2016年03月01日

まじめ


「まじめ」は,

真面目,

と当てるが,辞書(『広辞苑』)によると,

まじめ,

というのは,「まじめ」と書いて,まったく別の意味もあるらしいのである。即ち,こうある。

「(鎮静の意,漁村語)黎明と朝,夕方と黄昏との境目をそれぞれ,朝まじめ,夕まじめ,という。この時刻は深海の魚類も水面近くに浮くので,好漁の潮時。まずめ,まずみ,まさめ。」

一般には,

まずめ,

というらしく,辞書には,

「日の出・日の入りの前後。釣りにもっともよい時間」

とある。「まずめ釣り」という言い回しもあるらしい。「まさめ」というと,木の,

柾目(正目),

で,木の「幹の中心を通って縦断した面」とか,

正眼(正目),

で,「まのあたり」とか「正しい見方」とか,となる。これを「せいがん」と訓むと,

「験の切っ先を相手の目に向ける(刀の)構え方」

になる。閑話休題。

「まじめ」を,

真面目,

と表記する場合のことについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/403104120.html

で触れたことがある。すこし重なるかもしれないが,語源的には,

マジ(擬態・まじまじ)+目

で,真剣な顔つき,誠実な態度,誠意があるなどの意味になる。

まじまじ

は,

「マジマジ(目の擬態語)」

で,「目を据えて一心に見る」

という意味になる。物を凝視しているときは,

真剣なまなざし,

になるには違いない。『語源由来辞典』,

http://gogen-allguide.com/ma/majime.html

には,

「まじめの『まじ』は、『まじろぐ』の『まじ』と同じで、しきりに瞬きするさまのこと。 じっと 見つめるさまを表す『まじまじ」も、元は目をしばたかせるさまを表していた。 まじめの『め』は、『目』の意味である。 まじめは、緊張して目をしばたかせるだけの真剣な顔つきから、本気であることや、誠実なさまを表すようになった。また、近世には真剣な顔つきになることだけでなく,目をしばたたかせる姿から、おびえた堅い表情や白けた顔なども『まじめ』といった。なお、漢字で『真面目』と表記するのは、意味から当てられた当て字である。」

と。しかし,当て字にしても意味があるはずである。

実は,「真面目」は,

しんめんもく,

と訓ませると,

本体そのままのありさま,本来の姿,転じて真価,
まじめ,実直,

という意味になる。『大言海』は,

真実(まこと)の面目,ありてい,実際の所のよく表れたること,真相,
戯れならぬこと,まじめなること,真摯,

とある。では,「面目」は,というと(「めんぼく」「めんもく」と訓む),

かおかたち,
おもただしき人に面向け,目を合すこと,人の世に立てる誉れを保つこと,
面おこし,名誉,

とある。『古語辞典』を見ると,まず,

人にあわす顔,体面,

とあるので,当初は,ただの「顔つき」から,「世間に対して顔を向けられる面」つまりは,名誉や誇り,へとメタフィジカルに広がったことが想像される。それに,「真」がつくと,

まことの,

という意味だけではなく,表面ではなく,その正味が,という意味で,

真骨頂,

というニュアンスになる。

一方,「まじまじ」は,『古語辞典』には,

目をしばたたくさま,またそういう状態で目が冴えて眠れないさま
平気なさま,図々しいさま,しゃあしゃあ,
もじもじするさま,,

という意味が載る。江戸時代をみると,

阿鼻焦熱の苦しみをまじまじと見てゐられうか

という使い方で,

ただなすところなく見ているさま,じっとみつめるさま,

の意と,

さすがの喜多八,しょげ返りて顔を赤らめ,まじまじしてゐるを

という使い方で,

もじもじ

の意,とある。そこからは,

真面目

の意味は見当たらない。むしろ,

ただ手を束ねてこわばっている,

とか,

照れて気後れ(もじもじ)している,

の意の方が強い。

真面目

の字を当てたのがいつの頃かは分からないが,

しんめんもく

と読む「真面目」の字を当てた瞬間,他の意味が,「地」に下がり,誠実さが「図」として浮き上がった,ということなのかもしれない。

漢字「真面目」のもつインパクトが,「まじまじ」の擬態のもつ曖昧な意味を,変えてしまった,ということのようである。ちなみに,

「面目」

は,中国語の「面目」,

名誉,

を示す。因みに,「面」の字は,

「首(あたま)+外側をかこむ線」

で,頭の外側を線で囲んだその平面をあらわす

という。また,

「面は,顔前なり。頁(人間の貌を大きく描き,その下に小さく両足を添えた形を描いたもの。あたまを示す)从(したが)ひ人面の形に象る」

ともある。「目」は,「め」を描いた象形文字。

やはり,顔と眼は,単なる,「かお」や「め」だけではないのである。

なお,「マジ」は,別に

http://zokugo-dict.com/31ma/maji.htm

で,

「マジとは真面目の略で、『真面目』『本気』『真剣』『冗談ではない』といった意味で使われる。マジは江戸時代から芸人の楽屋言葉として使われた言葉だが、1980年代に入り、若者を中心に広く普及。『マジで』『マジに』といった副詞として、また「マジ○○(下記関連語参照)」といった形容詞的にも使われる。
また、『本気』と書いてマジと読ませるマンガなどもある。」

と,あるように,別の分派もあるようだが,昨今は,「マジ」は,また少しニュアンスが変わってきているようだ。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)


ホームページ;
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今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm


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posted by Toshi at 05:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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