日がな
「日がな」というのは,,
日がな一日,
というような使い方をして,
朝から晩まで,終日,
という意味になる。語源を見ると,
「日+がな(強め)+一日」
とある。『大言海』には,
「夜がなよっぴてに対す」
とある。
ひねもす,
ひもすがら,
という意味になる。「ひねもす」は,
「日+助詞モ+ス(接尾語スガラの下略)」
とある。「すがら」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/420311540.html
で触れたが,辞書(『広辞苑』)には,
「一説に,スガは『過ぐ』と同根,ラは状態を表す接尾語」
とあり,
初めから終わりまで途切れることなく通す,
という意味になる。
http://www1.gifu-u.ac.jp/~satopy/kini042.htm
には,「日がな一日」を「日長一日」と勘違いしているケースがある,とある。
http://blog.livedoor.jp/yamakatsuei/archives/50914802.html
では,「しなが一日」とか「日が無い一日」もしくは「日がない一日」だと思い込んでいる人もいる,としている。耳から覚える慣用句の場合,「取り付く島がない」を「取り付くヒマがない」と覚えるのと似て,勘違いしてしまうケースはある。
三田村鳶魚『武家の生活』には,
「何よりのお 楽しみ、間(ま)がな隙(ひま)がな耽溺された」
という言い回しがある。『大言海』には,
「間がなすきがな」
という言い回しが載る。「すき」は「隙」なのだろう。
「少しの暇さえあれば,,きりなしに,ひまさえあれば」
という意味が載る。『江戸語大辞典』には,
「夜がな夜一夜(よひとよ)」
が載り,「日がな一日」の対,とある。あるいは,
「夜がな夜一夜(よっぴとい)」
と,「よがなよひとよ」の促訛。さらに,「よがなよっびてえ」とも訛るとある。
さて,この「がな」だが,単なる強調とも見える。『大言海』には,いわゆる,
「希ふ意のガに,更に感動詞のナを添えた」
という,たとえば,
「見る由もがな」
「無くもがな」
「人もがな」
希(こいねが)う意の感動詞以外に,別に,
「ダニの意に似たる辞,それなりとも」
「おおかた,でも」
の意の「がな」があるとしているが,スッキリしない。
http://okwave.jp/qa/q2844979.html
には,
「田井信之『日本語の語源』によれば、上代東国方言に多い『発音運動の強化』としての『子交』(子音の交替)傾向なのだとしています。
『朝から晩まで。終日』という意のヒモスガライチニチ(日もすがら一日)は、『モ』の撥音便、『ス』の脱落でヒンガライチニチ、ヒガライチニチ、ヒガナイチニチに転音した。
『夜通し。終夜』という意味のヨモスガラヨヒトヨ(夜もすがら夜一夜)も、語尾の『ヨ』を落としてヨモスガラヨヒト、ヨンガラヨヒトになり、さらにヨガラヨヒトテ、ヨガラヨッピテ、ヨガナヨッピテに転音した。』」
とある。たしかに,単なる強調,語勢かもしれないが,
「実現への願望の意をあらわす」(『広辞苑』)
という含意がある,と言うのも悪くない。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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