2016年02月06日

唐様


売り家と唐様で書く三代目,

という。

江戸時代中期にできた川柳,

という。

「初代は苦労して家や財産を築く。
二代目はそれを受け継いで手堅く維持する。初代が苦労したのを知っているので、金持ちになったからといって浮わついた暮らしはしない。しかし、三代目になると、生まれたときから金持ちで苦労を知らないので、遊芸などで身を持ち崩し没落して、ついに自分の家を売り家に出すようになる。その売家札の字が唐様(からよう)で、しゃれている。遊芸におぼれて商売をるすにした生活がしのばれる、という意味です。」

とある。「売り家」と書いた札の文字が,

「中国風の書体でしゃれており,商売を留守に遊び暮らした生活ぶりがしのばれる」

という含意である。

「昔、貸家は『かしや』と仮名で、売家は漢字で書く習慣があった。」

というから,その「売家」という文字の意味が深くなる。

唐様,

とは,

「和風ではなく中国風であること。唐風と同義。」

とある。あるいは,

「唐様とは中国の書風のことで、禅僧による唐様を特に墨跡と呼ぶ。」

とあり,

「日本の書流(しょりゅう)とは、和様書の流派の総称である。平安時代中期の世尊寺流から分派した和様の流派が、江戸時代中期、御家流一系に収束するまでを…範囲とし、それ以外の著名な書流はその他の書流…。唐様は含めない。」

とある。まず,和流は,

「奈良時代から平安時代にかけて盛行した王羲之の書風を根底として、平安時代中期に三跡(小野道風・藤原佐理・藤原行成)らによって日本人らしい感覚の一つのスタイルが完成した。これを出発点として、平安時代末期に法性寺流、鎌倉時代末期に青蓮院流、江戸時代には御家流と書流が変化してきたが、この系列に生まれた書を総称して和様という。」

とある。たとえば,小野道風は,

小野道風.JPG

『屏風土代』(部分、三の丸尚蔵館蔵)


屏風土代(びょうぶどだい)の,土代とは「下書き」の意。内裏に飾る屏風に揮毫する漢詩の下書きらしい。平安時代末期の能書家で鑑識に長じていた藤原定信が、道風35歳の書であることを考証しているので、真跡として確実である,とされる。

藤原行成は,

藤原行成.jpg

(本能寺切 - (国宝)本能寺蔵)


では,唐様は,というと,

「墨跡の中国書法が北島雪山・細井広沢らに伝わり唐様として発展していく。唐様は儒者・文人などに用いられ、寂厳・池大雅らが継承し、江戸時代末期には幕末の三筆と呼ばれる市河米庵・巻菱湖・貫名菘翁の3人へと展開していった。この3人は武家や儒者に信奉者が多く、特に江戸の市河米庵は諸大名にも門弟があり、その数5000人ともいわれた。江戸時代中期ごろから書法の研究が進み、これまでの元・明の書風から晋唐の書風を提唱する者があらわれ、巻菱湖・貫名菘翁らは晋唐派であり、市河米庵などは明清派であった。」

と説明される。幕末の三筆の一人,市河米庵は,

市河米庵.jpg

(楽志論屏風 東京国立博物館)


あるいは,もうひとり,巻菱湖は,

巻菱湖.jpg

(五言律詩行書双幅「五仙騎五羊」左幅)


「江戸時代中期ごろから書法の研究が進み、これまでの元・明の書風から晋唐の書風を提唱する者があらわれ、巻菱湖・貫名菘翁らは晋唐派であり、市河米庵などは明清派であった。」

とあるから,ひとくくりに唐様と言ってしまえないが,素人には,違いがよく分からない。しかし,つくづく思うが,

売り家と唐様で書く三代目,

と川柳に詠い,それを聞く側も,聞きはとる力が,あったということになる。当然それは,唐様と,和様の区別もついたということになる。現代よりはるかに,素養のレベルが高いのである。

と同時に,この川柳が多くに共感され,諺の如くにして伝えられてきた背景には,豪商,豪農であっても,

「努めざれば三代にして滅ぶ」

という危機意識を反映している,江戸期町人・農民のまっとうな共通意識をも表している,と言えなくもない。

それに比して,今や三代目,四代目ばかりの政治家どもには,危機感の欠片もなく,売り家どころか,売り国の札を,金釘流で描きそうな連中ばかりだ。こんな連中と心中するつもりなのだろうか。

参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1281310572
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%9B%B8%E6%B5%81#.E5.94.90.E6.A7.98



ホームページ;
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今日のアイデア;
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posted by Toshi at 05:29| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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