2016年07月10日

サクラ


サクラは,



のことではなく,

おとり,
とか
偽客,

とかと言われる,いわゆる,

サクラ,

である。『広辞苑』には,このサクラについては,「桜」の項の最後のほうに,「馬肉」の「さくら」の後に,

ただで見る意,芝居で,役者に声をかけるよう頼まれた無料の見物人,
転じて,露天商なとで,業者と通牒し,客のふりをして他の客の購買心をそそる者。まわし者の意,

と載る。「桜」の「さくら」と,どういう関係があるのだろうか。

この場合,「サクラ」は,いわゆる「大向こう」とどう違うのか。大向こうについては,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%90%91%E3%81%86
http://style.nikkei.com/article/DGXNASIH25006_R30C13A1AA2P00

等々に詳しいが,

「芝居小屋の三階正面席、またそこに坐る客を指す隠語・通言(歌舞伎座では、構造上3階B席から幕見席あたりを指すものとして理解されている。)、つまり大向うとは、舞台上から見た客席の位置に由来する。主として歌舞伎で用いられ、安価な席にたびたび通ってくる見巧者の客(歌舞伎座が設けている幕見席とは、そうした客のための席だったともいえるだろう)を指す。『大向うを唸らせる』といえば、そういった芝居通をも感心させるほどの名演であることを意味する。」

とあり,

「歌舞伎では劇の雰囲気を盛り上げるために、大向うから声が掛かる。歌舞伎の中には、俳優が大向うの掛け声を巧く利用した演出がいつしか定着し、その掛け声がないと進行できないような舞踊もある。」

というから,まさに,

やらせ,

に近い。つまり,言い方は悪いが,演出効果を狙った,

サクラ,

である。さて,この「サクラ」の語源だが,『語源辞典』には,

「芝居や大道商人のサクラの語源は,『桜』です。」

とある。その謂れには,三説ある。

説1は,芝居で,枯れ木に灰を撒いて花を咲かせる場面で,『あらかじめ用意した桜を出してくれる人,またはその行為』をいうという説。

説2は,「劇場で頼まれて役者に声をかける者の桟敷席の名のサクラ」から,桜というという説。

説3は,桟敷席の名のサクラから,「なれあいの褒め言葉や掛け声を叫ぶ者」をサクラというとする説。

そこから転じて,

「『客をよそおって,品物を買ったりほめたりして他の客の購買心をそそる者』にも使うように広がった言葉です。」

とある。

この「サクラ」の意味は,『大言海』にも,『江戸語大辞典』にも載らない。ということは,比較的新しい言葉なのではないか。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/sa/sakura_kyaku.html

は,「偽客(さくら)」として,

「. 漢字で『偽客』と書くのは当て字で、露天商などの隠語から、明治時代以降に 一般へ広まった。語源は諸説あるが、江戸時代の芝居小屋で役者に声をかける見物人役は、パッとはでに景気よくやってパッと消えることから,桜の性質になぞらえて呼ぶようになり,そこから露天商の隠語になって、一般にも広まったとする説が有力とされる。また桜は無料で見ることができるため、芝居を無料で見物する人を『さくら』と呼ぶようになり、現在の意味になったとする説もある。その他、労働の意味の『作労(さくろう)』が転訛したとする説もあるが、意味的なつながりがはっきりせず、有力な説とは考えられていない。」

と述べ,新しい言葉だと,説く。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9_(%E3%81%8A%E3%81%A8%E3%82%8A)

は,「さくら(おとり)」で,

「本来は江戸時代に芝居小屋で歌舞伎をタダ見させてもらうかわりに、芝居の見せ場で役者に掛声を掛けたりしてその場を盛り上げること、またはそれを行う者のことをサクラといった。桜の花見はそもそもタダ見であること、そしてその場限りの盛り上がりを桜がパッと咲いてサッと散ることにかけたものだという。これが明治時代に入ると、露天商や的屋などの売り子とつるんで客の中に入り込み、冷やかしたり、率先して商品を買ったり、わざと高値で買ったりするような仕込み客のことも隠語でサクラと呼ぶようになった。サクラを『偽客』と書くようになったのはこの露天商などが用いた当て字が一般に広まったものである。」

としている。ある意味で,「サクラ」は,いま風に言うと,

やらせ

だが,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%84%E3%82%89%E3%81%9B

で言う,

「やらせとは、事実関係に作為・捏造をしておきながらそれを隠匿し、作為などを行っていない事実そのままであると(またはあるかのように)見せる・称することを言う。」

でみると,「偽客」の「サクラ」には近いが,「おとり」の意味の,「サクラ」からは離れていく。

http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%84%E3%82%89%E3%81%9B

では,「やらせ」について,

「元々テレビ業界で使われていた用語だったが、1985年に起きたテレビ朝日『アフタヌーンショー』リンチ事件において、テレビ番組の制作において「やらせ」があることが広く知られることになった。報道番組・ドキュメンタリー番組など、取材対象が事実である事が前提となっている分野でもBGMやテロップの挿入などの演出が行われるのが通常である。しかし、このジャンルにおける事実を歪曲するほどの過剰な演出、つまりやらせは、報道の対象が存在しないにもかかわらずこれを作り出す『捏造』とも本質において変わりがなく、倫理的に非常に大きな問題となる。」

と,「やらせ」は,演出効果を狙った,

サクラ,

に比べても,悪質になっている,といっていい。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/36ya/yarase.htm

で,

「やらせとはテレビや新聞などで事実にはないことを演技させ、その映像や写真を使った虚偽の内容を報道することである。やらせは元々業界用語であったが、1985年テレビ朝日『アフタヌーンショー』の報道にやらせがあったとして話題となり、一般にも浸透した。また、報道に関係なく、事前に打ち合わせた内容を自然に振る舞わせる様々な行為に対してやらせが使われるようになる。バラエティ番組における見学客のスタッフの合図で起こる拍手、露天の『さくら』もやらせの一種である。」

と,「偽客」のサクラとは重なってくるのかもしれない。

http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/40b7426a8698e83b1f23b9fedb10849b

には,

「芝居=歌舞伎は『桜』が関連する出し物が多いが、舞台には 『釣枝』といって、桜や梅や紅葉の造花木を一線に釣り下げて、 芝居の華やかな雰囲気を盛り立てる装飾が 江戸時代から現在に至るまで施されてるのである。 とくに『桜の釣枝』が飾られる出し物は相当に華やぐ。で、 昔の芝居小屋にはその下手(しもて)側、つまり舞台上に、 『羅漢台』『羅漢』などと呼ばれる最低の木戸銭の席があった。やがて、 その位置の上に2階席が設けられると、そこは 『吉野』と言われるようになった。なぜなら、その眼前に 『(とくに桜の)釣枝』が飾られてたからである。(中略)当時は サクラといえば吉野の山桜のことで、その席も、 桜=吉野、という江戸っ子の駄洒落によって生まれた呼び名である。この席の客に小銭を与えて掛け声をかけさせたから、そういう行為を『サクラ』というようになったのである。『いよっ、待ってましたっ!』とサクラが発すると、声を掛けられた役者はすかさず、『待ってたとはうれしいじゃぁねぇか』などと応えて、小屋じゅうがドッとわくのである。」

とあり,これに尽きるのかもしれない。その雰囲気がよく伝わる。

いわゆる桜については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%83%A9

に詳しい。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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