2016年04月06日

いのり


「いのり」は,

祈り
あるいは
祷り

と当てる。意味は,辞書(『デジタル大辞泉』)には,

「動詞『の(宣)る』に接頭語『い(斎)」が付いてできた語』

とあり,

神や仏に請い願う。神仏に祈願する,
心から望む。願う,

という意味が載る。『語源辞典』にも,

「い(斎・いみ・神聖)+のる(宣)」

で,

「神聖な気持ちを口に出して願う意」

とある。『古語辞典』には,少し違う,

「イはイミ(斎・忌)・イクシ(斎串)などのイとおなじく,神聖なものの意。ノリはノリ(法)・ノリ(告)などと同根か。妄りに口に出すべきでない言葉を口に出す意」

とある。「みだりに口に出すべきでない言葉」というところに意味があり,転じて,

呪う,呪詛する,

になる,とある。因みに,呪うについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/403152541.html

で書いたように,

語源的には,

「祈る(ノル)」+「ふ」

で,基本は,「祈る」の延長戦上にあるものらしい。

祈り続ける,

には違いないが,

相手に災いがあるように祈りつづける,

ということらしい。因みに,『古語辞典』には,

「トナヘは呪文や経文を口にする意」
「ネガヒは,神を慰め,その心を安らかにして,自分の望みをかなえてくれるような取り計らいを期待する意」

とある。「呪」の字は,

「口+兄」

で,もともとは,「祈」と同じで,

神前で祈りの文句を称えること

なのだが,後,「祈」は,

幸いを祈る場合,

「呪」は,

不幸を祈る場合,

と分用されるようになった,とある。ついでに,「祈」の字は,

「斤は,物に斧の刃を近づけたさまを描いた象形文字で,すれすれに近づく意を含む。近の原字。祈は『示(祭壇)+音符斤』で,目指すところに近づこうとして神にいのること」

「祷(禱)」の字は,

「壽の原字は,「長い線+口二つ』の会意文字で,長々と告げること。音は,トウ。祷の本字は,それを音符として,示(祭壇)を加えた文字で,長々と神に訴えていのること」

とある。『日月神示』には,

「祈りとは,意が乗ること」

と言う。「霊の霊の霊(神)」と体(人間)と合流して一つの生命となること」と説く。

言霊とは,ただ言葉が霊力を持つ意味ではない。

http://ppnetwork.seesaa.net/article/403055593.html

で書いたように,

「人間の口から発せられたことばが,その独自の威力を発揮し,現実に対して何らかの影響を及ぼす,といった単純な機構ではない。神がその霊力を発揮することによって,『言霊の幸はふ国』を実現し『言霊の佐くる国』を実現するのだというのが,(①と②の)『言霊』に反映する考え方なのである。」

「言霊」を読みこんだ確かな用例は,『古事記』『日本書紀』『風土記』を含めて,『万葉集』の以下の三首以外にないそうで,①と②というのは,

①神代より 言ひ伝て来らく そらみつ倭国は 皇神の 厳しき国 言霊の幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり…(山上憶良)
②志貴島の 倭国は 言霊の 佐くる国ぞ ま福くありこそ(柿本人麻呂)
③言霊の 八十の衢に 夕占問ふ 占正に告る 妹相寄らむと(柿本人麻呂)

を指す。そこから,

「人間の発することば自体に威力があって事が実現するのではなく,人間の発することばを聞き入れた神が事を実現してくれる…,」

というわけであり,ことばに霊力がやどると信じたのは,

「人々の間で日常的に何気なく交わされることばではな(く)…儀礼の場で事の成就を願う非日常的な状況において,特別な意識をともなって口から発せられることばに霊力がこもる…」

のである。その意味で,真の祈りが,言霊なのである。

『論語』(述而篇)に,

「子疾む。子路祷らんことを請う。子曰く、諸(こ)れ有りや。子路対(こた)えて曰わく、有り、誄(るい)に曰わく、爾を上下の神祇に祷ると。子曰く、丘の祷ること久し。」

とある。孔丘は,ずっと祈っていた,という。ことに臨んで,あわてて祈る子路への皮肉である。

あえて,言葉に力があるとすると,その言葉の向こうに見える物を信じているときではないか。そのとき,人は知らず,おのれにとって,言葉は言霊となる。さらに,

祈りとは,

「口と心と行と三つ揃わねば」

とある。でなければ力を持ちえない。

参考文献;
中矢伸一『日月神示』(徳間書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
貝塚茂樹訳注『論語』(中公文庫)
佐佐木隆『言霊とは何か』(中公新書)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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posted by Toshi at 04:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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