2016年04月09日
ありてい
「ありてい」は,
有(り)体
とあてる。辞書(『広辞苑』)には,
ありのまま,ありよう,
ありきたり,通り一遍,
と意味が載る。語源は,
「有り+体(テイ 様子・態度)」
で,ありのまま,あるとおりの意味,とある。『大言海』の注が面白い。
「有體(ありすがた)の地の湯桶読み(有様,ありよう)」
と。湯桶読みとは,
「湯桶読み(ゆとうよみ)は、日本語における熟語の変則的な読み方の一つ。漢字2字の熟語の上の字を訓として、下の字を音として読む「湯桶」(ゆトウ)のような熟語の読みの総称である。」
とあり,
朝晩(あさバン),雨具(あまグ),豚肉(ぶたニク),鳥肉(とりニク)
等々。因みに,重箱読みは,
「上の字が音読みで下の字が訓読みのもの」
を指し,
音読み(オンよみ),額縁(ガクぶち),客間(キャクま),経木(キョウぎ),金星(キンぼし)
等々。
有体は,時に,
有態
とも当てる。中国語では,
自然的状態,
の意味であるらしい。そこで思うのは,本来は,
有態
と,表記したのかもしれない,と。
「ありよう」と意味が重なるらしいが,意味は,
ありのまま,
の他に,
ありさま,
様子,
の意味があり,
有様,
を
ありよう,
と読むのと,
ありさま,
と読むのとでは,微妙に変わる。しかし,語源的には,
「有り+サマ(状態・様子)」
で,それをただ,音読みしただけなのだが,漢字の意味とは,別の和語のニュアンスが出てくる気がする。「アリサマ」は,「あるものの状態」を言う状態表現なのに,そこに「身分,境遇」をにじませる価値表現が加味されてくる。
漢字「様(樣)」の字は,
「樣の右側の字は,『永(水が長く流れる)+音符羊』の形声文字で,漾(ヨウ ただよう)の原字。樣はそれを音符として添えた字で,もと橡(ショウ)と同じく,くぬぎの木のこと。のち,もっぱら象(すがた)の意に転用された。」
と,ただ,今ある姿を言い表しているに過ぎないのに,たとえば,
生き様,
を,「いきよう」と読むよりは,「いきざま」と読んだ方が,価値観を滲ませている感じが伝わる。
同様に,「ありてい」も,
ありのまま,
を示しているし,漢字「体(體,軆,躰)」の字は,
「本字の體は,『豊(レイ きちんと並べるの意)+骨』。体は,『人+音符本(ホン)』で,もと笨(ホン 太い)と同じくホンと読むが,中国でも古くから體の俗字として用いられた。尸(シ 人の横に寝た姿)と同系で,各部分が連なってまとまりをなした人体を意味する。のち広く,からだや姿の意。」
だから,自分のありのまま,あるいは,ぶっちゃけ,といった意味のはずである。しかし,漢字「態」の字は,
「能は,耐(タイ たえる)と同じく,そうできるだけの力をそなえていること。態は『心+音符能』で,こうできるぞという心構え。転じて広く,心ばえ,身構えのこと。」
と,「態」の字を使うとき,そこには,ただありのまま,というより,意志としての,
態度,
が,より示されており,価値表現に変っている気がする。そのせいか,
ありていを言えば,
には,率直さを強調しようとする意図が見えてくる。それが真実かどうかはまた別の話だが。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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