2016年05月29日
くろ
色の「黒」については,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92
に詳しいが,すでに,「あか」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/429360431.html
で,「あを」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/429309638.html
で触れたが,その折,
「一説に,古代日本では,固有の色名としては,アカ,クロ,シロ,アオがあるのみで,それは,明・暗・顕・漠を原義とする」
と書いたことがある。「しろ」でも,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/438347414.html?1464378171
触れたが,「くろ」は色というより,「明暗」の「暗」を指している。したがって「くろ」も,辞書(『広辞苑』)には,
「『くら(暗)』と同源か。また,くり(涅)と同源とも」
とある。あるいは,似たニュアンスだが,
「『暗い(くらい)』もしくは『暮れる(くれる)』が転じて『黒(くろ)』となった」
とする説もある。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/ku/kuro.html
は,
「黒の語源は定かではないが、『暗い(くらい)』『暮れる(くれる)』などの意味と繋がりのある語である。 平安時代の辞書『和名抄』には、水底によどむ黒い土の『涅(くり)』を『和名久理 水中黒土也』とあり、赤色を表す『丹(に)』が『赤土』をさしたのと同じで、色彩名と土の名称は関係が深い。上代に『黒色』を表わした『烏(ぬば)』も『ぬま(沼)』と同源で,泥の意味があった。」
としている。『語源辞典』を見ると,「黒い」について,
「語源は,『暗し』の音韻変化です。クロシの口語がクロイです。名詞の『黒』は,クロイの語幹がそのまま名詞に使われた」
とする。『大言海』も,
「暗(くら)と通ず(はららぐ,ほろぐ,白(しろ),しら)。沖縄にてはくる」
とある。さらに,「暗し」で,
「黒しと通ず,すめらぎ,すめろぎ」
と音韻変化例を示し,
「明(し)の反」
とする。「暗し」は,『古語辞典』にも,「くらし」として,「暗し」「暮し」を別に立て,
「クラ(暗)・クレ(暮)と同根。明(あか)しの対」
とある。他の色との関連から見れば,
明・暗・顕・漠が,アカ,クロ,シロ,アオ,
の原義,というのもうなずける。因みに,「あを」で触れたが,「あを」は,
「本来は,灰色がかった白色」
を言うらしいので,「漠」を指す。状態を示す言葉のはずが,
色,
として抽出され,汎用化されたということになるが,ここでも,「赤,黒,白,青」という漢字のもつ影響は多かったのかもしれない。「あを」でも書いたが,「青」と当てることで,「緑」と区別された。
「『あお』の代名詞のような,藍自体,古く中国から輸入した。」
この場合,藍染めと一緒に「藍」が伝わる。色(の識別や言葉)が先にあるのではなく,それを示すモノやコトが先にある。しかし,それを名づけて,地から図を,分化させていくことで,見える世界が変わる。
漢字の黒(黑)の字は,
「この字の下部は火,上部は煙突に点々と煤のついたさまをあらわす」
とある。その状態を共有化しなければ,「くろ」(暗い)を「黒」には当てないだろう。
因みに,「黒」に関連して,『語源由来辞典』は,「黒字」の「黒」を,
http://gogen-allguide.com/ku/kuroji.html
「黒字は、簿記で収入超過額を黒色で記入すること。 そこから、利益が出ることを『黒字』と言うようになった。 言われ始めた 正確な時期は不明だが,広まった時期は『赤字』と同様,大正から昭和初期にかけてである。」
とあるし,「黒幕」の「黒」は,
http://gogen-allguide.com/ku/kuromaku.html
で,
「黒幕は歌舞伎などの芝居に用いる黒幕に由来する。歌舞伎では,舞台・場面の転換や,夜の場面を表すため黒い幕を張った。その陰で舞台を操ることから,裏で操る人を『黒幕』というようになった。また武家政権の『幕府』や相撲の『幕内』のように,『幕』には立ち入りがたい場や地位の者を表す語が多いため、裏で操る人の中でも、特に 権力者の意味が強くなり、『政界の黒幕』などと用いられるようになったと考えられる。」
としている。なお,「黒い」を,『江戸語大辞典』では,
よい,優れている,うまい,
という意味で使っている。これは,
「役者評判記の位付けに,同じ吉でも黒字の吉が上で,白字の吉を下としたのに基づき,明和頃深川の岡場所で流行語になった」
とある。ここから「玄人」を連想する。『大言海』は,「くろうと」に,
玄人,
と
黒人,
を当てる。で,
「クロヒトの音便,素人を打ちかへして云へるまでの語なり(おもしろいをかへして,おもくろいなどと云ふ)。」
とある。「面黒い」とは,一般には,
「おもしろい」をしゃれていった語,
という意味と,俳句や川柳では,逆に,
「おもしろい」の反対の意で、「つまらない」をしゃれていった語,
として使うという,相反する意味で使われた。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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