2016年04月30日

ざまぁ見ろ


「ざまあみろ」は,

ざまーみろ,
ざまあ,
ざまあ見ろ,
ざまー,
ざまー見ろ,

等々と表記する。

「『様見ろ』の俗語。人の不幸や失敗に対して発するののしりの言葉。」

とある。まあ,ただ,

いい気味だ,

という,相手の失敗を罵るニュアンスと,

それ見たことか,
言わんこっちゃない,

といった,そうなるだろうと思った通りに陥った,といったニュアンスをもつ。結果としては,罵りだが,その間の両者のプロセスに,幾らか違う色合いが出る,ということだろうか。

日本語俗語辞典

http://zokugo-dict.com/11sa/zamamiro.htm

には,江戸時代から使われている,として(『江戸語辞典』にも載る),

「失敗したさまの醜さを知れ(=失敗した醜いさまを自分で見てみろ)」という意味の『様を見ろ(ざまをみろ)』という言葉がある。ここから『様を見ろ』は人の失敗をあざけっていう言葉としても用いられた。ざまあみろは、この『様を見ろ』が音的に崩れたもので、同様に人をあざける際に用いる言葉である。他にざまみろ、ざまあみやがれという言い回しもある。」

と載る。

もともと「さま」は,

様・状・態・方,

を当て,辞書(『広辞苑』)には,

「物事の方法・形・あり方・しかた・趣きに関して包括的に言う語」

としている。『古語辞典』には,

「漠とした方向を指示するサに接尾語マのついた語。原義は漠然たる方向。転じて,事をする方法,あるいは対象の外部的な様子,容姿,趣き。そのものの内容に立ち入って露骨に表現することなく意から,人名などの下について,尊敬の接尾語に使われた。類義語カタ(方)は,ある一点を指向する明確な邦楽の意。」

とある。『大言海』は,もう少し踏み込んで,

「然任(さまま)の義にて,然(しか)あるままの意か。あるいは,然見(さみえ)の,さめ,さまと転じたるにて,似寄(により)の意か(大御身(おほみみ),おほみま。真中(まなか),みなか。みさかり,まさかり)。」

とし,「任(まに)の條を見よ」とある。「まに」を見ると,

任・儘・随,

と当て,

「まにまにの下略」
「まま(儘)に同じ」

とあり,「まにまにの條を見よ」とある。「まにまに」を見ると,

「まま(儘)にまま(儘)に約」

とある。「そのあるままに」の含意が,あることがわかる。ところが,「ざま」と「さま」が濁ると,

「様子・有様を嘲って言う語」

に変る。『大言海』は,

「濁音に云ふは,盛衰記三,資盛乗會狼藉事『平家の事様(ことざま),御めざましく思召さる』などの上略より移れるか,又は,ただ,罵るに因りて濁らせ云ふなるか」

とある。濁ることで,確かに,語感が悪くなる。しかし,接尾語のとき,

行きざまに,

というようなついでのニュアンス,

生きざま,
死にざま,

のときの在り方をしめすときの「ざま」は,罵る含意はない。しかし,「ざま」の語感から考えると,貶める意味はないまでも,「生き方」というよりは,謙遜のニュアンスがあったのではないか,という気がしてならない。少なくとも,「生きざま」などと誇らしげに言う含意はないのではあるまいか。

その意味で,

「ざまぁみろ」

というときの,「ざま」は,相手に,

自分自身のいまの体たらくを見てみろよ,

という,意味がある。

自分で自分が恥ずかしくないか,

という含意である。それは,そう言う自分に,かく言うおのれの生き方,ありようは,そう言えるほどのものか,と,照りかえってくる言葉でもある。

三田村鳶魚は,江戸ッ子のことを指して,

「外聞が悪いということが、何よりの彼等の道徳であった。そこで彼等は盛んに自己批評をする。『ざまア見ろ』という言葉は、立派な自己批評であって、人の失敗したのを傍観して言う言葉ではない。自分が成功しても失敗しても、自分の姿を見よというのだ。そういう心持はどうして起るかというと、彼等は世間が狭い。向三軒両隣とか、もしくは現在住っている町とか、そういうところを一の世界にしている。みっともない、外聞が悪いというのは、ごくそばの人達に対してだから、十分に見えもするし、聞こえもするということが多い。見えをするのも、そこからくる。自分のすることは、見透されるように、誰の目からもはずれられ ぬよう に考える。」

と評する。「ざまぁ見ろ」とは,単純に人罵るだけはなく,そう言うおのれの「ざま」にも返ってくる,共有する道徳があってのことだった。それを,恥の意識と言ってもいい。昨今,そんなものは,消えてしまったように,臆面もない輩が横行している。その意味で,

ざまぁ見ろ,

は死語である。

参考文献;
三田村鳶魚『江戸ッ子』 [Kindle版]


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