2016年08月16日

腑に落ちる


「腑に落ちた」という言い回しについて,

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1012519005

に,

「腑に落ちた、という表現、日本語として正しいですか?今朝の毎日新聞の新聞小説で、宮部みゆきさんが『腑に落ちた』という表現を使っています。この表現には違和感がありますが、日本語の表現として妥当でしょうか?」

という疑問が出ている。確かに,手元の辞書(『広辞苑』)には,

腑に落ちない,

は載り,

「合点がいかない,納得できない」

との意味が載るが,

腑に落ちる,

は載らない。『語源辞典』も,

腑に落ちない,

のみ載り,

「『腑』(はらわた,転じて心)に落ちない意です。心に理解できない。納得できない意です。」

と載る。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/hu/funiochinai.html

を見ると,

「腑に落ちないの『腑』は、『はらわた』『臓腑』のこと。 『腑』は『考え』や『心』が宿るところと考えられ、『心』『心の底』といった意味があるため、『人の意見などが心に入ってこない( 納得できない)』という意味で、『腑に落ちない』となった。 肯定形の『腑に落ちる』は明治時代の文献にも見られ、『納得がいく』『納得する』という意味で用いることは誤用ではないが、一般に『腑に落ちる』の形で用いられることが少なくなり、使い慣れない・聞き慣れない言葉を使われる違和感から、『正しい日本語ではない』と誤解されることが多くなった。」

と,肯定形もある,と説くが,僕の実感では,

腑に落ちた,

という言い方を,知識レベルではなく,実感レベルで了解できた意で使うことが多い気がする。あるいは,

心底わかった,

という感覚で使う。『故事ことわざ辞典』

http://kotowaza-allguide.com/hu/funiochinai.html

は,「腑に落ちない」で,

「『腑に落ちない』で、納得いかない・合点がいかない状態をいう。一般的には『落ちない』『落ちかねる』など否定的な表現で使うが、『腑に落ちる』が『納得がいく』の意味でも使われている。」

とあるのが妥当なのだろう。

『大言海』の「腑」の項を見ると,「臓腑」の意味の他に,

「俗に,思慮分別の宿る所。腑の足らぬとは,料簡の不足の意。腑の抜けるとは,料簡の脱したる意。」

とある。『語源辞典』には,「腑抜け」を,

「『腑+抜け』です。身体の中の臓腑が抜けている意です。信念や大度にしっかりしたものがない意です。」

とある。しかし,『日本語語感の辞典』では,

意気地なし,

の意になっている。

根性がない,
元気がない,

といった意味の外延をひっぱった感じな気がする。漢字「腑」は,

「府は,いろいろな物をまとめて置く所。付と同系のことば。腑は『肉+府』で,体内にある食物や液体のくら。もと府と書いた。」

とある。漢方で言う,

五臓六腑,

つまり,五臓は,

肝・心・脾・肺・腎(心包を加え六臓とも)

を指す。六腑は,

胃・肝・三焦(リンパ管を指す)・膀胱・大腸・小腸,

を言う。詳細は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E8%87%93%E5%85%AD%E8%85%91

に譲るが,身体の中心で,

得心した,

あるいは,

得心しない,

という意味になる。この体感覚は,凄いと思う。単に,

合点した,

というのとも,

理解した,

というのとも違う。

胸にストンと落ちる,

というのが,感覚としては合っているかもしれない。

参考文献;
中村明『日本語語感の辞典』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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