2016年07月06日

がめつい


「がめつい」という言い方は,どちらかというと,そう口にしたときの,口触りというか,語感が,ひどく悪い。こういう言葉も珍しいのではあるまいか。『広辞苑』には,

利得に抜け目がなく,押しが強い。菊田一夫の戯曲『がめつい奴』によって流行,

とある。がめつい奴については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8C%E3%82%81%E3%81%A4%E3%81%84%E5%A5%B4

に詳しい。手元の『語源辞典』には,

「『ガメル(強欲・抜け目がなく,ごまかす)+ツイ(形容詞化)』」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ka/gametsui.html

は,その謂われを,

「昭和34年(1959年)から35年にかけて公演された菊田一夫作の戯曲『がめつい奴』の ヒットにより、流行語として全国に広まった語。 がめついには、『がめ』と『つい』に それぞれ説があり、組み合わせによって幾通りかの説がある。 『がめ』の語源には、麻雀用語で『大勝を狙って貪欲に勝負する』といった説。『ちょろまかす』といった意味で使われる『がめる』を語源とする説。スッポンを亀の意味から『がめ』と言うことがあり、スッポンは一度くわえたら離さないため、それをたとえたとする説がある。『つい』には『ごつい』『きつい』などの『つい』を加えたとする説と、『(運など)ついている』の『つい』を結びつけたとする説がある。この中でも、スッポンの説と、『ごつい』の『つい』の組み合わせが有力とされている,がめるの語源には、近世の隠語で質に入れることを『がめる』と言ったことからとする説もあるが、『がめつい』と同じくスッポンの説が有力とされており、スッポンの『がめ』から『がめる』となり、『がめつい』が生まれたとも考えられる。各説の中にも、菊田一夫の造語とする説や,関西方言など様々な説がある。」

と詳しく説く。『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E3%81%8C%E3%82%81%E3%81%A4%E3%81%84

は,

「1959年(昭和34年)から上映された、菊田一夫の戯曲『がめつい奴』によって流行した言葉。麻雀用語で、大きな手で上がろうと無理をする意の『がめる』と関西方言の『がみつい』をつないだもので、菊田一夫の造語とされる。
他に、『がめ』は亀と同語源でスッポンのことをいい、スッポンが一度くわえたら離さないことから、この『がめ』に『ごっつい』『きつい』などの『つい』が合わさったという説、また、芸能人仲間の麻雀用語からきた語で、『がめる』と『ついてる』を結びつけたという説もある。」

と,菊田一夫造語説を取る。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/06ka/gametui.htm

は,「昭和時代~」の言葉として,

「がめついとは自己の利益に対して抜け目がなく押しが強いことを言い、『けち』『せこい』に通じる言葉である。がめついに似た言葉に『貪欲』がある。ただし『貪欲』は良い意味でも使われるのに対し、『がめつい』は嫌みを込めて使われることが多く、良い意味ではほとんど使われない。がめついは東宝芸術座で1959年(昭和34年)から行われた戯曲『がめつい奴』のヒットともに当時の流行語となった。」

と。この言葉の含意を書いている。あまりいい言い方,言われ方ではない。さらに,『日本辞典』

http://www.nihonjiten.com/data/253978.html

は,

「けちでがっちりしている。利益を得ることに積極的で抜け目がないをいう。昭和34年に公演された菊田一夫作の戯曲『がめつい奴』から、全国的に広がった言葉。関西方言でスッポンを『ガメ』といい、くわえたら離さないことをたとえ、それに『ごっつい』『きつい』などの『ツイ』を語尾に付けたとする説、欲張る意の麻雀用語『がめる』と関西方言の『がみつい』を結合させたとする説、菊田一夫の造語とする説などがある。なお、けちな人を人名のように表した『伊勢屋与惣治(いせやよそうじ)』は、伊勢出身の商人には勤倹の人が多かったところから『伊勢屋』に、遊びに誘っても『よそう』と言って帰ることから『与惣治』を付けたもの。」

