2016年07月09日

よこしま


「よこしま」は,

横しま,
あるいは,
邪,

と当てる。『広辞苑』には,

横方向であること,またそのさま,
正しくないこと,邪悪,邪曲,

とある。「横ざまに吹く風」を,

横しま風,

というらしいので,本来は,

横しま,

という,ただ横向き,という意味だったのだろう。しかし,「よこ」には,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/422323173.html

で触れたように,漢字の「横」にはない,

正しくない,

という含意がある。そう言えば,

横道,

という言い方もある。『語源辞典』には,

「『横+様』,yokosamaの音韻変化,yokosimaです。縦を正,横を不正と見た日本人の言語意識があります。」

とある。『古語辞典』に,

「縦しまの対」

とあるのは,その意味なのだろう。『大言海』は,

「横状(よこさま)の転,さかさま,さかしまの類」

とある。さらに,「よこさま」と別項に,

横方,

と当てて,

正しからざること,

と意味を載せる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/yo/yokoshima.html

も,

「よこしまは、『よこ(横)』に接尾語の『し』と『ま』が付いた語。 接尾語の『し』は、方向を示す接尾語『さ』と同じもので、横の方向を意味する『横さ』『横し』という語もあり、よこしま は『横さま』ともいう。 よこしま同様の構成の語には、『逆さま』『逆しま』『逆さ』がある。よこしまは、本来、横の方向であることや、そのさまを意味し、そこから心の向きが正しくない(横を向いている)ことを意味するようになった。漢字の『邪』の『牙』は、二本の柱に切り込みを入れ、噛み合わせて繋いださまを描いた象形文字で、ちぐはぐに噛み合う歯を表す。『阝』は『邑(むら)』で、『邪』は元々『琅邪』という中国の古地名を表した字であるが、『牙』のもつくいちがいの意味も表すことから、よこしまに『邪』の字が当てられた。」

としている。そういえば,

立て板(に水)

に対して,

横板(に雨垂れ),

とあるのは,弁舌が滑らかではない謂いに用いる。横板については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/418108792.html

で触れた。「横」で触れたが,漢字の「横」は,

「黄(呉音おう・漢音こう)」が,火矢の形を描いたもので,上は,「廿+火(=光)」の略体,下は,中央にふくらみのある屋の形で,油をしみこませ,火をつけて飛ばす火矢。火矢の黄色い光,つまり,「黄」は,動物の脂脂肪(廿印)のついた火を描いた象形文字で,四方八方に発散する火矢の光,を表し,「横」は,「木+横」で,中心線からはみだして広がる横木,勝手に広がる意を含む,」

という意味で,「よこ」の語源は,二説あり,

ひとつは,「ヨコタフ」が語源で,体をヨコタエルのヨコ,
いまひとつは,「ヨ(寄)+コ(方向)」で,正面に対して,「寄る方向」がヨコ。不正な方向,ヨコシマのヨコ,

とある。因みに,「たて(縦)」は,

「『タチ,タツ(立つ)』です。立てたときの上下の方向。距離の意」

で,これを正,とみて,横を正ならず,と見る価値観があったということだろう。漢字の「縦」は,

「从(ジュウ)は,Aの人のあとにBの人が従うさまを示す会意文字。それに止(足)と彳印を加えたのが從(従)。縦は,『糸+音符從』で,糸が次々連なった,細長くのびること。たてに長い縦隊をつくるから,縦の意となり,縦隊はどこまでものびるので,のびほうだいの意となる。」

とある。漢字では,

縦は,縄をゆるめとりはなして,自由にするなり,法度などを守らざるに言う
横は,無理にわがままをするなり,

とあり,例えば,縦なら,

放恣,

とか,横なら,

横着,

だのと,縦も横もあまりいい意味ではない。「邪」の字は,上記の『語源由来辞典』に挙げた通り,

「『牙』は、食い違った組み木のかみ合ったさまを描いた象形文字で,『邪』は,『邑(むら)+音符牙』。もと琅邪という地名を表した字だが,牙の原義であるつくいちがい意味をも表す。」

で,考えようによっては,

横しま,

に,

邪,

を当てた慧眼には畏れ入る。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
簡野道明『字源』(角川書店)


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