2016年07月28日

しょってる


「しょってる」は,「しょっている」の転で,

背負ってる,

と当てる。当然,

背負っている,

という意味の他に,

うぬぼれている,
とか
いい気になっている,

という意味になる。まあ,荷物を背負う以上に自惚れを背負っている,ということになる。

背負う,

は,

せおう,

と訓むが,「せおう」の転で,

しょう,

とも訓む。この使い方でも,「せおう」以外に,『広辞苑』では,

うぬぼれる,

という意味があるし,さらに,『大辞林』には,

厄介なこと,迷惑なことなどを引き受ける,

という意味がある。しかし,

せおう,

と訓むときは,

背に負う,

という意味で,そのメタファで,

苦しい仕事や不本意な物事を引き受けて,責任を持つ,

という意味になるだけである。「しょう」と,転化したときは,

責任を引き受ける,

意と,それをどこか皮肉に,

自分で思う以上に軽い荷物を背負っているのに,重い意にを負っている,

という自惚れの意とが二重写しになっている。だから,

「しょう」

の派生語である,たとえば,

「しょってたつ」

という場合,やはり,

背負って立つ,

と当てるが,その場合,

「組織や団体の中心となって,活動・発展の支えとなる。また,全責任を一身に負う」(『広辞苑』)

という意味になる。その場合,決して,

「せおいたつ」

とは言わない。「せおってたつ」という言い方もできなくないが,「しょってたつ」が自然だ。『語感の辞典』には,

「『せおって』となるケースはまれである。」

と付記している。「しょってたつ」の方が,「せおいたつ」「せおってたつ」より,語感がすっきりしている。また,

しょいこむ,

も同じで,

背負いこむ,

と当てるが,「せおいこむ」という言い方よりは,「しょいこむ」が普通だし,語感もいい。また,「しょってる」という揶揄のニュアンスはなく,

「手にあまることや迷惑なことを我身に引き受ける。背負い込む」(『広辞苑』)

という,まさに背負うを強調した言い回しになる。因みに,「込む」は,他動詞連用形について,

みっちり,または,十分にそうする意,

なので,過分なほど背負う,ということになる。『語感の辞典』には,

「『抱え込む』に比べ,はっきり拒否しなかったせいでそうなってしまった感じもあり,負担も大きい雰囲気が漂う」

とある。『語源辞典』には,「しょっている」は,

「『背負っている』の音韻変化です。全責任を背負って誇りにしている。俗語では,自惚れている意に使います。」

とあるので,本来は,「しょう」がそうであったように,

しょってたつ,

の,全責任を,

しょっている,

という,どちらかというと状態表現の意味だったものが,たとえば,「よこしま」,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/439853010.html

や,「横槍」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/440387740.html

で触れたように,価値表現に転じて,その状態を揶揄する意に変ったと言えなくもない。

それにしても,「負う(ふ)」自体が,

背中に物をのせる,

という意味があり,さらに,

身に引き受ける,

という意味を持っているのに,さらに「背」を重ねたのは,どんな意味だったのだろう。『デジタル大辞泉』には,「おう・せおうの用法」として,

「『負う』は文語的。話し言葉では多く『背負う』を使う。『負う』『背負う』には抽象的に負担する意味もあり、『責任を負う』『罪を負う』『一家を背負って働く』などと使われるが、『背負う』のほうが具体的動作を表す度合いが強い。傷・痛手については『負う』を用い、『背負う』は使わない。類似の語に『担(にな)う』『担(かつ)ぐ』がある。ともに、肩で重みを受けるようにして物を運ぶ意。『大きな荷を担う』『おみこしを担ぐ』、また、抽象的に『役割を担う』『次代を担う』などとも使う。」

と付記する。しかし,単純なことかもしれない。「おう」という同音語は,

追う,
和う,
終う,
合う,
会う,
逢う,
遭う,
遇う,
逐う,
覆う,

等々とある。私立大と市立大を呼び分けるように,あえて「背」をつけることで,「負う」の意味を際立たせる必要があったのではないか。

参考文献;
中村明『日本語語感の辞典』(岩波書店)
大野晋・佐竹昭広・前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 04:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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