2016年03月23日
わや
「わや」は,
「すっかりわやや!」
というような使い方をする。辞書(『広辞苑』)には,
関西方言,「わやく」から,
とあり,
道理に合わないこと,乱暴なこと,無茶,
もろいこと,
だめなこと,
という意味が載る。『大辞林』には,その他に,
「すっかりこわれること。台無しになること。また,そのさま。」
とある。僕の感じでは,
台無し,
という意味が一番近い。因みに,「わやく」は,辞書(『広辞苑』)には,
「ワウワク(枉惑)の転」
とあり,
無茶なこと,
聞き分けのないこと,
とある。これだと,「わやく人」が,
無法者,腕白もの,
を意味することにつながらない。『大辞林』には,
いたずらをすること。悪ふざけをすること。また,そのさま。
筋が通らない・こと(さま)。無理。無茶。
聞き分けがない・こと(さま)。腕白。
と載る。このほうが的確な気がする。『大言海』は,「わや」をストレートに,
枉惑(わやく)の略か,
と書き,
ダメ,いけぬこと,
腕白,ヤンチャ,
と意味を載せる。どうやら,「枉惑(わやく)」が元の意味なのだろう。『古語辞典』には,「わやく」で,
枉惑
と
誑惑
の字を当てている。
無茶苦茶,
無理非道,
の意味を載せる。『語源辞典』をみると,「わや」は,
「漢語の『誑,惑(無法・無道・不道理)』です。オウワク(枉惑)がワヤクになり,さらに,クが脱落した語です。無理無法を言います。関西では,だめ,めちゃくちゃの意です。」
とある。因みに,「枉」の字は,
まっすぐな線や面を曲線に押し曲げる,
という意味で,
動詞を押し曲げる,
という意味に転じる。「誑」の字は,
でたらめなことをいってあざむく,
という意味になる。「惑」の字は,
「或は,『□印の上下に一線を引いたかたち(狭い枠で囲んだ区域)+戈(とび口型の刃に縦に柄をつけたこだいのほこを描いた象形文字。鉤型にえぐれて,敵をひっかけるのに用いる)』の会意文字で,一定の区域を武器で守ることを示す。惑は『心+音符或』で,心が狭い枠に囲まれること」
で,
一定の対象や先入観にとらわれる,
心が狭い枠にとらわれ,自由な判断ができないでいる,
という意味。辞書(『広辞苑』)では,「おうわく」は,
横惑,
の字も当てる。「道に外れたことをして,人を惑わすこと」という意味になる。
『日本語俗語辞典』には,
「わやとは道理に合わないこと、乱暴なこと、よわい(もろい)こと、ダメ・台無しなこと、無茶苦茶なこと、またそういった様を表す言葉である。わやは北海道、名古屋、関西などさまざまなエリアで方言として使われてきた言葉である。各エリアとも似通った意味で使われているが、関西芸人がTVなどで頻繁に使かったことで広く普及したため、わや=関西弁という認識が高い。」
とある。確かに,我が家では,「わや」を使ったが,両親とも,名古屋人である。で,調べると,大阪は勿論だが,
北海道方言,
津軽方言,
名古屋方言,
四日市市四郷地区方言,
京ことば,
但馬方言,
下関弁,
等々でも,使われているようで,「わやく」にいたっては,全国的のようだから,
関西弁,
から伝播したというのは,いかがかと思うが,
https://words.nanapi.com/ja/10171
に,
「『わや』と言っても、これまでは関東ではあまり通じませんでした。」
とあるから,関東で通じるようになったのには,関西の芸人が使ったことが大きいようではある。やはり,関東,特に東京で通じないと,全国区にはなれないらしい。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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