本分



本分は,辞書(『広辞苑』)によると,

その人の守るべき本来の分限,
ひとやものの本来備わっているもの,本来の性質,

とある。その二つをつなげると,神田橋條治氏の言う,

自己実現とは遺伝子の開花である,

という言葉が意味を持つ。その言葉は,

「鵜は鵜のように,烏は烏のように」

と続く。鳶は鳶であり,鷹は鷹である,鳶は鷹にはならない。だから,前にも書いたが,

「自分が鵜なのか,鷹なのか」を見極めること

こそが,修行となる。その「分」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/424082581.html

で書いたが,意味は,

各人にわけ与えられたもの。性質・身分・責任など,

の意味で,分限・分際・応分・過分・士分・自分・性分・職分・随分・天分・本分・身分・名分等々という使われ方をする。そこでも書いたが,「分」の字は,

「八印(左右にわける)+刀」

で,二つに切り分ける意を示す。とすると,分け与えられた,

天分
であり,
性分
であり,
職分
であり,
名分,

を尽くす,ということになる。名分とは,孔子の言う,

名正しからざれば,則言順(したが)わず,言言順(したが)わざれば,則事成らず,

を思い出す。いろんな解釈があるが,僕は,

持っていることばによって見える世界が違う,

というヴィトゲンシュタインの言葉を思い出す。つまり,その言葉はその人の思いを示す。

先の文に続いて,孔子は,

君子これに名づくれば必ず言うべきなり,これを言えば必ず行うべきなり,

という。

綸言汗の如し,

に通ずる。まさに,これこそ,

本分

である。語源は,

「本(もともと)+分(つくすべき義務)」

で,尽くすべきつとめ,であるとして,しかし,本分は,

天分,

だとして,天命と重なるものなのか,天については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163401.html

に書いた。

天命を具体的に自分の課題としようとするとき,

おのが分,

に突き当たる。鵜は鷹にはなれない。それを,つとめで表現すれば,

本務

になる。

その中身が,

職務,
任務,
責務,
義務,

と,なるのだろう。

職務は,担当する任務。任務を役割分担した具体的な分担業務。
任務は,自分の責任として課せられたつとめ,であるから,本分の具体的な課業になる。責務について,それをおのれの任務として自覚し直せば,責務になる。自分が全うすべき(とは当事者としてすべての責任を負うべき)つとめ,という自覚ということになる。

義務は,辞書(『広辞苑』)的には,「自分の立場に応じてしなければならないこと」とあるが,『論語』に,知とは,

民の義を務め,鬼神を敬して遠ざく,

とある。知とは,実践である,という。


参考文献;
神田橋條治『技を育む』(中山書店)
貝塚茂樹訳注『論語』(中公文庫)



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