2016年08月21日

気さく


「気さく」は,『広辞苑』には,

「気性がさっぱりして,物事にこだわらないこと。打ち解けて気軽なさま」

との意味が載る。他の辞書も大同小異,

「人柄・性質がさっぱりしていて,親しみやすく気軽なさま。」(大辞林 第三版『』)
「人柄がさっぱりしていて、こだわらないさま。気取りがなく親しみやすいさま。」(『デジタル大辞泉』)

である。物の性質から人の性質に敷衍したのか,それとも人の性質を物に広げたのか,これだけではちょっとはっきりしない。

語源は,『由来・語源辞典』に,

「気さくの『さく』は、形容詞『さくい』の語幹。『さくい』は中世から見られる語で、『淡白だ』または『壊れやすい』を意味し、『さくい』のみでも『気さく』を意味していた。この『さくい』の語幹に『気』をそえて形容動詞となったもので、『気性が淡白なさま』を表すようになった。」

とあり,これによれば,物の性質が,

もろい,
とか
淡泊,
とか
壊れやすい,

と表現していたものを,「気」を付けて,人の性質に転じた,ととれる。『古語辞典』には,「さくい」を,

あっさりしている,気さくである,

もろい,こわれやすい,

の両方を載せる。『大言海』は,「気さく」を載せず,「さくい」に,

「粘気(ねばりけ)なきを,サクサクと云ふ。其の條をみよ。」

とあり,

解けやすし,わかれやすし(粘しの反),鬆(ス),
心,打ち解けたる状り,気軽なり,気さくなり,爽懐,洒落(さくい気性),

と意味を載せる。「さくさく」を見ると,

「粘気なきものを切る音より云ふ」

とあって,

「物を。容易(たやす)く噛み,又は切る音などに云ふ語」

とある。つまり,擬音語である。「さくさく」は,『擬音語辞典』では,

「林檎や揚げ物の衣,パイ生地などを,噛んだり,切ったりする時の,リズミカルで軽い音。またそのときの歯ごたえ,旨そうな印象を与える語」
「霜柱や雪,かき氷など,水分を含んだ固体が,踏まれたり,混ぜられたりして崩れていく小気味よい音。」

とあり,類義語に,

さくっ,
ざくざく,

を挙げ,

「連続する音や様子をあらわす」

「さくさく」に対して,「さくっ」は,

「一回だけ警戒に切ったり混ぜたりする時に使う。梨などを一噛みしたときの爽やかな歯触りなどに用いられる。」

とし,「ざくざく」は,「さくさく」より重い音や様子で,

「ややかたさのある物を,粗く警戒に切ったり,噛んだりする時の音,またそのときの歯ごたえ」

とする。ここからは億説かもしれないが,

さくい,

という言葉自体が,

さくっ,

という擬音語から来たのではないのか。とすると,本来は,対象あるいは,それを切ったりしている時の感触を表現していた語なのではあるまいか。それをメタファとして,人の性質に当てはめた,と。『大言海』の,

粘気の対,

というのはその意味ではあるまいか。とすると,本来,「気さく」は,

さっぱりしている,

というより,

軽快さ,

あるいは,今日「さくさく」に,

サクサク片づける,

という使い方をする時の,

手際よく,
とか
てきぱき,

という意味が近い気がする。事実,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ki/kisaku.html

には,中世末の日葡辞典に,「さくい人」が載っており,

「敏活でてきぱきした人」

とある。『江戸語大辞典』の「気さく」は,

気のきくこと,
淡泊で快活な気質,

とあり,「てきぱき」から,少し意味がシフトしている。

気性がさっぱりして,物事にこだわらない,

という意味とほぼ地続きになっている。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)


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