発する。この天体現象を咆哮を上げて天を駆け降りる犬の姿に見立てている。中国の『史記』をはじめ『漢書』『晋書』には天狗の記事が載せられている。天狗は天から地上へと災禍をもたらす凶星として恐れられた。」

という知識を,旻が持っていたということになる。

燕石・天狗.jpg

(鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「天狗」)


「今日、一般的に伝えられる、鼻が高く(長く)赤ら顔、山伏の装束に身を包み、一本歯の高下駄を履き、葉団扇を持って自在に空を飛び悪巧みをするといった性質は、中世以降に解釈されるようになったものである。」

とされているが,天狗は,今日では,例えば,辞書(『広辞苑』)には,

「深山に棲息するという想像上の怪物。人のかたちをし,顔赤く,鼻高く,翼があって神通力をもち,飛行自在で,羽団扇をもつという。」

それが,どういうわけか,高慢なこと,そういう人を指すように変る。それについて,

国芳・天狗.jpg

(歌川国芳筆)


「天狗は、慢心の権化とされ、鼻が高いのはその象徴である。これから転じて『天狗になる』と言えば自慢が高じている様を表す。彼等は総じて教えたがり魔である。中世には、仏教の六道のほかに天狗道があり、仏道を学んでいるため地獄に堕ちず、邪法を扱うため極楽にも行けない無間(むげん)地獄と想定、解釈された。」

とある。

その形状は,

「天狗の形状姿は一定せず、多くは僧侶形で、時として童子姿や鬼形をとることもあった。また、空中を飛翔することから、鳶のイメージで捉えられることも多かった。」

「平安末期成立の『今昔物語集』には、空を駆け、人に憑く『鷹』と呼ばれる魔物や、顔は天狗、体は人間で、一対の羽を持つ魔物など、これらの天狗の説話が多く記載された。」

「『平家物語』では、『人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、犬にて犬ならず、足手は人、かしらは犬、左右に羽根はえ、飛び歩くもの』」

等々様々,前記の阿部氏は,鳥は天狗の特質の一部であり,

「そのかたち鶴の如くで,色くろく,目はともしびのように光って羽ふるえ,鳴く声高いところの,新たなる屍の気変じた〈陰摩羅鬼(おんまらき)〉に近い。天狗の特質はあくまでも二本の足が確かで,一枚歯の足駄をはいているところにあるといえるだろう。天狗は人間でありながら他界にも現実にも徹することができず,しかも永遠に死ぬことができないことを怒っているものなのである。二本の確固とした足は他界に踏み込みながらなおこの世につれもどされている人間そのものを示し,一本の足駄の歯は,他界にも現実にも半ば足を踏みいれながら,常に,他界からも現実からも疎外され続けていることを意味する。」

と,その悲哀を書く。『古語辞典』を見ると,

中国で,古くは流星の一種,落下の際,音響を発するもの。天狗星
(山海経には「陰山に獣あり,其の状狸の如くして白首,名づけて天狗といふ」とある)空を自由に飛び回る想像上の山獣。後に,深山で宗教的生活を営む行者,特に山伏に擬せられ,大男で顔赤く,鼻高く,翼あって神通力を持つ者と考えられた。高慢なもの,または,この世に恨みを残して死んだ人がなるともいわれる,

と,経緯がわかりやすい。

山海経・天狗.jpg

(『山海経』より「天狗」)


天狗は,麒麟と同じく,想像上の獣だったものが,いつの間にやら,妖怪変化,怪物に変じてしまった。

『大言海』は,その経緯を順次あげていく。

流星の一種,天狗星と云ふもの(史記「天狗,状如大奔星有声,其下止地殻狗」),
一種の山獣なりと云ふ(山海経「其状如狸而白首,名曰天狗,其音如榴榴」),
(一種の魔物空中を飛行してじざいなるものと云ふ。魑魅魍魎,変化,こだま)後に図するところは,人の如くにして,両翼あり,手足の爪長く,頭巾を戴き,篠掛けを着て,金剛杖,太刀,羽団扇などを携帯し,一見修験者の装の如く,其の鼻突出したるを,大天狗と云ひ,又其の小さきを烏天狗,木の葉天狗などと云ひ,深山に棲むと云ふ。鞍馬山の僧正坊,愛宕山の太郎坊,比叡山の次郎坊,飯縄山の三郎,大山の伯耆坊,彦山の豊前坊,白峰の相模坊,大峯の前鬼など,大天狗なり。而して天狗を讃岐の金毘羅の使いとす」

と,想像が膨らんでいくさまが,可笑しい。

参考文献;
阿部正路『日本の妖怪たち』 (東書選書 )
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%8B%97



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posted by Toshi at 05:51| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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