2016年08月09日

のほほん


「のほほん」は,どの辞書をみても,

何もしないで,または気を使わないでのんきにしているさま。
とか
物事にこだわらずのんびりとしていること,また,そのような人,
とか
他に無頓着で平然としているさま,

といった意味が載る。どちらかというと,よそから見て,批判的な目線で,例えば,『大言海』だと,

「恥を感ぜぬこと,またそのもの,のんきもの」

とあけすけである。語源は,予想されるように,

擬態語,

で,

「なにもしないでいる状態の副詞(擬態語)」

とあり,

「ノホは鋸で,木挽きが大木を切る時の様子を,何もしないでのんきだと見たのでしょう」

と,暢気な謂れが出ている。ちょっと眉唾な気がするが,真偽はわからない。ただ,『広辞苑』には,

江戸時代の俗謡の囃子詞,

と出ている。で,気になって調べたが,『江戸語大辞典』には載っていない。

しかし,どうも,本来は,

面の皮が厚い,
というか,
馬の面にしょんべん,

といった悪意を含んだ感じだったようなのだ。それが,類語には,「緊迫感がなくゆったりしているさま」の意として,

気長,悠長,呑気,ゆっくり,のんびり,おっとり,ゆったり,悠然,悠々,

と,ひどくのどかな意味になっている。むしろ,

のうのう,
あるいは,
のーのー,

が近いのかもしれない。『広辞苑』には,

心配や気づかいをすることなく,暢気な気分でいるさま,

とある。語源がよくわからないが,「のうのう」は,

喃喃

と当てる。「喃」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/424913724.html

で触れたように,語尾に,

~だのう,

と付ける。しかし,

「喃」の字の,「南」は,納(中に入れる)と同系の言葉で,中に籠るという意をもつ。で,「口+南」は,

口の中に籠ってはっきり聞き取れない,

つまり,

くちごもりつつしゃべる

という意味となり,「喃喃(なんなん)」とつづけて,

もたもたといつまでもしゃべる,

という意味になる。「のう」と訓ませるのは,わが国独特で,

喃(のう),

で,人に呼び掛ける意味に使う。「喃々(のうのう)」で,

もしもし,

となる。

その他,「喃」で始まる言葉は,

喃語
喃喃(なんなん)

がある。

喃語

は,

乳児のまだ言葉にならない発声,

という意味だが,その他に,

くどくどと話すこと。
男女がむつまじくささやき合うように話すこと。むつごと。

喃喃

も,「なんなん」と訓ませると,

口数多くしゃべり続けるさま,

という本義になる。こう考えると,

「のうのう」

は,太い奴に,傍からは見えるが,その実,意味からは,可愛げが見える。しかし,現代の類語は,

おめおめ,
ぬくぬく,

といった,ある種非難をこめた言い方になっている。主観的には,悠々,だが,その態度そのものが咎められる,という状態である。

逆に,本来,面の皮の厚さを含意していたはずの,

のほほん,

が,どちらかというと,

ものごとに頓着しない,
とか,
おおらかな,

という意味に変っているのが面白い。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)


ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 04:51| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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