2016年08月29日

おごそか


「おごそか」は,

厳(嚴)か,

と当てるが,

荘(莊),
儼,
粛,
矜,

等々とも当てる。

威厳正しく,近寄りにくいさま,いかめしいさま,厳粛,

と,辞書(『広辞苑』)には意味が載る。その他に,

重々しくいかめしいさま,

といった意味を載せるものもある。

http://hyogen.info/word/4682362

には,

「普段とは違うきちんとした雰囲気で、近寄りにくいさま。静かで落ちついていて、真剣にならずにいられない雰囲気があるさま。ふざけてはいけないような雰囲気。」

として,使い方は,

夕焼けの雲が西の空から広がって、厳かに見えるほど単純な深さで半天をばら色に染める(夕焼けの雲の表現・描写・類語)
晴れた冬の日のアルプスの山々が、岩の殿堂のように厳かに立ち並ぶ景観(山脈・山の連なりの表現・描写・類語)
宗教音楽のような厳かな音楽(音楽の表現・描写・類語)
巫女のようにおごそかに託宣を下す(占い・お告げの表現・描写・類語)
厳かな儀式を見守るような目(目(瞳)の表情の表現・描写・類語)

等々を挙げている。語感としては,

態度や雰囲気などに威厳があって近寄りがたい,

といったニュアンスである。語源は,

「『オオ(大)+ゴ(凝)+そかか(状態)』です。大いなることが起こった緊張状態を言うことばです。」

とある。『大言海』も,

「オゴは,大(おほ)ゴルなど云ふ意の約か(ひろごる,ほどこる)。ソカは,副詞の語尾,おろそか,あはそか,あり。」

と,ほぼ同じ語源説をとる。ただ,

「礼儀正しく,慎みて」

と,雰囲気側ではなく,主体側の姿勢に焦点を当てているのが,微妙に違う。「こる」が,

凝る,

なら,

より固まる,ひとつに集まる,
凍る,

といった意味で,「こごる(固まる・集中する)」が語源で,緊張した主体の雰囲気が伝わる言葉で,外の雰囲気ではなく,それに威圧されて慎むというニュアンスがよく出る。

『古語辞典』は,

「オゴは,オゴリ(傲)のオゴと同根。自らを高いものとしてと人に対すること。ソカは,おろそか(疎)・あはそか(淡)のソカと同じ,状態を表す接尾語。」

と,まったく異なり,意味も,主体側の視点なのに,

「威容をもって高所から人に対するさま」

という意味を載せる。この意味なら,

矜(おごそ)か,

と当てる意味がある。ただし,『古語辞典』は,

「漢文訓読に使い,和文脈では使わない」

と,注記する。いつから,普通に使いだしたものかは,よくわからないが,『古語辞典』を信ずるなら,当初は,

威厳と厳粛さ,

を自分視点で言っていた主体表現が,その場の雰囲気の状態表現になり,同時に,その場で畏まっている主体評価にもなった,ということになる。たとえば,

「ほこる(誇る)」は,子音の「h」が脱落して,「おごる(驕る)」になった,

とされるが,別の見方をすると,主体表現の「誇る」が,状態表現として,「驕る」になったとも見える。言葉は,視点を変えていくものらしい。

因みに,「厳(嚴)」の字は,

「嚴の下部(音ガン)は,いかつくどっしりした意を拭きむ。巖(がん 岩)の原字。嚴は,それを音符にし,口立つ(口やかましい)を加えた字。いかついことばを口やかましくきびしく取り締まることを示す」

と,「おごそか」ではあるが,

いかめしさ,
とか,
厳しさ,

のニュアンスが強い。その意味では,『古語辞典』の言う原義が,この字を当てた主意としては,通るのではないか,という気がする。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


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posted by Toshi at 05:04| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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