2016年04月15日

観念


「観念する」は,

諦める,
ギブアップ,

の意味だが,観念という言葉自体は,

仏教由来,

のはずである。ギリシア語のイデアideaに由来する英語のアイディアideaの訳語として使われているが,そこからは,

諦める,

という意味は出ない。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ka/kannen.html

には,

「観念は、仏教用語で『観想の念仏』の略。 瞑想法の一で、精神を集中させ、仏や浄土の 姿を思念することをいい、そこから、物事に対してもつ考えや意識の意味が生じた。 あきらめるといった意味は、真理を会得し悟りを得るという『覚悟』の意味から転じたものである。観念の『観』は、知恵をもって観察し、悟りを得ることを意味するサンスクリット語『smrti』の漢訳である。」

とある。辞書(『広辞苑』)にも,

諦める,覚悟,

が意味として載る。

http://www.kinokagaku.com/cgi-bin/kinokagaku/siteup.cgi?&category=4&page=3&view=&detail=on&no=31

には,

「『観念』のサンスクリット原語は、スムリティ(smrti,またはアヌスムリティ anusmrti)です。これは、動詞の語根スムリから派生した女性名詞なのです。動詞のスムリには、『記憶する』『想い浮かべる』などの意味があります。
スムリティは、 単に『念』と漢訳されることが多いのですが、『記憶』の意味ではなく、『想い浮か べる』ほうの意味であることをはっきりさせるために、『観』という字が付加される ようになったのではないかと想像されます。
したがって、『観念』は、『心に想い浮 かべること』の意味となります。」

そして,

「仏教の『観念』は、仏や菩薩の姿、名称、浄土の相、あるいは真理などを対象として観想し、思念することを意味しています。ここから、『深く心におもいをこらす』という意味が生ずる。深くおもいをこらして思念すると、ある事実に対してその結果をはっきりと知ることができます。結果が把握されることによってあきらめもつきます。こうして『観念』に『あきらめ』の意味が生じて、一般的な用語となったのだと考えられます。」

と,「あきらめ」へとつながる謂れを書いてある。ただ,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163539.html

で書いたが,「あきらめる」は,

諦める,

の他に,

明らめる,

とも書き,これは,「明らむ」の,「明るくなる」という意味以外の,

物事を見きわめる,
物事が明らかになる,
確かめられる,

という意味からきているという。むしろ,「観念する」を,

諦める,

の意味へとシフトさせたのは,「あきらめる」が,

「明ら+む(先を明らかに見て,否定的に悟る)の下一段化」

で,「詳らかに見究む。理由を究め知る」(『大言海』)結果,断念する,という意味の,その前段の思考プロセスをカットして,

断念する,

だけが,図となって,浮きあがった。その結果,観念する,が

「仏陀の姿や真理をこころを集中して考えること」((『広辞苑』))

ではなく,諦めの方へとシフトさせたことになる。しかし,イデアの訳は,どちらを意識して当てはめたのだろうか。

因みに,観念の「観(觀)」の字は,

「觀の辞の左側の字(音カン)は口をそろえて鳴く水鳥を示し,そろえる意を含む。觀はそれを音符として,見を加えた字で,物をそろえてみわたすこと」

とある。では,同じ「みる」といってもどんな違いがあるのかを比較してみると,わかる。

見は,ちょっと目に触れるなり,まみゆと訓むときは対面の義,
視は,気を付けてみるなり,視察と用ゆ,
観は,視より一層念を入れてみるなり。また脇から見物するなり。みものとも訓む。壮観・大観の如し。
覧は,一通り目を通す義。通覧,周覧などと用ゆ,
看は,手をかざしてみる,また久しく守り見る義,

等々とある。「観」は,もっとも念入りに,更に並べ比較して見る,という意がある。その上の,断念だからこそ,覚悟に通じる。因みに,「念」の字は,

「今は『ふたで囲んで抑えたことを示すかたち+一印(取り押さえたものを示す)』で,囲み綴じて押さえるの意をあらわす。のがさずに捕え押さえている時間,目前に取り押さえた事態などの含意があり。中に入れて含むことを表す会意文字。念は『心+音符今』で,心中深く含んで考えること。また吟(口を動かさず含み声でうなる)とも近く,経をよむように,口を大きく開かず,うなるように含み声で読むこと」

とある。余程深く考え至るのでない限り,観念とは言えぬ。とすれば,生半可で,

観念しました,

等々と言っている場合ではない。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

posted by Toshi at 05:09| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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