2016年06月02日

快刀乱麻


「快刀乱麻」は,このままでも使うが,普通,

快刀乱麻を断つ,

という使い方をする。辞書(『広辞苑』)には,

「杜甫,戯題画山水図歌『焉得并州快剪刀剪取呉松半江水(切れ味のよい刀剣で,乱れもつれた麻を切る意)』」

と注記し,

「紛糾している物事を,てきぱきと手際よく処理すること」

と意味を載せる。

http://qanda.rakuten.ne.jp/qa5403568.html?rel=innerHtml

には,これについて詳しく,

「杜甫の『戯題画山水図歌』に『焉得并州快剪刀剪取呉松半江水』とあるのを,〈切れ味のよい刀剣で、乱れもつれた麻を切る意〉と解釈するもののようですが、『いずくにか并州の快剪刀を得て、呉松半江の水を剪取したる』と読むところのようです。

十日、一水を画き
五日、一石を画く
能筆、相い促迫するを受けず
王宰、始めて真跡を留むるを肯んず
壮なるかな、崑崙・方壺の図
君が高堂の素壁に挂く
巴陵、洞庭、日本の東
赤岸の水は銀河と通じ
中に雲気ありて飛龍に随う
舟人、漁子、浦漵に入る
山水ことごとく亜す、洪濤の風
もっとも工みなるは遠勢、古も比する莫し
咫尺、応に須らく万里を論ずべし
いずくにか并州の快剪刀を得て
呉松半江の水を剪取したる

この歌は、杜甫が友人の家の壁に掛けられた王宰の描く山水画を見てつくったものなのは明らかです。
これが快刀乱麻の出典だというのは誤りではないかと思います。」

とある。確かに,いずれを見ても,出典は,『北斉書』〈文宣帝紀〉とするのが有力らしく,ここでも,こう書く,

「『高祖嘗試觀諸子意識,各使治亂絲,帝獨抽刀斬之,曰:「亂者須斬。」高祖是之。』北斉(ほくせい)の高祖・高歓(こうかん)はかつて、我が子一人一人の判断力を試そうと考えた。息子たちそれぞれにからまった糸の固まり(乱麻)を渡すと、それをなんとかするように命じた。子供たちはこのからまりを解こうと必死に糸玉と格闘していたが、
この時、ひとり高洋(後の文宣帝)だけが刀を抜いて、糸玉を真っ二つに斬り、『秩序を乱した者は斬らなくてはなりません』と言った。高歓はこれをみて洋は見込みがあると思った。」

と。

『平明四字熟語辞典』

http://yojijyukugo.com/ka/yj01354.html

では,簡単に,

「北斉の高祖が乱れた糸をほぐすように言ったところ、高洋という子供は『もつれた糸は斬ってしまうべきだ』と言い、糸を刀で斬った」

とあるとする(高洋は,後に文宣王となった)。

快刀乱麻の「快刀」

のみでも,

非常によく切れる刀,

という意味がある。「快」の字は,

「夬(カイ)は,『コ印+又(手)+指一本』からなり,コ型にえぐりとることをあらわす。抉(ケツ えぐる)の原字。快は,『心+音符夬』で,心中のしこりをえぐりとった感じのこと。もたもたとつかえるもののない,さわやかな気持ちを意味する。」

で,「心よい」という意味から「はやい」「刀がよく切れる」にまで広がっている。

快刀乱麻の類語と言うと,

一刀両断
一剣両断

になるが,これは,

一太刀で真っ二つに切ること,

という言葉の意味から,

断固たる処置をすること,決断の速やかなさま,

という意味で使われる。

『故事ことわざ辞典』

http://kotowaza-allguide.com/i/ittouryoudan.html

には,

「『一刀』とは、刀をひとたび振り下ろしたり、斬り払ったりすること。『両断』は、二つの断つ意味で、一刀で物を真っ二つに切るということから。」

として,

「『朱子語類』で南宋の思想家朱熹は、人間の将来を憂えて発奮すると食事を忘れ、みずからの楽しみを楽しむときは憂いを忘れて没頭するという孔子の生き方を、『一刀両断』とあらわしている。現代中国語では、古い関係を思い切って断つ意味で用いられる。」

とある。辞書(『広辞苑』)にも出典は,『朱子語類』とある。

「己に克つ者は,是根源上より,一刀両断し,便(すなわ)ち斬絶し了(おわ)る」

によるらしい。

これに似たものに,英語で,

To cut the Gordian knot.

つまり,いわゆる,

ゴルディアスの結び目を断つ,

である。

「ゴルディアスの結び目またはゴルディオンの結び目(英: Gordian Knot)は、古代アナトリアにあったフリギアの都ゴルディオンの神話と、アレクサンドロス大王にまつわる伝説である。この故事によって、手に負えないような難問を誰も思いつかなかった大胆な方法で解決しまうことのメタファー『難題を一刀両断に解くが如く』(英: To Cut The Gordian Knot )として使われる。」

とある。

ゴルディアスの結び目.jpg

「ゴルディアスの結び目を断ち切るアレクサンドロス大王」作:Jean-Simon Berthélemy (1743–1811)


その詳細は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%B5%90%E3%81%B3%E7%9B%AE

に詳しいが,

「その昔、権力争いにあけくれたフリギアでは、世継ぎの王がいなくなってしまった。そこでテルメッソスの神サバジオスに、臣民が次の王がいつ現れるかの託宣を仰いだ。すると、預言者の前に牛車に乗ってやってくる男がフリギアの王になる、という神託がくだった。ちょうど神殿へ牛車に乗って入ってくる男がいたが、それは貧しい農民のゴルディアスであった。にわかには信じがたい神託であったが、ゴルディアスの牛車には、神の使いの鷲がとまっていたため、それを見た占い師の女が、彼こそが次の王だと高らかに叫んだ。 ゴルディアスは王として迎えられ王都ゴルディオンを建てた。ゴルディアスは神の予言に感謝を示すため、乗ってきた牛車を神サバジオスに捧げた。そしてミズキの樹皮でできた丈夫な紐で荷車の轅を、それまで誰も見たことがないほどにしっかりと柱に結びつけ、『これを結び目を解くことができたものこそ、このアジアの王になるであろう』と予言した。その後、この荷車を結びつけた結び目はゴルディアスの結び目として知られ、結び目を解こうと何人もの人たちが挑んだが、結び目は決して解けることがなかった。
数百年の後、この地を遠征中のマケドニア王アレクサンドロス3世(アレクサンドロス大王)が訪れた。彼もその結び目に挑んだが、やはりなかなか解くことができなかった。すると大王は剣を持ち出し、その結び目を一刀両断に断ち切ってしまい、結ばれた轅はいとも簡単に解かれてしまった。折しも天空には雷鳴がとどろき、驚いた人々を前に、大王の従者のアリスタンドロスは『たったいま我が大王がかの結び目を解いた。雷鳴はゼウス神の祝福の証である』と宣言した。後にアレクサンドロス3世は遠征先で次々と勝利し、予言通りにアジアの王となったという。」

とある。時間軸から言うと,快刀乱麻に影響があるとすると,元は,ゴルディアスの結び目のほうかもしれない,と想像したりする。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%B5%90%E3%81%B3%E7%9B%AE
http://qanda.rakuten.ne.jp/qa5403568.html?rel=innerHtml
田部井文雄編『四字熟語辞典』(大修館書店)


ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

【関連する記事】
posted by Toshi at 04:44| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください