2016年06月18日

ちゃら


「ちゃら」を辞書(『広辞苑』)で引くと,

口から出まかせ,出鱈目を言うこと,またそれを言う人,
にせもの,
差し引きゼロにすること,

という意味が載る。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/17ti/chara.htm

には,「ちゃら」について,

「ちゃらとは、でたらめ・でまかせ。差し引きゼロの何もない状態にすること。」

として, 江戸時代以降に使われている,として,こう解説する。

「 [1] ちゃらとは出鱈目(でたらめ)・出任せ(でまかせ)といった信頼に値しないいい加減な軽口・嘘といった意味で江戸時代から使われている。ちゃらんぽらんのちゃらはここからきたものである。またここから、偽物のこともいう。
[2] ちゃらとは発生している貸し借りや損得を差し引きゼロの状態にすることやなかったことにすることを言う。『ちゃらにする』という言い方をするが、大抵は交換条件を満たした上でなかったことにする場合が多い(例:欲しい情報や人・物などを渡す代わりに借金はなかったことにするなど。逆に心意気からちゃらにするといったような、交換条件なしで行う場合もある。)」

『江戸語大辞典』には,「ちゃら」は,

ごまかし,うそ,でたらめ,

という意味が載る。

http://ppnetwork.seesaa.net/article/419761791.html

で触れたように,『古語辞典』には,「ちゃり」として,

ふざける,

という意味が出ていて,その名詞は,

茶利,

と当て,

滑稽な文句または動作,ふざけた言動,おどけ,
(人形浄瑠璃や歌舞伎で)滑稽な段や場面,または滑稽な語り方や演技,

という意味がある。そこから,

チャラい,
ちゃらちゃら,
ちゃらかす,
ちゃらける,

等々,ふざけるとか,出鱈目,という意味は,出てくるが,いわゆる「チャラにする」という使い方の,

差し引きゼロにすること,

という意味の謂れにはつながらない。強いて言えば,

「それは,冗談」

と言って,なかったことにする,というふうにこじつけられなくもない。現に,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%A9

には,「チャラ」について,

「出鱈目、出任せ、いい加減な取引・態度・発言、すぐにバレる嘘。転じて、契約・貸借関係などの取引が『チャラ(いい加減なもの)』であると判明した場合に、その取引をご破算(帳消)にすること。江戸期から現代にまで受け継がれている俗語。『ちゃらぽら』・『ちゃらんぽらん』とも。」

と,載ってはいる。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1277004422

には,「でたらめ」とは別系統で,

「『真っ新にする』の『新(さら)』が『ちゃら』に転じたと考えるのが、単純明快だと思います。
関東方面の伝統的崩し方として、『マッサラ』を「マッツァラ」と表現されるそうですから、これが『ツァラ』から『チャラ』に転じたとする説なども頷けます。」

とあるが,「まっさら」は,あくまで,「さら」で,

「新」「更」

の字を当て,「新しい」という意味と,名詞の上に付けて,

更地
とか
更湯

と言った使い方をしていて,「ちゃら湯」「ちゃら地」とは言わない。語源的には,

「『サラ(浚フのサラ)』で,改まるさま,改め加わるさま,新しいさまを表す言葉です。サラという,近世の言葉は,新,更,の意味で,関西に方言として残っています。サラの服,サラ湯などの複合語を造ります。浚うことによって,すっかり新たにする,すっかり更新する意です。別説『サ(清新の意の接頭語)+アラ(新)を加えた語』とする語源説もありますが,疑問です。」(『語源辞典』)

