わや
「わや」は,
「すっかりわやや!」
というような使い方をする。辞書(『広辞苑』)には,
関西方言,「わやく」から,
とあり,
道理に合わないこと,乱暴なこと,無茶,
もろいこと,
だめなこと,
という意味が載る。『大辞林』には,その他に,
「すっかりこわれること。台無しになること。また,そのさま。」
とある。僕の感じでは,
台無し,
という意味が一番近い。因みに,「わやく」は,辞書(『広辞苑』)には,
「ワウワク(枉惑)の転」
とあり,
無茶なこと,
聞き分けのないこと,
とある。これだと,「わやく人」が,
無法者,腕白もの,
を意味することにつながらない。『大辞林』には,
いたずらをすること。悪ふざけをすること。また,そのさま。
筋が通らない・こと(さま)。無理。無茶。
聞き分けがない・こと(さま)。腕白。
と載る。このほうが的確な気がする。『大言海』は,「わや」をストレートに,
枉惑(わやく)の略か,
と書き,
ダメ,いけぬこと,
腕白,ヤンチャ,
と意味を載せる。どうやら,「枉惑(わやく)」が元の意味なのだろう。『古語辞典』には,「わやく」で,
枉惑
と
誑惑
の字を当てている。
無茶苦茶,
無理非道,
の意味を載せる。『語源辞典』をみると,「わや」は,
「漢語の『誑,惑(無法・無道・不道理)』です。オウワク(枉惑)がワヤクになり,さらに,クが脱落した語です。無理無法を言います。関西では,だめ,めちゃくちゃの意です。」
とある。因みに,「枉」の字は,
まっすぐな線や面を曲線に押し曲げる,
という意味で,
動詞を押し曲げる,
という意味に転じる。「誑」の字は,
でたらめなことをいってあざむく,
という意味になる。「惑」の字は,
「或は,『□印の上下に一線を引いたかたち(狭い枠で囲んだ区域)+戈(とび口型の刃に縦に柄をつけたこだいのほこを描いた象形文字。鉤型にえぐれて,敵をひっかけるのに用いる)』の会意文字で,一定の区域を武器で守ることを示す。惑は『心+音符或』で,心が狭い枠に囲まれること」
で,
一定の対象や先入観にとらわれる,
心が狭い枠にとらわれ,自由な判断ができないでいる,
という意味。辞書(『広辞苑』)では,「おうわく」は,
横惑,
の字も当てる。「道に外れたことをして,人を惑わすこと」という意味になる。
『日本語俗語辞典』には,
「わやとは道理に合わないこと、乱暴なこと、よわい(もろい)こと、ダメ・台無しなこと、無茶苦茶なこと、またそういった様を表す言葉である。わやは北海道、名古屋、関西などさまざまなエリアで方言として使われてきた言葉である。各エリアとも似通った意味で使われているが、関西芸人がTVなどで頻繁に使かったことで広く普及したため、わや=関西弁という認識が高い。」
とある。確かに,我が家では,「わや」を使ったが,両親とも,名古屋人である。で,調べると,大阪は勿論だが,
北海道方言,
津軽方言,
名古屋方言,
四日市市四郷地区方言,
京ことば,
但馬方言,
下関弁,
等々でも,使われているようで,「わやく」にいたっては,全国的のようだから,
関西弁,
から伝播したというのは,いかがかと思うが,
https://words.nanapi.com/ja/10171
に,
「『わや』と言っても、これまでは関東ではあまり通じませんでした。」
とあるから,関東で通じるようになったのには,関西の芸人が使ったことが大きいようではある。やはり,関東,特に東京で通じないと,全国区にはなれないらしい。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
この記事へのコメント