2016年05月04日

滅法界


滅法界は,

目法界,

とも当て,

甚だしいさま,法外,めっぽう,

と,辞書(『広辞苑』)に載る。昔のもの,といっても明治頃のものでも,

「滅法界もない」
とか,
「滅法界もないことになって」

といった使い方をして,まあ,

とんでもないこと,

といった意味に使っているようである。『大言海』の説明がふるっている。

「(法界の理を断滅する意)定法を外れたること。非常にあてこともなきこと。無法。」

と意味を載せ,こういうことが追加で説明されている。

「明歴二年刻,俳諧世話盡に,市の話の條に,めっそう買いとあるは値を論ぜざるなるべし,此の語の轉かともおぼゆ。滅法界,転じて,副詞に用ゐらる。たいそうに。たくさんに。」

滅法界は,ほぼ,滅法と同義で使われている。『江戸語大辞典』には,「滅法界」は,

「法外,めちゃくちゃ,途方もない,とんでもない」

と意味が載り,「滅法」は,

法外,途方もない,

以外に,

すばらしい,すてき,

という意味がある。『古語辞典』の「めっぽふ」には,

むやみ,めちゃくちゃ,

の意味しかないが,辞書(『広辞苑』)には,

ひどく道理にはずれていること,
また,

とんでもなくすばらしいこと,

とあるところをみると,江戸期には,(道理からの)外れ方が,マイナスの使い方だけではなく,プラスに超えている意味がかなり残っているらしい。これは「滅法」の謂れの痕跡が強いからかもしれない。

滅法は,仏教用語で,

「一切の相を寂滅した法,因縁の造作を離れた方,無為法」(『広辞苑』)
「因縁によって生じたのではないもの。無為法。」(『デジタル大辞泉』)
「一切の相を寂滅し,因縁によって生じたのではない不変の真如。無為法。」(『大辞林 第三版』)

と説明される。無知なのでさらに調べる。無為法とは,

「因縁によって生成されたものではないもの。涅槃などをいう。」(『広辞苑』)
「生滅変化を離れた常住・絶対の存在。因縁の支配を受けない解脱の境地などにいう。」(『デジタル大辞泉』)
「法をまず有為法(諸縁によって生じたもの)と無為法(絶対的存在)に分け,有為法を,三色法(しきほう)(物質的現象),心王(しんのう)(認識主観),心所法(しんしよほう)(心に伴ってはたらく諸現象),心不相応行法(しんふそうおうぎようほう)(物でも心でもない,関係や力,概念など)の4位に分け,そのそれぞれをさらに細分し,一方,無為法を第5位とし,虚空無為空間,択滅(ちやくめつ)無為(涅槃),非択滅無為(縁がなくて現在化しなかった存在)の三つに分ける。性質,属性としてのダルマはまた,あるものをあるものたらしめる特徴というところから発して,性質,属性という意味ももつ。」(『世界大百科事典』)
「有為法に対し,理論上生滅のない存在として,空間(虚空)などが想定されるが,宗教的要請たる涅槃もまた,生滅を超えた常住のものとみなされた。これらを有為でないものという意味で〈無為法〉(アサンスクリタ・ダルマasaṃskṛta‐dharma)と呼ぶ。ただし,これも決して実体あるものではない。」(『世界大百科事典』)

「法」とは,

サンスクリット語dhárma ダルマ(ダーマ)

を指し,

「法則・真理、教法・説法、存在、具体的な存在を構成する要素的存在などのこと」

を意味する。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95_(%E4%BB%8F%E6%95%99)

に詳しいのでそれに譲る。どうやら,因縁に由来する,この世とははずれた,まさに,

法外,

ということになる。『語源辞典』には,「滅法」について,

「仏教語,一切の生滅変化のない絶対の状態」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/me/meppou.html

は,

「滅法は仏教用語で、因縁に支配される世界を超え、絶対に生滅変化しない真如や涅槃 といった絶対的真理のことで、『無為法(むいほう)』の別名である。 滅法に『因縁を超越 した絶対的なもの』といった意味が含まれていることから、近世以降、『桁外れに』『はなはだしく』という意味が派生し,『ケンカがめっぽう強い』『今日はめっぽう暑い』などと用いられるようになった。」

とあるのが,謂れを説明して過不足ない。一般には,辞書には,「めっぽう」は,

「[名]仏語。
1 因縁によって生じたのではないもの。無為法。
2 涅槃(ねはん)のこと。
[形動][文][ナリ]道理にはずれるさま。常識を超えているさま。
[副]並みの程度でないさま。はなはだしく。」

と載る。しかし,『大言海』は,別々に項を立てる見識を示す。

めっぽふ(滅法) 仏教の語。無為法(因縁の造作を離れたる法)の異名。一切の法の滅する故に云ふ
めっぽふ(滅法) (仏教に,欲世界の空しきを悟り,苦を滅ぼすを滅と云ふ,滅の法を悟り得たる意より,すぐれたる意に云ふか)法外に,甚だしく。

それにしても,滅法の説明に,無為法をさらりと載せて,意が通ずる時代があった,ということに,いまさらながらおのが無知を思い知らされる。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
https://kotobank.jp/word/%E7%84%A1%E7%82%BA%E6%B3%95-640772
https://kotobank.jp/word/%E6%BB%85%E6%B3%95-644050


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