としている。しかし,『大言海』は,

「倭訓栞,さら『更を訓むは,新(あら)に通ず,今も,新たにすることを,サラと云へり』新湯(あらゆ),さらゆ」

と注記している。また,『日本語の語源』には,「茶」の訓みについて,

「タ(茶)は拗音化して『チャ』になった。子交(子音交換)[ts]をとげるときは『サ』になった。」

とあるので,「茶利」から,

「ちゃり→ちゃら」
「ちゃら→さら」

の音韻変化は,ある程度想定できる。その意味では,「さら」は,

新たにする,

という更新の意味と,

ご破算,

の意味が含まれているようだ。しかし,「ちゃら」にするというとき,新たにする,という意味より,

ご破算,

という意味が強くないだろうか。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1277004422

ではさらに,

「一方で『ちゃら』の意味として大辞林では「(1)でたらめ。でまかせ。ちゃらぼこ。(2)差し引きゼロにすること。貸し借りなし。」と解説されていますが、…(1)(2)の由来が同源だとすれば、(1)のでたらめ。でまかせ。の意味からは『ちゃらんぽらん』『ちゃかす』『べんちゃら』『ちゃらちゃら』等が連想されますが『ちゃらちゃら』を擬音語と捉えれば、他に残るのは『茶(ちゃ)』の字でしょうか。 江戸時代世情が安定すると町人達が暇潰しにお茶を飲みながら冗談話を楽しむようになって、冗談を『お茶』とか『お茶の話』と言うようになり、更に何かの失言を冗談話として忘れることを『お茶にする』という用法も出来たとされます。
この失言・冗談話等を『お茶にする』ことから、有耶無耶・曖昧・誤魔化す・デタラメ・でまかせ等の意味が連想され、又綺麗さっぱり水に流して忘れるニュアンスも含まれる事から、やがて『おちゃらけ』『ちゃら』等と短縮・転訛される中で、差し引きゼロ・貸し借り無しの意味が派生したのかも知れません。」

と説明する。「冗談にする」という牽強付会説を裏付けるようだが,「ちゃかす」という言葉を連想する。「ちゃかす」は,

茶化す,

と当て,確かに,

冗談にしてしまう,茶にする,
冗談のようにして,はぐらかす,,

という意味が載り,「茶にする」には,「一休みする」という意味の他に,

真面目な応対をしない,
人を利用して,あとは打ち捨てておく,

という意味がある。『大言海』には,「茶化す」は,

「戯(ちゃり 茶利)を活用す」

として,茶利の動詞化としている。しかし,そもそも『江戸語大辞典』の「茶」の項を見ると,

人の言うことをはぐらかすこと,

という意味が載り,

茶に受ける(冗談事として応対する)
茶に掛かる(半ばふざけている)
茶に為る(相手のいうことをはぐらかす)
茶に成る(軽んずる)
茶を言う(いい加減なことを言ってからかう)

等々,「茶(ちゃ)」自体が,(どうやら遊里語発祥らしいが)冗談にする,という含意を込められている。その意味で,

チャラにする,

が,(冗談として)なかったことにする,

という含意が込められていることになる。ただ,

帳消しにする,
白紙に戻す,
ご破算にする,

という言い方とはニュアンスが違うのかもしれない。その流れで考えると,「チャラい」も,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/419761791.html

で触れたことを更に掘り下げると,『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/17ti/charai.htm

の言うように,

「チャラいとは言動が軽い様を表す俗語『チャラチャラ』を略し、形容詞化する接尾語『い』をつけたもので、言動が軽く浮ついている様や服装が派手で安っぽい様を表す。チャラいは1980年代に使われ始めた言葉で、徐々に使用度が減っていたが、近年、同様の意味で再び若者に使われるようになっている。」

と,擬音から来ている面もあるのは,「ちゃらんぽらん」が,

「ちゃらん(鉦の音)+ポラン(鼓や木魚などの音)」

まさにふざけて,いいかげんな出まかせの音から来ていることから考えて,ありえるかもしれないが,その背景に,

「ちゃ(茶)」

の言葉のもっていた含意が二重重ねになっている,と見えなくもない。『わらえる国語辞典』

http://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%A1/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

でも,「チャラい」を,

「江戸時代にはすでに使われていた言葉で、おしゃべりな人の発する言葉を『ちゃらちゃら』という擬音語で表現したところから派生した言葉らしい。」

としているが。

ちなみに,「チャラ男」(ちゃらお)は,

http://www.fleapedia.com/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%9F%B3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/%E3%81%A1/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%A9%E7%94%B7%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B/

に,

「チャラ男とは、チャラい男つまり軽薄な男という意味の俗語。言葉づかいや態度、格好などが軽薄であると周囲から判断された場合、その男は『チャラ男』の呼称をいただくことになる。そのパターンでいくと、当然『チャラ子』というのがあってもよさそうだが、あまり使われている様子はないし、よく考えてみると、『チャラ男』と対照形の『チャラ子』という人物像を想像するのが非常に難しい。それは、日本社会では男は『チャラ』くないのが普通の姿だと考えられていて、『チャラい』のは珍しい生態だからそう呼ばれるのか、いずれにしても、『チャラ男』という言葉の使い方には、日本社会の男性と女性に対する性格付けの特徴が現れているように思われる。」

というのも,「ちゃ(茶)」という言葉の含意を鑑みると,なかなか含蓄がある。そもそも「茶化す」は,遊里で許された,冗談事と思えば,それをこの浮世で,そのまま振舞えば,

チャラい,

と言われるのは当たり前ではあるまいか。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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