2016年05月02日

おちゃっぴい


「おちゃっぴい」は,いまでは死語かもしれないが,辞書(『広辞苑』)には,

(「おちゃひき」の転)働いても金にならないこと。
多弁で,滑稽な真似をする娘,おませな小娘,

と載る。あるいは,別の辞書(『大辞林』)には,

(女の子が)おしゃべりで活発で,茶目っ気のあるさま。また,そのような女の子,

とある。これが知っている意味に近い。

『日本語俗語辞典』には,

http://zokugo-dict.com/05o/ochappii.htm

として,

「おちゃっぴいとは、多弁で滑稽な女の子。おませな女の子。」

とある。「おませな女の子」というのが,僕の理解している意味になる。この解説に,

「おちゃっぴいとは『お茶ひき』からきた言葉で、おしゃべりで滑稽な女の子。またはおませな女の子を意味する。これは江戸時代の遊郭で、なかなか客のつかない遊女をお茶ひき(仕事がなく、お茶をひいてばかりいることに由来する)と呼んだことによる。こうした客のつかない遊女の多くは、おしゃべりが過ぎることから、おしゃべりで滑稽な遊女をおちゃっぴいと呼び、後に遊女以外のおしゃべりで滑稽な女の子に対しても用いられるようになった。お茶っぴいの他、おちゃっぴー、おちゃっぴぃといった表記も用いられる。また、少女向け月刊誌『おちゃっぴー』という雑誌も存在した(1997年廃刊)。内容は現在のギャル雑誌に近いが、性情報に詳しいのが特徴であった。」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/o/ochappy.html

にも,やはり,

「江戸時代の遊郭で、客に出すお茶を挽く仕事を暇な遊女にさせていたことから、暇な遊女を『お茶挽き』といい、その『お茶挽き』の変化した言葉が『おちゃっぴい』である。 客もつかず、お茶ばかり挽いているような遊女たちは、おしゃべりでしとやかさ に欠けているものが多かったから,『おしゃべりで活発な女の子』を意味するようになり,同時に遊女以外の女の子も指すようになった。昭和初期から,長音を表す『-』をもちいた『おちゃっぴー』や『ぃ』を用い『おちゃっびぃ』と表記される例が見られるようになった。」

とある。さらには,『江戸語大辞典』も,「おちゃっぴい」を,

お茶っぴい,

と当て,

「おちゃひきの促訛」

として,

お茶をひいた芸娼妓,売れ残った芸娼妓

の意味の例として,

「おちやつぴい節句の礼に二三度米」

という柳多留を載せる。その他に,

「お金にありつけぬこと,ただ働き」
「言動がしとやかでない小娘。はねっかえり」

の意味を載せる。しかし,『語源辞典』には,

「オシャベ(お+喋)の変化」

とあり,

「おしゃべりな女の子,ませた出しゃばりの女の子」

で,方言として,

オシッピー,
オシャッペ,
オチャッペ,
オチャッポ,

とあるのが根拠で,『国語大辞典』の,

「お茶を挽きく」の変化は,

疑問としている。

確かに,「お茶をひく」の意味から,

こまっしゃくれた,おませな小娘,

への意味の転化は,飛躍がありすぎる。『大言海』には,

「主として,小娘などの,出過ぎておしゃべりする者を罵りて云ふ語」

としか載らない。例として,

「出合(だしあ)って,番付を買ふおちゃっぴい」

という川柳が載る。ここからは,億説だが,「お茶挽き」の「おちゃっぴい」と出過ぎの「おちゃっぴい」は,出典が別なのではないか。

『江戸語大辞典』は,「おちゃっぴい」とは別に,

「おちゃっぴき(御茶っ引)」の項を載せ,

「(おちゃひきの促訛)芸娼妓がお茶をひくこと」

の意味を載せる。「お茶挽」は別項で,

「『お茶をひく』の名詞化。芸娼妓・芸人等が客に呼ばれず,ひまであること」

という意味を載せる。「お茶挽」の意味での「おちゃっぴい」と,「お喋り」の「おちゃっぴい」とは,転訛が同じになっただけで,別々だったのではないか。

「おちゃっびぃ」

という言葉に重なって,由来が,「お茶挽」の方だけ残った,というのが正しくはないか。でなければ,「お茶を挽く」ことと「おしゃべりな小娘」とは重ならない。

『広辞苑』もそう分けていたが,『デジタル大辞泉』は,「おちゃっぴい」を,こう載せる。

「[名・形動]
1 女の子が、おしゃべりで、出しゃばりなさま。また、そういう少女。
2 《「おちゃひき」の音変化》働いても金にならず、割の合わないこと。」

これが正確ではないか。三田村鳶魚『江戸ッ子』には,

「奇体なことに、また江戸では、男にあまりしゃべるのはないが、女は皆おしゃべりだ。子供の時から『おちゃっぴい』なんていわれて、よく舌 の回るやつ がある。それが愛敬でもあるように思われていた。」

とある。「お喋りな女の子」は,別系統で「おちゃっぴい」と使われていたに違いないのである。

参考文献;
三田村鳶魚『江戸ッ子』 [Kindle版]
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


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