2016年04月24日

しんき


「しんき」は,

心気,
辛気,
心機,

と,当てて,微妙に違う。

「辛気」,「心気」は,

辛気臭い,
とか,
心気臭い,

と当てて,振り替えがききそうだ(『古語辞典』には,心気を辛気とも書くとある)が,「心機」は,

心機一転,

と使い,意味が少し違う。辞書(『広辞苑』)をみると,「心気」・「辛気」は,一緒で,

心,気持ち,気分,
思うようにならずくさくさする,じれったくてイライラする,

という意味が載り,「心機」は,

心の働き,心の弾み,気持ち,

とある。心機も心気も,

気持ち,

ではあるが,「心機」・「心気」・「辛気」,いずれも中国語源で,使い分けがあるようだ。

語源的には,「心機」は,

「心+機(はたらき)」

で,「辛気」は,

「辛(つらい)+気(こころ)」

だが,「心気」の方は,「心機」重なりそうたが,同じ使い方をしないようだ。

漢和辞典を見ると,「心気」は,心とか気分で,

仲夏之月 節嗜欲定心気

と使い,「心機」は,心の動く弾み,心の働きで,

行無轍跡理絶心機

と使う。福沢諭吉の文に,

夫婦親子の間と雖も互に其心機の変を測る可らず,

とあるらしいが,これだと,「心気」でも通じそうだ。

心気が心の状態を示すのと,心機が心が意を決するという前のめりの状態を示すとの差だろうか。「心気」は,「気」だが,「心機」は「意」というような。『大言海』には,「心機」を,

気の動き,

とあるのは,そんなニュアンスだろうか。だから,

心機一転,

は,

心「気」一転,

では駄目なのだろう。『大言海』の「心気・辛気」の項に,

気分,

とあるのが正確だろう。さらに,「懊悩」とあって,

「性急(しんき)にて,明人の俗語なりと,陳元贇は云へりと」

とある。心気症とか心気病みとか心気痩せ,いうのは,そこから来ているのだろう。とすると,本来の「心気」は,単なる,気持ち,気分を言うより,

懊悩,

に近く,だからこそ,「辛気」と当てたのではないか,という気がする。因みに,「機」の字は,

「幾は,『幺二つ(細い糸,わずか)+戈(ほこ)+人』の会意文字で,人の首に武器を近づけて,もうわずかで届きそうなさま,わずかである,細かいという意を含む。機は『木+音符幾』で,木製の仕掛けの細かい部品,わずかな接触で噛み合う装置のこと」

とある。「気(氣)」の字は,

「气は,息が屈曲しながら出てくるさま。氣は,『米+音符气』で,米をふかすとき出る蒸気のこと」

とある。だから,「気」はこの場合,もやもやとした気分を指し,「機」は,心の働き出す動きを指す。そう考えると,「心気」と「心機」の区別は明瞭な気がする。「辛」の字は,

「鋭い刃物を描いたもので,刃物でびりっと刺すことを示す。転じて刺すような痛い感じ」

とある。「心気」に「心」の代わりに「辛」を当てたとき,その辛さを的確に言い表している。

つくづく,漢字の分化のもつ微妙さに畏れ入る。それは,それだけ細分化された世界を見ているということだ。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


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