2016年08月17日

そっけない


「そっけない」は,

素っ気無い,

と当てる。『広辞苑』には,

「(スゲナシを『素気無し』と書いたところから)おもいやりがない。愛想がない。趣きや潤いがない。」

と意味が載る。単なる,具体的な,人の態度や振る舞いから,抽象的な趣きにまで,意味の幅がある。他の辞書には,

好意が感じられない,
他人に対する思いやりや温かさが感じられない,

と,もう少し具体的なニュアンスが意味に加えられている。『日本語語感の辞典』には,

無愛想で相手に対する好意や思いやりが感じられない意,

と,よりニュアンスの焦点が絞られる。

語源は,辞書(『広辞苑』)にある通り,

「『スゲ(素気)+ない』を『ソッケ(素気)ナイ』と読んだものです。冷淡の意です。」

で,では「すげ(素気)ない」は,というと,

「古語『すがなしの変化』。ヨスガナシ(因所無)です。つれない。薄情。冷淡,の意です。」

とある。『古語辞典』の「すがなし」をみると,

「一人いてこころたのしまない」

と,意味が載る。「よすがなし」の「よすが」は,

便,
因,
縁,

の字を当て,『古語辞典』には,

「奈良時代ヨスカと清音。ヨス(寄)カ(処)の意。類義語ユカリはたぐっていくと,何らかの縁のあることで,多く人間関係にいう」

と注記して,

身を近づけ寄せる所,

という文字通りの意味から,

(引かれて)気持ちを注ぐ所,心のよりどころ,
血縁者,親類,
手掛かり,

と,意味が広がっていく。因みに,『古語辞典』の「ゆかり」の項には,

「つながりをたどれば見いだされる関係。類義語エン(縁)は仏教用語で,結果を生じさせる必然のつながりのきっかけ」

とある。いわゆる「薩摩の芋づる」とはまさにユカリのことである。

で,「よすが(拠処)」の意味に戻すと,『広辞苑』でも,「手掛かり」の意味は,

物事をするのに,たよりとなること,

とあり,やはり,「寄り所」の含意の範囲の中に入っている。

「そっけない」の類語を見ていくと,この言葉の語用の幅がよく見える。ひとつは,

愛想がない,

の意味範囲で,そこには,

つれない,
よそよそしい,
みずくさい,
木で鼻をくくったような,
けんもほろろ,
にべもない,
取り付く島もない,
つっけんどん,
つんけん,

等々が並ぶ。「木で鼻をくくったような」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/423124944.html

で,「けんもほろろ」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/420594101.html

で,「つんけん」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/436980398.html

で,それぞれ触れた。

他方,

趣き,

の意味範囲では,「味もそっけもない」という使い方をするが,

つまらない,
味気なし,
興醒め,
散文的,
趣がない,

といった類語が並ぶ。人の態度,振る舞いが,対象の味わいのなさに意味を広げているが,

よすががない,

とは,取り付く島がないのであり,対象が,ヒトであれ,モノであれ,コトであれ,モノゴトであれ,心が通じるものがない,と言っているのだろうか。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)


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