とある。「けち」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/432534698.html

で触れたので繰り返さない。

ともかく,菊池一夫の造語説がまかり通るくらい,「がめつい」は由来の定かでない言葉らしい。ということは,ある種世界での隠語だった可能性が高い。

念のため,「がめる」を調べてみる。『広辞苑』には,

がむしゃらに,より大きなりを得ようとする,
他人のものをちょろまかす,

とある。前者の意味は,「がめつい」に通じる。しかし,それは,結局「他人のものをちょろまかす」のだと言っているようで,妙におかしい。「がめる」も「かめる」も,『江戸語大辞典』には載っていないが,

http://kotobakai.seesaa.net/article/8173600.html

に,「がめる」とは,

「『掠め取る」(かすめとる)の省略形だそうです。ただし、これは、上野のテキヤのオヤブンに昔聞いた話ですが...。麻雀では、『ガメくる』の方が使われているような気がします。」

「ある種の和語(大和ことば)は、語頭を濁音化させてマイナスの意味を担わせることがあります。「がにまた」(蟹股)、『ドリ』(鳥。食べられない鳥の肺臓)、『ダま』(玉。小麦粉などの溶けない固まり)などです(例は『暮らしのことば語源辞典』の川嶋秀之氏の記述による)。
『がめる』もその伝で考えるなら、関係ありそうなことばとして、『かめる』。これは質に入れることをいう、人形浄瑠璃社会の隠語(『日本国語大辞典』)。しかし、その『かめる』の語源となるとわからないでしょう。また、『がめ』(亀。すっぽんの異名)。一度くわえたら放さない動物(以上、上掲語源辞典の池上啓氏の記述に沿う)。
このような「俗語」は、大半は語源がわからないと思ってよいのではないでしょうか。『ダサい』などという最近のことばも、語源説はいろいろあるが結局決定打はない、というのが『定説』のようです。語源は、不用意に説を出すと、誤りを広めることになりかねないので、研究者も慎重にならざるをえないところがあります。」

とある。清音が濁音化することにより,状態表現から価値表現に変ることについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/437361864.html

で触れた。

「かめる」について,

『隠語大辞典』

http://www.weblio.jp/content/%E3%81%8B%E3%82%81%E3%82%8B

は,

「かめる
①強窃盗の目的で邸内に忍入ること。②贓物の隠とくのことをいう。
かめる
強窃盗ノ目的ヲ以テ他人ノ邸内ニ忍入ルヲ云フ。〔第三類 犯罪行為〕
強窃盗の目的を以て邸内に忍入るを云ふ。
かめる
物品ノ入質処分。〔第四類 言語動作〕
給与-貸与-恵与等一般贈与又ハ挿入スルノ意。〔第四類 言語動作〕
給与、貸与、恵与等を云ふ。又捜入するの意も存する、此の捜入すると云ふ意より未決囚への物品の差入又は入質処分等を云ふ。
入れる事を云ふ。
貯蓄する意、転じて隠匿(贓物等を)する事を云ふ。
カメル
互ニ物ヲ取リ違ヒスルコトヲ云フ。〔第一類 言語及ヒ動作之部・石川県〕」

と,種々の意味を載せる。隠語だから,一定の世界で使われていたものだから,詳細を知っても仕方がないが,『江戸語大辞典』は,「かめる」について,

「操り・浄るり社会の隠語。いれる。」

とあり,上記のように,

はちやへかめる,

「はちや」つまり,「質屋へいれる」という意味になる。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/06ka/kameru.htm

は,

「亀る」

が,2008年頃から使われているとして,

「亀るとは遅い、ゆっくりといったイメージの動物『亀』に動詞化する接尾辞『~る』を付けたもので、遅れる、遅くなる、遅刻するといった意味で、若者の間で普及。もともとはメールの返事が遅くなることを指したが(メールの返事が遅いことを意味する「亀レス」からきた言葉かどうかは不明)、後に待ち合わせなど、メール以外を対象としても使われるようになる。また、これとは別にとろい、鈍臭いという意味で亀ると言う場合もある。」

まさに,「かめる」は,今日に生きているらしい。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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posted by Toshi at 04:32| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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