2016年04月26日
領袖
袖について,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/434906721.html
で触れた折,「袖」に関わる言葉として,中国由来の「領袖」があることを指摘されたので,ちょっと調べてみることにした。
意味は,辞書(『広辞苑』)には,
(えり(領)と袖とは目に立つ部分であることから)人の頭に立つ人,人を率いてその長となる人,
ということになる。語源は,この通りで,
領(えり)+袖(そで)
で,着物の目立つ部分,衣服の重要な部分,ということから来ているらしい。出典は,
『晋書』魏舒伝,
にあるらしい。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/ri/ryousyuu.html
は,
「領袖の『領』は衣の『えり(襟)』、『袖』は『そで』のことで、本来『領袖』は『えり』と『そで』を意味する漢語である。出典は中国晋代の歴史を記した紀伝体の書『晋書 魏舒伝』で、衣服の襟と袖は特に目立つ部分であることから、集団を率いる重要なポストを『領袖』というようになった。」
とある。
『故事ことわざ辞典』
http://kotowaza-allguide.com/ri/ryousyuu.html
には,
「『晋書・魏舒伝』には「魏舒は堂堂として人の領袖なり(魏舒は風格が堂々としており、人の上に立つ人物である)」とある。」
と,その謂れが載る。どうやら,晋の文帝が魏舒の才能を評価して言った言葉から来ているらしい。領袖の「領」の字は,
「令は,すっきりと清らかなお告げ,領は『頁(あたま,首)+音符令』で,すっきりと際立った首筋,襟元をあらわす。清らかな意を含む。」
とある。基本意は,首筋,襟首だが,そこから転じて,大筋,大切なところ,といった意味がある。「領す」とすると,わかったという表示,収める,襟首を以て衣を畳むことから転じて,要点を押さえて処理する,統べおさめる,意となる。「袖」は,
「『衣+音符由(=抽,抜き出す)』。そこから腕が抜けて出入りする衣の部分,つまり袖のこと。」
とある。
領袖の類語で言うと,
首領,
ということになる。意味は,
一段の仲間の長,かしら,
「首(かしら)+領(すべる)」
が語源。「首」の字には,「一番がけ」という含意がある。また,首領は,
主領,
とも当てる。主領は,
仲間の中で頭だつもの,宰領,主領,
という意で,「君」という意味がある。宰領は,
「宰(つかさどる)+領(すべる)」
が語源。「主」の字は,
「丶は,じっと燃え立つ灯火を描いた象形文字。種は,灯火が燭台の上でじっと燃えるさまを描いたもので,じっとひとところに止まる意を含む」
で,「首」の字は,
「頭髪のはえた頭部全体を描いたもの。抽(チュウ)と同系で,胴体から抜け出た首。また道(あたまを向けて進む)の字の音符となる。」
とあり,「主」と「首」の差は,どうも,「頭だつ」のと「先頭だって統べる」の差,
おのずと頭になる
のと,
頭になっていく,
の差のように,字からは感じるが,もちろん億説である。しかし,「宰領」の「宰」の字は,
「『宀(いえ)+辛(刃物)』で,刃物をもち,家の中で肉を料理することを示す。広く,仕事を裁断する意に用いる。」
とある。こちらは,仕事を司る,という意味が強い。してみると,実務の主務を預かる者ということになる。荘園で言えば,荘園を例にとると在地領主が「宰」,その寄進を受けた貴族である荘園領主(領家(りょうけ)が「首」,その寄進を受けた皇族や摂関家などの荘園領主(本家)が「主」,
主(領)→首(領)→宰(領),
といったニュアンスになろうか。その他に,似た意味に,
統領
頭領
棟梁
というのがある。頭領は,ほぼ首領に重なるが,統領は,統べ領る,という意味で,宰領に重なりそうである。棟梁は,
「屋根の棟と梁」
をあらわし,領袖と含意は同じである。『世界大百科事典 第2版』には,
「本来の意味は建物の棟(むね)と梁(はり)を指したが,これらが高くそびえる位置にあり,また建物の重要な部分であることから,集団の中心的人物,指導的立場にある人物を指すようになった。〈統領〉〈頭領〉も同じ意である。」
とある。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/to/touryou.html
も,
「棟梁は文字通り、建物の『棟(むね)』と『梁(はり)』をいった言葉である。棟と梁は建物を 支える重要な部分であることから、棟梁は集団の統率する中心的人物をいうようになり、一国の臣を指すようになった。 やがて、棟梁は大工・左官・鍛冶などの集団の長を指すようになり,近世から大工の親方をいうようになった。」
とする。こうみると,
領袖,
棟梁,
は,その含意からも重なり,宰領が,これに近い,ということになる。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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