2016年08月12日

企つ


「企つ」は,

くわだつ,

ではなく,

つまだつ,

と訓ませる。他に,

たくらむ,

とも訓む。『老子』の一節に,

企者不立 跨者不行

企(つまだ)つ者は立たず
跨(はだかる)者は行かず

とある。

「企者」は「「跂者」に同じ,

ともある。「跂」は,

つまだつ,

で,「跂」の字は,

「支は,枝の原字で,みきから細かく分かれた枝。跂は,『足+音符支(キ・シ)』。足の指がわかれていること。」

とある。足の指先で立って,背伸びする」という意になる。

「跨」は,股を広げて,はだかる,足を開いて踏ん張る意。「跨」の字は,

「『足+音符夸(大きく∧型に開く)』で,両足を大きく広げること,股型に大きく広げる意を含む。」

とある。立ちはだかる,の「はだかる」である。『荘子』に,

「人は其の跂(つまだ)つを見るに,猶之魁然たり」

とあるらしい。「魁然」とは,

大きくて目立つ,堂々としているさま,

の意で,つまり,

はた目にはの伸びした危なっかしい人生に見えるが,当人は偉丈夫然と構えて得意この上もない」

という意味になる。上記,『老子』は,二十四章に,

企者不立 跨者不行
自見者不明 自是者不彰
自伐者無功 自矜者不長
其在道也 曰余食贅行
物或悪之 故有道者不処

とあるところから来ている。

企(つまだ)つ者は立たず 跨(はだ)かる者は行かず。
自ずから見(しめ)す者は明らかならず 自ずから是(よ)しとする者は彰(あらわ)れず
自ずから伐(ほこ)る者は功無く 自ずから矜る者は長(ひさ)しからず。
其の道に在(お)けるや余食(よし)贅行(ぜいこう)と曰う 
物或(つね)に之を悪(にく)む 故に有道(ゆうどう)者は処(お)らず

全体の文意は明らかである。確かに,

等身大,

を無理に伸ばしてみても,益はないかもしれない。しかし,「企」は,「企画」の「企」でもある。「企」の字は,

「『人+止(趾 あし)』で,人が足先でつま立ちする意を表す。」

で,

「人が足を爪立てて望む」

意である。だから,

企業の「企」,
であり,
企画の「企」,
であり,
企図の「企」,
であり,
投企の「企」

である。ときに,背伸びしなければ,人は,現状の足枷から脱することはできない。

企(つまだ)たざる者は進めず
跨(はだか)らざる者は流さるる

でもあるのではないか。

遠くを見る眼があるから,足元の問題が見える。
遠くの視野があるから,障壁を超える道も見える,
長い時間軸が見えるから,自分を賭けることができる,

のだと,長く企画を考えてきたものとしては,思う。背伸びせぬものに,成長はない。それにしても,「企」の字のつく熟語が少ないことに気づく。ひとは,『老子』の無為自然にからめとられているのかもしれない。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
吉川幸次郎監修『老子』(朝日新聞社)



ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
【関連する記事】
posted by Toshi at 05:01| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください