2016年04月16日

ザイアンスの法則


宮本聡介・太田信夫編著『単純接触効果研究の最前線』を読む。

単純接触効果.jpg


いまから百年以上前からこうした現象は報告されていたが,1968年のザイアンスの論文(Attitudinal Effects of Mere Exposure)に端を発した,

単純接触効果,

についての,最新研究事情である。単純接触効果とは,

「単に繰り返し見聞きするだけで知覚者にその対象への選好を形成させることができる」

つまり,「対象への単純な繰り返し接触がその対象に対する好意度を高める現象」のことである。従って,

ザイアンスの法則,

とも言われる。よくその例として教科書に載るのはこんな例である(僕も,この例から知った)。

「ある朝,仕事に向かう途中で一人の男とすれ違た主人公は,面識がないはずのその男に対して不思議な懐かしさ,親近感を抱いていることに気づく。その理由を考えながら歩いていると,毎朝通る交番の前でびっくりして立ち止まる。指名手配中の犯人の写真のなかに先ほどの男がいるではないか。実は主人公は毎日あの男の顔を交番の前で見ていたのである。」

ザイアンス以前にも,オールポートの,

「相手に対する知識の欠如が偏見形成に関わっており,偏見の解消には接触が必要」

とする,接触仮説や,フェスティンガーの,

「大学宿舎における,親密化過程に…,物理的に近接した相手(自分の部屋の隣室の学生)を友人として選択する」

といった,物理的近接効果等々があったし,これらの研究も,

「人との繰り返し接触が,相手への好意度を高める」

という意味で似ているが,決定的に違うのは,

「単純接触効果は単純(mere)と称されるように,強化を伴わない(unreinforced)単なる接触によって,当該刺激に対して好意的反応を示すことである。」

つまり,接触仮説や物理的近接性効果に見られるバーバル(挨拶やその他の会話)・ノンバーバル(表情,アイコンタクトなど)のやりとりがなく,単純に接触するだけで,好意度が上がる,という点である。

しかも,1980年のクンスト・ウィルソンとザイアンスが出した閾下単純接触効果研究(Subliminal Mere Expososure Effect)では,「閾下」でそれが起こると報告し,研究のパラダイムを変えたと言われている。そこで,

「認知と感情が本質的に独立(認知‐感情独立説)であり,かつ感情は認知に先行する(感情先行説)とする挑戦的な仮説を提唱した。」

つまり,

「主観的には見えておらず,当然思い出せもしないにもかかわらず,単純接触効果は得られる」

のである。さらに,ザイアンスらは,その後,

「閾下単純接触効果に替えて閾下感情プライミング効果」

をとなえた。プライミング効果とは,

「先行の学習もしくは記憶課題が、後続の別の学習もしくは記憶課題の成績に、無意識的に影響を与えること」

を言うらしく,

「笑顔や怒り顔といった感情的な刺激をプライムとして閾下提示することでその直後に閾上提示される中性的な刺激への評価がプライムの感情評価の方向へ引きずられる」

ことになる,と言う。

このザイアンス仮説に伴い,「単純接触効果」は,実験社会心理学の心理現象のレベルを超えて,認知心理学から,学習心理学,広告効果をめぐるマーケティングまで,各界を巻き込んでいくことになる。

本書は,社会心理学の現時点までの,

「なぜ対象への単純な繰り返し接触が,その対象への好意度を高めるか」

の単純接触効果のメカニズムを説明するモデル,たとえば,

対立過程モデル,
覚醒モデル,
二要因モデル,
感情先行説,
非特異的活性化モデル,
知覚的流暢性誤帰属説,

等々を取り上げているが,なかでも,本書は,知覚的流暢性誤帰属説に,ページを割いている。それは,

「ある対象への反復接触によって,その対象を知覚するときにより流暢に処理がなされるようになる。この流暢性の起源は反復接触にあるのだが,しかしそれが誤って対象の印象や対象への好意,好みへと帰属される。すると,その流暢性が帰属された分,その対象によりよい印象や好意を感じるようになる。」

所謂サブリミナル効果とつながる効果ということになる。そこで,当然,

意思決定,

学習効果,

ともリンクしていくし,

広告効果,
言語学習,
衣服の流行,
音楽,
香り,
味覚,

等々の単純接触効果についても,本書では検討されている。まだまだ研究途上ではあるが,

「閾下単純接触効果の発見」

に端を発する意識・無意識にかかわる好意度の単純接触効果問題は,まだまだ,幅広い分野からの参入によって,ますます進化し続けていくようである。

参考文献;
宮本聡介・太田信夫編著『単純接触効果研究の最前線』(北大路書房)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

posted by Toshi at 05:01| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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