2016年06月01日
おもくろい
「おもくろい」は,
面黒い,
と当てる。辞書(『広辞苑』)には,相反する意味が載る。ひとつは,
「面白い」をたわむれに反対に言ったもので,「面白い」と同義,
いまひとつは,
近世,「面白くない」を洒落て言ったもの,つまらない,
である。後者の洒落の方が,わかりやすい。前者は,少し斜に構えた感じがある。
「面白い」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/415405652.html
ですでに触れた。「面黒い」は,「面白い」の語源ほどの奥行きのある謂れではないらしい。
『日本語俗語辞典』
http://zokugo-dict.com/05o/omokuroi.htm
では,
「面黒いは江戸時代から下記の相対する二つの意味で使われる。
[1] 面黒いとは面白いを単に冗談っぽく言ったもので、面白いと同意に使われる。一般の人の会話や洒落本ではこちらの意味で使われた。
[2] 面黒いとは面白いの白に対し、対照的な黒ということから、面白くないという意味で使われた。主に俳句や川柳で用いられた意味である。」
とある。前者は,「面白い」を「面黒い」と,会話の中で洒落て言う,という感覚なのかもしれない。『江戸語大辞典』には,
「訛って,『おもくれえ』とも。おもに職人などの用語」
とある。「江戸ッ子」について,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/436936674.html?1461182711
で触れたように,「江戸ッ子」は,裏店に住む,
「日雇取・土方・大工・左官 などの手間取・棒手振、そんな 手合で、大工・左官でも棟梁といわれるような人」
を指し,町人とは区別される。そう言う人が使っていた,とイメージすると分かりやすい。『大言海』には,
「白しを黒しと反(かへ)して言ふ戯語(ざれごと)なり」
として,
「面白しに同じ」
の意味しか載せない。これが一般的だったということだろう。
『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/o/omokuroi.html
には,
「『おもしろい』と『おもしろくない』の相反する意味で用いられた言葉である。おもしろい意味の面黒いは近世江戸の通人や職人が使い、つまらない意味の面黒いは俳句や川柳で使われた。 つまらない意味の方は、面白いの『白』を『黒』にすることで正反対の意味を表し、『おもしろくない』としたもので,普通に考えられる表現である。おもしろい意味のほうは,『面白い』の『白』をもじって『黒』にし,『面白い』をしゃれているところがポイントである。」
とあり,「つまらない」という意味の使い方の方が,確かに自然だ。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/3578/2004/omokuroi.htm
には,『新明解国語辞典』に,
「〔「おもしろい」のもじり〕『(ちょっと)おもしろい』意の口頭語的表現。」
とある,という。口語として使うには,
「おもしろい」
のに,ただ「おもしろい」と言っても曲がない。で,
「おもくろい」
と言う。しかし,掛け値なしに,面白ければ,「おもしろい」というところだが,そう言うには,ちょっと,という意味で,
「おもくろい」
と言うニュアンスもあるが,ちょっとひねってみたいほど,面白さが,しゃれている,と言う場合も,単に,「おもしろい」というところを,捻って,
「おもくろい」
と言ってみる,というニュアンスもある。
「つまらない」意味だと,
富士なくばおもくろからん東路,
という句が,「おもしろい」意味だと,
雪の歌や,見て面黒き,筆の跡,
という句が,それぞれニュアンス伝えている。まあ,微妙。
参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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