2016年02月13日

ぬえ


ぬえは,


とも

とも
恠鳥
とも
奴延鳥

とも当てるようだ。辞書(『広辞苑』)には,

トラツグミの異称,
源頼政が紫宸殿上で射取ったという伝説時用の怪獣。頭は猿,胴は狸,尾は蛇,手足は虎に,声はトラツグミに似ていたという。平家物語などに見え,世阿弥作の能(鬼能)にも脚色,
転じて正体不明の人物や大度にいう,

とある。『大言海』には,

「和(ナエ)にて,なびく声に云ふ。即ち,恨むる如く,うらぶる如く,しなふる如くなれば云ふと」

と注記して,

「又,ぬえどり。ぬえこどり。梟の類。世に怪鳥として,其鳴くを凶兆とす。吉野山等の深山に棲む。大きさ鳩の如く,黄赤にして,黒班あり。嘴の上は黒く,下は黄にして,脚は黄赤なり。昼伏し,夜出でて,木の梢に鳴く,聊,小児の叫ぶが如し。鬼つぐみ。関東に,虎つぐみ。」

と,あわせて,

「近衛天皇の時,源頼政が射て獲たりと云ふ想像上の怪獣の名。猴首,虎身,蛇尾にて,声は鵺の如し(『平家物語』)と云へるより移りて,世に誤りて,その名とす。」

とあり,あくまで,鳴き声が「鵺」,つまりトラツグミだったのを,誤って,怪獣の名にしたのだ,というわけである。

漢字「鵺」「鵼」は,あくまで,鳥の名を指し,それに,怪獣を当てたのは,我が国のみである。

「ひさかたの天の河原にぬえどりの うら嘆げましつ為方(すべ)なきまでに」

という万葉の歌にあるように,

「鵼鳥の」といえば「裏歎」の枕詞,

だとされる。それほどに,ぬえの鳴声は,哀しげなのだろう。しかし,多く,『徒然草』に,

「喚子鳥なく時,招魂の法をばおこなふ次第あり。これは鵺なり。」

とあるように,霊魂を呼び戻す,不吉の鳥とされたらしい。だから,

「空中で鵼鳥が鳴いたので,幣を奉る」

ということをする。そういう前提で,『太平記』には,隠岐次郎左衛門が射落としたのは,

「頭は人の如くにして,身は蛇の形也,嘴の前曲て歯,鋸の如く生違ふ。両の足に長き距(けづめ)有て,利(と)きこと剱の如し。羽崎を延べて之を見れば,長さ一丈六尺也」

というものであった。ところが,前出のように,源三位頼政が射落としたのは,

頭は猿,軀は狸,尾は蛇,手足は虎」

と『平家物語』に記す。『源平盛衰記』は,同じ源三位頼政の話で,

「頭は猿,背は虎,尾は狐,足は狸」

と変る。まさに,「ぬえ」的ではある。

かの鳥山石燕の描く「ぬえ」は,

ぬえ.jpg

鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より「鵼」


で,石燕は,

「鵼は深山にすめる化鳥なり。源三位頼政、頭は猿、足手は虎、尾はくちなはのごとき異物を射おとせしに、なく声の鵼に似たればとて、ぬえと名づけしならん。」

と書く。歌川国芳が描くとこうなる。

歌川・ぬえ.jpg

「京都 鵺 大尾」(「木曽街道六十九次」の内、歌川国芳画


しかし,阿部氏は,高松塚古墳に描かれた,東に青竜,西に白虎,北に玄武,南に朱雀,の四神の,

「零落して,妖怪になったものの総体」

ではないか,と言う。

参考文献;
http://www.youkaiwiki.com/entry/2013/07/03/173020
阿部正路『日本の妖怪たち』(東京書籍)
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)



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posted by Toshi at 05:42| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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