2016年07月25日

横槍


横槍は,通常,

横槍を入れる,

という使い方をする。いわゆる合戦用語で,

横を入れる,

とも言う。「掣肘」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/434197910.html

で,少し触れたことがあるが,「横を入れる」は,

「攻撃の最中に,別の軍が敵の側面から攻撃することを言う。室町時代以降,突撃の主兵器は槍であるので,『横槍を入れる』ともいう。互いに前の敵と戦っている時に,側面攻撃されると狼狽して破れるのである。」

と,説明される。

横矢,

というのも似た意味で,

「両軍が向かい合って戦っているのに別の隊が側面から矢を射かけて攻撃することを言う。正面の敵に夢中になっているから側面の攻撃には弱い。横槍と同じである。」

と説明される。

これ自体は,別に何の価値も入っていないから,卑怯とか,汚いとかの評価は入っていないのである。しかし,今日の,横槍は,『広辞苑』に,

横合いから第三者が口を出し文句を言うこと,容喙,

と,あまりいい意味には使われない。「よこしま」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/439853010.html

で,触れたように,「横しま」は,ただ,横向きという意味のはずなのに,

邪,

という字を当てられるほど,

正しからざること,

と,価値評価が入っている。これには,「横」という字自体に,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/422323173.html

で触れたように,

当然でないこと,
道理に背くこと,

という意味を込めて,日本(語)では使っているらしく,これも,「よこしま」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/439853010.html

で触れたように,

「縦を正,横を不正と見た日本人の言語意識」

があることから,「横槍」に,

不当,

というニュアンスが加わったものと思われる。『語源辞典』に,

「語源は,『戦場で,戦の最中に,側面から槍で突きかかること』を言います。転じて,脇から文句をつける意,です。」

とあるが,「転じる」には,それなりの理由があったということだろう。例えば,『古語辞典』には,

「敵の側面から槍で突きかかること」

とあるが,この言い方に,どことなく,不当,という含意が含まれていなくもない。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/yo/yokoyari.html

は,

「横槍は戦場で戦っている際、別の一隊が脇から槍で攻めてくる ことを意味した。 そこから、談話や仕事に第三者が横から口を出して妨げる意味として、『横槍』『横槍を入れる』と使われるようになった。」

と,「転じる」謂れがうかがえる書き方となっている。つまり,当事者同士の対話に,脇から介入する,というニュアンスである。アナロジーとして,これを使うには,「横槍」自体に,

真正面から向き合っているところに,横から不意打ちを食らわせた,

という言外の感情の翳があるせいだろう。不思議に,

横矢を入れる,

には,横槍を入れる,という不当介入のニュアンスは含まれていないらしい。

似た言い回しに,

槍(鎗)脇
あるいは,
鑓脇の敵,

という言い方がある。「槍脇」は,

「敵味方が槍で戦っている時に,見方の者が敵を側面から攻撃して援助することをいう。先登(せんとう)に立って敵と槍を合わせたときに,見方が側面から協力して敵を仕留めた場合,一番槍の戦功に準じて,協力した者も戦功になる。この場合,槍脇の協力者は槍でなくても,太刀でも弓でもよい。」

と説明される。この場合,敵から見ると,戦っている相手の味方が相手の応援に突いてくる敵が,

鑓脇の敵,

ということになる。

参考文献;
笹間良彦『図説 日本戦陣作法事典』(柏書房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


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