2016年05月22日

左支右吾


左支右吾は,

さしゆうご,

と訓む。浅学にして,この四文字熟語を知らなかった。辞書(『広辞苑』)には,

左を支え,右を防ぐこと。いろいろ諮って危難を避けること,
どちらにも差し支えること,あちこち食い違うこと,

と意味が載る。しかし,

http://yoji.jitenon.jp/yojif/2804.html

には,

様々な手段を用いて危険を防ぐこと。または、いい加減なことを言ってごまかすこと。
右を支えて、左を防ぐという意味から。または、右も左も食い違うという意味から。

と,あまりいい意味には使われない。

http://www.jlogos.com/d008/4373904.html

には,

左右両方を支え、とめる。あれこれ謀って危険を回避すること。また、左右どちらにも、さしつかえがあって思うにまかせないこと。吾は、實と同じで、とどめる、ふせぐの意。左の方を支え、右の方をとどめる。

と載る。同義語として,

左枝右實

を,類語として,

齟齬

を載せる。三田村鳶魚『武家の生活』には,烈公(水戸中納言斉昭)の攘夷論をめぐって,

「水藩君臣の攘夷論は方便にして、絶対の目的にあらざるに、今や烈公は責任ある地位に立ちて、実地問題に臨みたれば、とかく左支右吾するを免れず。」

この使い方からすると,

応接に暇がない,

と言うニュアンスに見える。出典については,

「世説新語」

とあった。「世説新語」とは,

「中国後漢末から東晋末にいたる名士の逸話集。宋の劉義慶の編。3巻。徳行,言語,文学,方正などの 36編に分類した書。書名はもと『世説』『世説新書』などといったが,北宋のとき『世説新語』となって,分類も現在の形に改められた。」(『ブリタニカ国際大百科事典』)

「中国、南朝宋(そう)の劉義慶(りゅうぎけい)(403―444)が著した逸話集。後漢(ごかん)末から東晋(とうしん)までの人物の言行や逸話を、徳行、言語など36のテーマに分類し、集録している。この書は、初め単に『世説』とよばれていた。その後『世説新書』と改題され、唐代からは現在の名称も使われるようになり、宋代以後定着した。人物の言行や逸話を事実として記録しようとしている点で、史書の性格も帯びているが、人物の個性を表現するために、結果的にはかなり意図的なフィクションが混じっており、明らかに史実に反する話も多い。しかし簡潔な短文形式で示される個性の断面には、それぞれに貴族社会の風俗や価値観がうかがわれ、全体として魏晋(ぎしん)の時代相を鮮やかに映し出している。また当時の口語なども用いられているため、言語資料としても重視されている。
 なおこの書の理解に欠かせないのは、南朝梁(りょう)の劉孝標(462―521)の注である。劉孝標の注は、語釈は少なく、他の文献によって、本文を補足したり、あるいは事実に反していることを例示しつつ、『世説新語』の世界をより立体化している。本文に劣らぬ貴重な資料群である。」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)

というものらしい。それによるものらしいが,

「(自然の景観が次々と現れ,ゆっくりとみている暇がない意から)多忙のため,いちいち応対している暇がない。物事が次々と続いて起こり,非常に忙しい」

という意味になる。まあ,

目まぐるしい状況変化に,次々と対応して忙殺されている,

といった意味になる。これが原意に近いかもしれない。

漢字で見てみると,左の字は,

「『ひだり手+工(仕事)』で,工作物を右手に添えて支える手」

とある。支の字は,

「『竹の枝+又(手)』で,手に一本の枝を持つさまを示す」

とある。右の字は,

「又は,右手を描いた象形文字。右は,『口+音符又(右手)』で,かばうようにしてものを持つ手,つまりその手で口を庇うことを示す」

とある。吾の字は,

「『口+音符五(交差する)』。語の原字だが,我とともに一人称代名詞に当てる」

とある。因みに,五の字は指事文字で,

「×は交差を表す印。五は『上下二線+×』で,二線が交差することを示す。片手の指で十を数えるとき,五の数で戻る,その転訛移転に当たる数を示す」

とある。左で支え,右でやり取りするのに忙しい,といったニュアンスになる。よく言えば,

八面六臂,

だが,悪く言えば,

前門に虎を防ぎ後門に狼を進む,

つまりは,

前門の虎後門の狼,

となるし,その進退窮まった状態は,

進退両難,

とも言える。あるいは,

一難去ってまた一難
虎口を逃れて龍穴に入る

という状態か。それは,

ちぐはぐ,

という言い方もできる。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

ラベル:左支右吾
posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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