2016年04月28日


この「分」は,「ぶ」と訓む,それである。

分が悪い,

と言った使い方をする。「ぶん」と訓む「分」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/424082581.html

で触れたし,関連する「本分」についても,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/434242162.html

で触れた。「ふん」と訓む,時間単位については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86

に譲る。漢字「分」の意味については,

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%88%86

に詳しいが,「分」は,会意文字。

「『八印(左右にわける)+刀』で,二つに切り分ける意を示す。払(左右にわけてはらいのける)は,その入声(にっしょう つまり音)に当たる。また半・班(わける)・判(わける)・八(二分できる数)・別とも縁が近い。」

と,その語源。字の使い分けで言うと,

分は,合の反対,物を別々に分ける義,
別は,弁別と連用す,彼は彼,此れは此れ特別して混ぜざる義,
判は,分に断の義を帯びたり,

分(ぶ)は,分(ぶん)とは違い,区分そのものを指す。従って,辞書(『広辞苑』)には,

あるものをいくつかに等分したもののひとつ,特に10分の1。たとえば,一割の10分の1,一寸の10分の1,一文の10分の1,一度の10分の1
江戸時代の貨幣単価。一両の4分の1,銀1匁の10分の1,銭一文の10分の1

と言った単位を示す(『古語辞典』には,「俗に『歩』とも書く」とある)が,

分厚い,

といった厚さ,,

分配高,割り前,
優劣の具合,
弓を射る力の強さ,

といった意味もある。『デジタル大辞泉』には,その他に,単位として,

「四分音符」のように,音楽で,全音符の長さを等分に分けること,

があり,

分のいい商売,

といった「利益の度合い」といった意味もある。しかし,

分が悪いは,

上記の,「優劣の具合」を指しているが,しかし,ことは,逆のように感じる。

分が悪い,

という使い方かされるようになって,「分」に,そういう優劣の意味が加わったのではないか。同様に,

分のいい商売,

も同様に思う。では,

分が悪い,

の,「分」はどこから来たのか。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q125074452

では,

「『どちらの方が優勢か』ということですが、見方を変えてみると、良く分かります。『分』という漢字は、一本の棒を、刀で二つにわけた形を現しています。つまり一本の棒を二つにわけ、その下に『刀』を置いたものを『分』としたのです。だから『分が悪い』と言うのは、半分わけでなく、どちらかが少ないということになります。それで少ない方が『分が悪い』と言うことになるわけです。」

確かに「分」の字の謂れから見ると,そう言えなくもないが,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86_(%E6%95%B0)

に,

「何の1⁄10になるかの基準となる単位(「基準単位」)は、量ごとに決まっており、以下のとおりである。
長さ - 寸、 文
質量 - 匁
温度 - 度
割合 - 割」

とあり,「割合」について,

「割合で用いる『分』は、割の1⁄10である。歩合(割合)の基準単位は 1⁄10 を表す『割』である。したがって、3.26 割を「三割二分六厘」と表現する。…『割』そのものが1/10を意味する数詞であるがために、『割』とともに『分』を使った場合には、まるで分が 1⁄100を意味するかのように誤解されることとなった。しかし、上記の場合の『分』は、基準単位である『割』の 1⁄10を表しているのである。」

とし,

「『七分咲き』、『五分五分』、『九分九厘』、『腹八分(腹八分目)』、『盗人にも三分の理』、『七分袖』の表現の中での使われ方は、全体である「十分(じゅうぶ) = 1」に対する割合を表している。つまりそれぞれ『1』を全部として、『0.7咲き』、『0.5 対 0.5』、『0.99』、『満腹の0.8』、『盗人にも0.3(30%)の理屈』、『長袖の70%の長さの袖』ということであり、ここでも『分』は 1⁄10という本来の意味を保っている。」

と,懇切に細くしている。こう見ると,「分」は,「割」の10分の1を指し,その優劣の割合を,比喩として言っている,というのが妥当なのだろう。やはり,四分六では,分が悪い,という言い回しを,日常感覚に,しみこんでいた時代の名残りなのだろう。

因みに,上記「分」には,分の下の単位を,

「分 厘 毛 糸 忽 微 繊 沙 塵 埃 渺 漠 模糊 逡巡 須臾 瞬息 弾指 刹那 六徳 虚空 清浄 阿頼耶 阿摩羅 涅槃寂静 」

と,計24単位まで載せていた。最後は,

涅槃寂静,

つまり,

「煩悩の炎の吹き消された悟りの世界(涅槃)は、静やかな安らぎの境地(寂静)」

なのだ。これは,10の-24乗に当たる,らしい。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86_(%E6%95%B0)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

posted by Toshi at 04:48| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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